ノイズ対策ガイド

車載機器向け高温保証チップフェライトビーズの提案

1.はじめに

近年自動車の電装化が進み、カーオーディオ機器などの情報技術化やADAS(先進運転システム)の搭載が増加してきています。これらの機器に搭載される無線規格の増加、半導体の動作周波数高速化などにより、発生する伝導ノイズ・輻射ノイズの対策部品のニーズはますます高まってきています。

また、自動車の軽量化や機器の小型化により、エンジンルームに近い環境や熱がこもり易い環境で、125℃を超える高温保証が可能な部品のニーズが増加しています。

これらのニーズに対応する一つのソリューションとして、-55℃~+150℃環境下で使用可能な高信頼性チップフェライトビーズを紹介します。

2.フェライトビーズの必要性

車載機器でフェライトビーズが必要とされる2つのポイントを以下に示します。

1) 車載用ノイズ規格への適合

車載機器では、一般機器向け規格(CISPR22)よりはるかに厳しいノイズ規格(CISPR25)が適用されるケースが多く、規定されている周波数帯での対策を意識する必要があります。
この周波数帯は、過去から使用されているAMラジオ帯域を含む150kHz帯から、複数のGHz帯無線を搭載するインフォテインメント機器を意識した6GHz帯までを対象としています。
フェライトビーズは、比較的ノイズ対策の難易度が高いと言われるFMチューナ帯~GHz帯までをカバーしたノイズ除去特性(=インピーダンス)を有しています。(図1)

図1. 車載機器用ノイズ規格が求める周波数帯域と 代表的なフェライトビーズのノイズ除去特性

2) センサのノイズ耐性向上

自動車に内蔵するセンサは、地球環境保護や事故防止にますます重要な存在となってきています。

燃費向上や排気ガス中に含まれるNOx等(窒素酸化物)の削減には、エンジンの動作や排気状態を把握する各種センサが温度・流量・圧力等を把握し、電子制御ユニット(ECU)がエンジン動作制御を微調整しています。

センサや通信機器との融合が進んでいるADAS(先進運転システム)やADS(自動運転システム)では、歩行者や障害物といった自動車外の状況をセンサで把握してハンドル・ブレーキ・アクセル動作を制御しています。

その重要なセンシング能力がノイズによって劣化することは極力避けねばならず、センサにフェライトビーズを内蔵し、ノイズ耐性を向上させようという動きが活発になってきています。

株式会社 村田製作所のチップフェライトビーズは、シンプルな構造で安価なコストと小型サイズを実現し、豊富なラインアップ(以下*1)を取り揃えているEMC(Electro Magnetic Compatibility: 電磁両立性)ノイズ対策部品です。

一つの機器で複数の周波数帯ノイズをシンプル且つ簡単に対策する為には、フェライトビーズが適しています。特に、100MHzを超える高周波領域において、独自の材料及び浮遊容量(意図しない容量成分)を減らした設計により高インピーダンスを実現し、EMCノイズ対策に効力を発揮します。

*1ノイズ対策の基礎 【第4回】 チップフェライトビーズ

3.高温に耐えるフェライトビーズの要求

このように、自動車にはますます欠かせないフェライトビーズとなってきている中、125℃を超える高温に耐えるフェライトビーズを求める以下のような声が増加しています。

 

  自動車の燃費に直結する「軽量化」のために、エンジン系や安全系の電子制御ユニット(ECU)をエンジンルーム内に設置(機電一体化)したいが、エンジンルーム内は高温になる。
     
  電子制御ユニット(ECU)の小型化により、フェライトビーズを発熱部品(半導体)の近くに配置せざるを得ないし、熱がこもりやすくなったので、高温になってしまう。
     
  エンジン系や排気系のセンサは、どうしても高温にさらされるので、フェライトビーズをセンサに内蔵する場合は高温対応が必要。

これらによって、エンジン以外にも高温保証を必要とする機器が、図2のように増加してきています。

村田製作所の車載対応チップフェライトビーズはAEC-Q200に準拠、且つ独自の材料と設計技術により、エンジンルームでも耐えうる高信頼性を実現している為、保証温度に応じたあらゆる車載機器への展開が可能です。

図2. 自動車内で高温保証を必要とする電装機器

4.150℃保証チップフェライトビーズの紹介

1) 高温保証チップフェライトビーズのラインアップ

このたび、150℃保証フェライトビーズのラインアップを大幅に増強し、はんだ実装部品も導電性接着剤実装部品も選べるようになりました。

小型品も開発中であり、今後もより幅広いラインアップに対応していきます。

   ① 導電性接着剤実装に対応した外部電極銀パラジウム品(AEC-Q200対応)
       BLM18AG_WH1シリーズ
        1608サイズ/低周波から広帯域なノイズ対策に最適

   ② はんだ実装に対応した外部電極スズメッキ品(AEC-Q200対応)
       BLM18AG_BH1シリーズ
        1608サイズ/低周波から広帯域なノイズ対策に最適
       BLM18BD_BH1シリーズ
        1608サイズ/信号ラインのノイズ対策に最適
       BLM18KG_BH1シリーズ
        1608サイズ/低直流抵抗を実現しており電源ラインのノイズ対策に最適
       BLM18KG_JH1シリーズ
        1608サイズ/最大4A対応しており電源ラインのノイズ対策に最適
       BLM21AG_BH1シリーズ
        2012サイズ/低周波から広帯域なノイズ対策に最適
       BLM21PG_BH1シリーズ
        2012サイズ/最大3.3A対応しており電源ラインのノイズ対策に最適

表1. はんだ実装に対応した150℃保証チップフェライトビーズラインアップ纏め

2) 150℃保証チップフェライトビーズの定格電流でディレーティング

150℃保証品は、125℃及び150℃雰囲気温度の定格電流を定め、150℃環境下のスペックと信頼性を保証しています(ディレーティングイメージは図3参照)。

図3. 150℃保証品の定格電流ディレーティングイメージ

5.おわりに

「はんだ実装に対応した外部電極スズメッキ品」は2016年5月に1608サイズ品を新商品としてリリースし、現在は2012サイズ品も含め量産中です。今後、サイズ、対象周波数帯のラインアップ拡充を進め、更には150℃を超える温度保証(170℃以上)に対応した商品の展開を検討して行きます。

 

株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術2課
丸井 友樹

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