ノイズ対策技術 / 事例紹介(自動車)

CAN FDのノイズ対策-1(1/2)

1. CAN FDとは

CAN FDとは、自動車内のECUやコンピュータをつなぎ通信する車内LANの一種です。CAN FDは、従来の規格であるCANよりも高速で通信できます。

2. ノイズ問題

CANのスピードアップとノイズ問題

CAN FDは従来のCANよりビットレートが高速化しています。
これにともない、CAN通信の際に発生するエミッションノイズの問題が増加します。

Classical CANとCAN FDにおけるビットレートとエミッションノイズのイメージ図。

CAN-FDにおけるノイズ問題

CAN FD等のインターフェースでは、差動伝送とよばれる伝送方式が用いられています。
差動伝送では2本の信号線の間の電位差によって信号を伝えるため、外部からの放射ノイズの影響を受けにくい特長があります。また、信号によって両ラインに発生する電波はお互いに打ち消し合うため、外部にノイズとして放射されにくくなります。

外来ノイズに対して

外来ノイズに関するイメージ図。外来ノイズは同相(コモンモード)で誘導されることが多い。逆相の信号は強めあう。同相のノイズはキャンセルされる。

ノイズの放射に対して

ノイズの放射に関するイメージ図。逆相の信号の放射は互いに打ち消しあう。ツイストペアの場合はさらに放射がすくない。

ところが、基板上ではさまざまな要因によりコモンモード電流が発生します。これが差動伝送ラインのケーブルに流れ込むと、ケーブルからコモンモードノイズが放射することになります。

コモンモード電流が流れる要因のイメージ図。

3. ノイズ問題の対策

コモンモードチョークコイルの利用

コモンモードノイズの対策にはコモンモードチョークコイルが適しています。
コモンモードチョークコイルは両ラインを磁気結合させたコイルで、差動信号などのディファレンシャルモードの信号には影響を与えずに、コモンモードのノイズだけを除去できるものです。

コモンモードチョークコイルの電流の流れを表すイメージ図。
  • 逆相(ディファレンシャルモード)の信号は磁界がキャンセル → 透過
  • 同相(コモンモード)のノイズは磁界が重畳 → 反射

コモンモードチョークコイルの品質とモード変換

コモンモードノイズは原則コモンモードノイズを除去する働きを持ちますが、両ラインのコイルのバランスが崩れると、モード変換が起きて、ディファレンシャルモードの信号の一部がコモンモードに変換されてノイズとなることがあります。このため、モード変換の少ないバランスの取れたコモンモードチョークコイルを使用することが重要です。

コモンモードチョークコイルのバランスに関するイメージ図。

CAN FDにおすすめするコモンモードチョークコイル

推奨するコモンモードチョークコイルの性能を表すグラフ。

CAN FDで求められる性能をクリアしたコモンモードチョークコイル

部品サイズ : 3.2×2.5mm

コモンモードインダクタンス : 100μH-30%/+50%(at 0.1MHz)

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