コンデンサガイド

コンデンサのインピーダンス ESRの周波数特性とは?

本コラムはコンデンサの基礎を解説する技術コラムです。
今回は、コンデンサのインピーダンスの大きさ|Z|と等価直列抵抗(ESR)の周波数特性についてご説明いたします。

コンデンサの周波数特性を理解することで、例えば電源ラインのノイズ除去能力や電圧変動抑制能力を判断することができるため、回路設計時に欠かすことのできない重要なパラメータといえます。ここでは、周波数特性のなかでインピーダンスの大きさ|Z|とESRについて取り上げます。

1. コンデンサの周波数特性

理想的なコンデンサ(図1)のインピーダンスZは、角周波数をω、コンデンサの静電容量をCとすると、式(1)で表わされます。

図1. 理想コンデンサ
 

式(1)から、インピーダンスの大きさ|Z|は図2のように周波数に反比例して減少します。理想的なコンデンサでは損失が無いため、等価直列抵抗(ESR)は零となります。

図2. 理想的なコンデンサの周波数特性
図2. 理想的なコンデンサの周波数特性

しかし、実際のコンデンサ(図3)には、容量成分C以外に誘電体や電極などの損失による抵抗(ESR)や、電極やリード線などによる寄生インダクタンス(ESL)が存在します。このため、|Z|の周波数特性は図4に示すようにV字型(コンデンサの種類によってはU字型)の曲線となり、ESRも損失に相当する値の周波数特性を示します。

図3. 実際のコンデンサ
図4. 実際のコンデンサの|Z|/ESR周波数特性(例)
図4.実際のコンデンサの|Z|/ESR周波数特性(例)

|Z|とESRが図4のような曲線となる理由は、以下のように説明できます。 

低周波領域:

周波数が低い領域における|Z|は、理想コンデンサと同じように周波数に反比例して減少します。ESRは、誘電体の分極の遅延による誘電損失に相当する値を示します。

共振点付近:

周波数が高くなると、寄生インダクタンスや電極の比抵抗などによるESRの影響で|Z|の挙動は理想的なコンデンサ(赤破線)から外れ、極小値を示します。|Z|が極小値となる周波数を自己共振周波数と呼び、このとき|Z|=ESRとなります。自己共振周波数を超えると、素子の特性がコンデンサからインダクタに変わり、|Z|は増加に転じます。自己共振周波数より低い領域を容量性領域と呼び、高い領域を誘導性領域と呼びます。

ESRについては、誘電損失に加えて電極起因による損失分が影響します。

高周波領域:

共振点から更に高い周波数領域において|Z|は、寄生インダクタンス(L)によって特性が決まります。高周波領域の|Z|は、式(2)によって近似することができ、周波数に比例して|Z|は増加します。

ESRについては、電極の表皮効果や近接効果の影響が現れてきます。

 

以上、実際のコンデンサの周波数特性について説明しましたが、重要なのは寄生成分であるESRやESLは周波数が高くなると無視できなくなることです。コンデンサが高周波で使用されるケースが多くなっているのに伴い、ESRとESLは静電容量値と同様にコンデンサの性能を示す重要なパラメータとなっています。

2. 各種コンデンサの周波数特性

前項ではコンデンサの寄生成分であるESR、ESLが周波数特性に大きな影響を与えることを説明しました。コンデンサの種類が変わると寄生成分も異なるため、ここではコンデンサの種類による周波数特性の違いについて説明します。

図5に静電容量10uFの各種コンデンサの|Z|及びESRの周波数特性を示します。フィルムコンデンサ以外はすべてSMDタイプのコンデンサです。

図5. 各種コンデンサの|Z|/ESR周波数特性
図5. 各種コンデンサの|Z|/ESR周波数特性

図5に示すコンデンサの静電容量値はいずれも同じ10uFであるため、周波数1kHz未満の容量性領域の|Z|はすべて同等の値を示します。しかし、1kHz以上ではアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサは、積層セラミックコンデンサやフィルムコンデンサと比較して|Z|が大きくなっています。これは、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサの電解質材料の比抵抗が高くESRが大きいためです。フィルムコンデンサや積層セラミックコンデンサは電極に金属材料を用いているため非常に低いESRとなっています。

積層セラミックコンデンサとリード付きフィルムコンデンサは、共振点近くまでほぼ同じ特性となっていますが、自己共振周波数は積層セラミックコンデンサの方が高く、誘導性領域の|Z|は積層セラミックコンデンサの方が低くなっています。これは、リード付きのフィルムコンデンサはリード線の分だけインダクタンスが大きくなっているためです。

以上の結果から、SMDタイプの積層セラミックコンデンサは広い周波数帯域でインピーダンスが低くなっており、高周波用途に最も適したコンデンサであると言えます。

次ページでは積層セラミックコンデンサの周波数特性や周波数特性データの入手方法についてご紹介しています。

3. 積層セラミックコンデンサの周波数特性

積層セラミックコンデンサの中でも原材料や形状の違いなど様々な種類があります。これらの因子が周波数特性にどのように影響しているのかについて説明します。

(1)ESRについて
容量性領域におけるESRは、誘電体材料起因による誘電損失に依存します。Class2(種類2)に分類される高誘電率系の材料は、強誘電体を使用しているためESRは大きくなる傾向にあります。Class1(種類1)の温度補償用の材料は常誘電体を使用しているため、誘電損失は非常に小さく、ESRも小さい値となります。

共振点付近から誘導性領域かけての高周波におけるESRは、電極材料の比抵抗率、電極の形状(厚み、長さ、幅)、積層枚数の他に、高周波領域では表皮効果や近接効果の影響を受けます。電極材料として、Niが使用されることが多くなっていますが、低損失タイプのコンデンサにおいては、比抵抗率が低いCuが選択されることもあります。

(2)ESLについて
積層セラミックコンデンサのESLは内部電極構造の影響を大きく受けます。内部電極の大きさを、長さl、幅w、厚さdとした場合、電極のインダクタンスESLは、F.W.Groverによると式(3)で表わすことができます。

 

この式からコンデンサの電極形状は、長さが短く、幅は広く、厚みは厚いほどESLが小さくなることが分かります。

図6は、積層セラミックコンデンサのサイズ別の公称容量と自己共振周波数の関係を示しています。サイズが小さいほど、同一容量における自己共振周波数が高くなっているため、ESLが小さくなることが分かります。このため、長さlが短い小型サイズの方が高周波に適したコンデンサであると言えます。 

図6. サイズ別公称容量値と自己共振周波数の関係
図6. サイズ別公称容量値と自己共振周波数の関係

図7は、長さlを短くし、幅wを大きくしたLW逆転コンデンサです。図8の周波数特性からは、同一容量でも通常のコンデンサと比較してLW逆転コンデンサのインピーダンスは低くなっており、優れた特性であることが分かります。LW逆転コンデンサを用いることで、通常のコンデンサより少ない数でも同等の性能が得られるため、員数削減によるコストダウンや実装面積を小さくすることができます。

図7. LW逆転コンデンサの外観
図8.LW逆転コンデンサと汎用品の|Z|/ESR
図8. LW逆転コンデンサと汎用品の|Z|/ESR

4. 周波数特性データの入手方法

周波数特性データは、インピーダンスアナライザやベクトルネットワークアナライザを用いて取得することができますが、最近は、各部品メーカーのWebサイトから確認することができるようになっています。

図9は弊社が提供している設計支援ツール「SimSurfing」の画面です。品番と確認したい項目を選択することにより、特性を表示することができます。さらに、シミュレーション用データとして、SPICEネットリストやS2Pデータをダウンロードすることができます。各種電子回路設計に是非ご活用ください。

図9. 設計支援ツール「SimSurfing」の画面表示例 (クリックすると図が拡大されます)

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担当:株式会社村田製作所 コンポーネント事業本部 A.S

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