製品技術紹介

安全規格認定セラミックコンデンサ タイプRA・タイプSAの商品紹介

電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年3月16日号に掲載された内容を再構成したものです。

掲載誌:電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年3月16日号

1.はじめに

このたび株式会社村田製作所は、定格電圧のラインアップを拡充し、X1 / Y1クラス、X1 / Y2クラスの安全規格*1認定セラミックコンデンサの新シリーズ タイプRA・タイプSAを商品化した(図1参照)。新シリーズは、クラス毎に高性能品と標準性能品の2つを揃えた。

高性能品は、Yクラス:AC400VおよびAC500Vの定格電圧で、高いインパルス耐性により太陽光発電システムやFA機器など高い信頼性が求められる大型機器向けの使用に適している。

一方、標準性能品については、Yクラス:AC250VおよびAC300Vの定格で、外径サイズは従来品(タイプKX・タイプKY)よりも小型(一部同等サイズ品あり)である。そのため、モバイル機器の充電器などの小型機器向けに適している。なお、ここでの外径サイズとは、仕様上での直径を指す。

安全規格認定コンデンサは、主に商用AC電源ラインに由来するノイズを除去する目的で、電源ラインの線間や電源ラインとシャーシ間に接続される。電源ラインの線間に接続されるものをXコンデンサ、電源ラインとシャーシ間に接続されるものをYコンデンサと呼び、安全規格認定を取得したコンデンサが使用される。セラミックコンデンサは、主にYコンデンサとして使用される。

本記事では、新シリーズ タイプRA・タイプSAのラインアップ、構造、保証性能等の製品仕様を示し、さらに主要な特性データ について紹介する。

*1 機器や電子部品が原因となる災害発生を防ぐために定めた規格または規制。

製品外観のイメージ
図1 製品外観

2.新シリーズ タイプRA・タイプSAの製品仕様

①ラインアップ(表1参照)

表1. 新シリーズ タイプRA・タイプSAのラインアップ

*2 European Norms Electrical Certification。EU共通のEN規格に適合したライセンスとして、ヨーロッパで広く認知されている。

②構造

当社の安全規格認定セラミックコンデンサは、独自のセラミック誘電体材料とCu電極材料とのマッチングにより、高い信頼性を実現した円板型リード付きセラミックコンデンサである。環境に配慮しており、外装樹脂にはUL94-V0に準拠したハロゲンフリー対応の難燃性樹脂を採用した製品である(図2参照)。

製品内部構造図の図
図2 製品内部構造図

③保証性能およびサイズ

1)高性能品

高性能品の保証性能については、従来品(タイプKX(Y1)・タイプKY(Y2)) および標準性能品のそれに比べて性能拡大した(表2参照)。特に、タイプRA(Y1)のインパルス電圧耐性は12kVo-p と設定した。一部の他社製品が10kVo-pの保証であることからも、タイプRAの高性能品の耐電圧性能については、他社製品に比べて優位である。

また、高性能品は、高いサージ耐性とヒートショック耐性が要求されるような太陽光発電システム市場、FA機器市場、LED市場向けとしている。さらに、これらの市場からは、AC400V以上の定格電圧品の要求および、DC300Vを超える定格電圧品の要求を受けるケースが増えていることから、タイプRA(Y1)はAC500V/DC1.5kV定格品、タイプSA(Y2)はAC400V/DC1kV定格品とした。ただし、ここでのDC定格電圧については、当社の保証できる電圧値を示しているものである(タイプRAはDC1.5kV、タイプSAはDC1kV)。

2)標準性能品

標準性能品は、従来品タイプKX(Y1)・タイプKY(Y2)の保証性能を維持しつつ、一部製品の外径サイズは同等であるものの、従来品に比べて、直径 1~2mmの小型化を実現した。また、同業他社品と比較した場合、一部製品で直径0.5~1mm上回っているものがあるものの、大半の製品は、同等以下を実現している。

標準性能品は、小型化を訴求でき、モバイル機器の充電器などの小型機器向けに適している。

表2. タイプRA、SAの保証性能

3.主要な特性データ

安全規格認定コンデンサは、主に商用AC電源ラインに由来するノイズを除去する目的で使用される。ここでのコンデンサの機能は、数百kHz~数MHzの高周波ノイズを除去することが要求され、充分な高周波減衰特性を有していることが必要である。また、Yコンデンサは、電源ラインとシャーシ間に接続されているため、ラインからシャーシに交流漏れ電流が流れる。この電流が大き過ぎると感電の危険が出てくるため、機器の安全規格では、漏れ電流の上限値が規定されている。

セラミックコンデンサには、印加電圧により容量値が変化するAC電圧特性があるため、容量値の決定にあたっては、コンデンサへの印加電圧と漏れ電流との関係を実験的に求め、規格に定められた値をこえないように、Yコンデンサの上限容量値を決める必要がある。

このことより、コンデンサの実機動作面から、①周波数による挿入損失(図3参照) ②AC電圧印加による漏れ電流(図4参照) を主要な特性データとして選定した。

代表例として、タイプRA 高性能品の特性データを示す。

①挿入損失

図3 タイプRAの挿入損失

②AC電圧印加による漏れ電流特性

図4 タイプRAの漏れ電流特性

4.使用回路例

最後に、太陽光発電システムを例に使用回路を示す。

高性能品については、 タイプRA(Y1)はAC500V/DC1.5kV定格電圧、タイプSA(Y2)はAC400V/DC1kV定格電圧の仕様であり、図5のC1、C5の製品として使用できる。

図5 太陽発電システム 回路図

5.今後の展開

製品の一部は2016年12月より量産開始しているが、順次、静電容量のラインアップを拡充していく。主要特性データについては、他のタイプRA 標準性能品、タイプSA の高性能品および標準性能品のデータも2017年6月までに完備する。製品の仕様とデータ等は、当社の下記URL から検索できる。

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