NFC用インダクタには13.56MHzの高振幅電流が流れます。そのため通常のマッチング用インダクタとは選定ポイントが異なります。ここではNFC回路の特徴とインダクタ選定のポイントを説明します。
従来のNFC制御ICは通信時の出力が小さいICが主流でした。しかし、携帯機器に搭載するためにNFC用アンテナの小型化が進んでおり、電流振幅が小さいままではNFC通信性能が低下します。そこで、高いNFC通信性能を実現するために通信時の出力が大きいICが増えています。NFC用インダクタの選定において高電流振幅でもインダクタンスが変化しないことが重要です。
図3にLQW18CNR16J00(巻線タイプ)、LQM18JNR16J00(積層タイプ:新)およびLQB18NNR22J10(積層タイプ:旧)のインダクタンスの電流振幅依存性を示します。NFC通信において、インダクタには約100~700mAppの電流振幅をもつ交流電流が流れます。LQB18Nは400mAppにおいておよそ2倍のインダクタンスに変化してしますが、LQW18CとLQM18Jは1Appを超えてもインダクタンスが変化しない特性を実現できています。
LQM18Jは通電時にインダクタンスが変化しないだけでなく、良好なNFC通信性能を示します。図4に示すように、NFCフォーラム(NFCの標準規格・共通仕様の策定を行う業界団体)の通信性能試験における測定点のうち赤色の点で通信性能を測定しました。LQW18CとLQM18Jの通信性能測定の結果を図5に示します。4.1Vの線はこの試験における合格基準であり、電圧が高いほどNFC通信性能が良好といえます。LQM18JはLQW18Cと同等のNFC通信性能を確保できています。