ノイズ対策の基礎 【第6回】 コモンモードチョークコイル

2011/09/14
基礎

カテゴリー:ノイズ対策PLAZA
前回のチップ三端子コンデンサに続いて、今回はコモンモードチョークコイルの紹介です。


<コモンモードチョークコイルはノイズと信号を伝導モードによって区別する>
前回までのチップフェライトビーズやチップ三端子コンデンサは、ノイズ周波数が信号周波数よりも比較的高いという周波数の違いを利用して、ローパスフィルタとして働くことによってノイズだけを選択的に除去するものでした。コモンモードチョークコイルもノイズフィルタですが、コモンモードチョークコイルの場合は周波数の違いではなくて伝導モードの違いによってノイズと信号を区別します。このためには、まず、コモンモードとディファレンシャルモードという二つの伝導モードについて知っていただく必要があります。


<コモンモードとディファレンシャルモード>
通常、基板上の電気回路においては、ある部分から流れ出た電流は負荷を通って別の回路へ届き、基板上の別のルートを通って帰ってきます。(帰り道が基板のグランドプレーンであるケースも多々あります)これがディファレンシャルモード(ノーマルモードと呼ばれることもあります)という流れ方です。

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図1 ディファレンシャルモードの伝導ルート


一方、明確な配線としては存在しませんが、別の伝導ルートも存在します。基板上の各配線と基準大地間に微小な浮遊容量が発生するために、基準大地面から基板上の配線を共通に流れて反対側から基準大地面に戻っていく伝導ルートです。これをコモンモードと呼びます。


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図2 コモンモードの伝導ルート



基準大地面との間の浮遊容量は微小なものですが、信号周波数が高くなると微小な浮遊容量でもインピーダンスが低くなるのでこのコモンモードの電流が流れやすくなります。通常は、電子回路においては能動的にコモンモード電流を流すことはあまりありませんが、電源回路やドライバICのグランドがゆれたりすると、これらがドライブする回路全体も揺れることになるため、コモンモードのノイズとなります。この回路に外部に接続されたケーブルがあると、ケーブル自体にもコモンモード電流が流れ大地に対して揺れる電位を持つので、これがノイズ電波になって放射されることになります。


<コモンモードチョークコイルはコモンモード電流にだけ働くノイズフィルタ>
コモンモードチョークコイルは、上記のコモンモードとディファレンシャルモードという伝導モードでノイズと信号を区別するノイズフィルタです。一言で言うと、コモンモードにだけ働くフィルタです。
コモンモードチョークコイルの原理図を図3に示します。


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図3 コモンモードチョークコイルの動作原理


コモンモードチョークコイルは一つのコア(高周波用の場合はフェライトのコア)に2本の導線を巻いた構造となっています。このため、4端子になります。両者の巻き方向は互いに反対方向になっています。このような構造のコイルにコモンモードの電流が流れると、それぞれのコイルにおける電磁誘導現象によって磁束が発生しますが、発生した磁束の向きは同じ方向になるためお互いの磁束が強めあってインダクタとしての働きが高まります。一方、このコイルにディファレンシャルモードの電流が流れると、発生した磁束の方向は逆方向になるため磁束が打ち消しあってしまいます。これによってディファレンシャルモードの電流に対しては、インダクタとしての働きがなくなります。このように、コモンモードチョークコイルにおいては、ディファレンシャルモードに対してはインダクタとして働かず、コモンモードに対してだけインダクタとして働くフィルタとなります。