製品技術紹介

最高使用温度200℃ 導電性接着剤専用自動車用チップ積層セラミックコンデンサの商品化

電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2016年2月18日号に掲載された内容を再構成したものです。

掲載誌:電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2016年2月18日号

1.はじめに

株式会社村田製作所は、自動車のエンジンルーム周辺など過酷な温度環境に搭載される機器向けに、150℃を超える高温環境でも使用可能な導電性接着剤*1専用の積層セラミックコンデンサGCBシリーズを開発したので紹介する。(図1)

GCBシリーズの外観
図1.GCBシリーズの外観

2.開発の背景

近年の自動車業界では、安全性及び環境性能の向上をねらいとして各機能の電子制御化が急速に進んでおり、電子機器の搭載率が増加している。中でもエンジンルーム内に搭載される電子機器は過酷な温度環境にさらされる傾向にある。加えて、電子機器の小型化のため、ICなどの発熱源の近くに部品を搭載するニーズが増加しており、部品の周囲温度は150℃を超える場合があり、そこに搭載される部品は高信頼性に加えて高い耐熱性が求められている。このような高温環境での回路動作に対応するため、高温に強いセラミックスの特長を生かし、外部電極を新規に開発することによって最高使用温度が200℃でかつ、導電性接着剤での接合実装に対応したチップ積層セラミックコンデンサを開発した。

3.特長

GCBシリーズの代表的な構造を図2に示す。外部電極のめっきにニッケルとパラジウムを採用した世界初の導電性接着剤専用シリーズとなる。このめっき構造によって高温環境下においても導電性接着剤との高い接合信頼性が得られる。また、外部電極にAgを用いていないため、従来の導電性接着剤専用品(GCGシリーズ)で懸念されるAgの高温マイグレーションによる短絡故障の危険性が大幅に低減され、従来品を超える耐熱性を実現している。

図2.GCBシリーズの構造例

4.GCBシリーズの効果について

200℃の高温環境に放置した後の端子電極とランド間の抵抗値を測定した結果を図3に示す。
接続抵抗値は放置時間の経過と共に増加しているが、従来品と比べると開発品の増加率は小さく、優れた特性を有していることが確認できる。

高温通電環境における端子電極とランド間の接続抵抗値のイメージ
 
図3. 高温通電環境における端子電極とランド間の接続抵抗値

5.商品ラインアップおよび電気的特性

GCBシリーズのラインアップおよび電気的特性を表1に示す。従来品の最高使用温度である150℃に対応した製品に加えて、新たに最高使用温度が200℃の製品を商品化する。どちらも自動車部品に求められる信頼性試験規格のAEC-Q200*2に準拠しており、自動車の高温環境に搭載されるパワートレイン、セイフティ機器向けに適している。

表1.GCBシリーズのラインアップおよび電気的特性

6.今後の展開

上記に示すGCBシリーズはすでにサンプル出荷を開始しており、年内の量産を目指す。GCBシリーズは高温対応以外にも従来品に比べて外部電極の耐腐食性が優れている。こうした新外部電極の長所を生かしたソリューションを広く提供すると共に、今後も更なるラインアップ拡大に取り組み、エレクトロニクス社会の発展に貢献していく。

*1 導電性接着剤:温度変化による基板と部品の膨張伸縮を緩和し、高い温度サイクル寿命を有している。
*2 AEC-Q200: Automotive Electronics Councilが策定した、自動車部品に求められる信頼性試験規格。
*3 品番例:開発中であり、正式品番ではない。

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