トップメッセージ

「エレクトロニクスとともに描く未来」
 ―そこにムラタがあることが、
 その地域の喜びであり、
 誇りであるように―

村田製作所 代表取締役会長 兼 社長
村田 恒夫

私たちを取り巻く社会の変化

持続可能な社会への貢献は、私たちの使命

 「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」

 これは私たちムラタの従業員が毎日のように唱和し、創業当時からずっと大切にしてきている言葉です。私たちムラタは、これまで以上にこの言葉を肝に銘じて、日々の事業運営に取り組んでいかなければなりません。このように感じている背景には、昨今の社会のさまざまな変化にあります。

 持続可能な社会の実現のためには、企業が社会から信頼され、環境や健康、人権といったさまざまな社会課題の解決に貢献していくことが必要です。事業を通じて課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献することは、私たちの使命です。

 ムラタはこれまでも事業を通して、社会課題に取り組んできました。私たちがコーポレートスローガンとして掲げている“Innovator in Electronics”という言葉には、事業において文字通りのイノベーションを先導するのみならず、環境や社会に対してより良い方向に働きかけ、エレクトロニクスの独創的な発展を通じた価値創造を目指す姿勢が込められています。私たちは社是、そして”Innovator in Electronics”のもと、軽薄短小のモノづくりによる資源の効率利用、高効率モジュールの供給による省エネへの貢献、通信市場・自動車市場などへの独自性のある製品の提供を通じて文化の発展に貢献してきたのです。

 そして、今後さらにムラタが貢献できる機会は拡大していきます。エレクトロニクスの分野では、あらゆるモノが通信ネットワークを介してつながるIoT社会が到来し、民生向け、医療、FA、インフラなどのあらゆる分野でITソリューションサービスが求められています。その流れをさらに後押しすると予測されているのが、5G、LPWAに代表される 次世代通信技術であり、これらによってもたらされる高速通信・低遅延・大容量化・広域通信・同時多接続といった通信技術の進化は、より一層IoT社会の進展を加速させていくことでしょう。

 自動車産業の分野でもエレクトロニクスの世界に重要な影響を与える変化が起こりつつあります。電動化、自動運転化によって、半導体や通信機能が増え、自動車はスマートフォンのような電子機器、通信機器に近づいていくことが予測されています。また自動車そのものだけでなく、サービスやインフラといった周辺領域でも市場は拡大していき、ムラタと社会との関係性はますます深いものになっていきます。

 それに加えて、企業の社会的責任に対する世の中の価値観の変化、事業成長にともなうムラタの社会への影響力の変化によって、これまで以上に社会と調和した事業運営が期待されていることを強く感じています。2030年をゴールとして国連が掲げている、持続可能な開発目標(SDGs)は私たちの活動・方向性と一致するものであり、今後も 私たちが社会とともに持続的に成長していくためには、ESGの観点から導かれるムラタだからこそ解決に貢献できる社会課題解決を経営戦略に織り込み、ステークホルダーと調和した事業を意識的に行っていかなければなりません。これらの社会の変化を踏まえた上で、私たちはこれまで以上に幅広い視野をもって事業運営を行い、文化の発展に貢献していきたいと考えています。

中期構想2021

実現に向けた3ヶ年の取り組み

 これらの社会貢献を現実のものとするために、私たちは中期構想2021を掲げました。その大きな3つの柱が、①人と組織と社会の調和、②飛躍的な生産性向上と安定的な供給体制構築、③ポートフォリオ経営の実践です。これらの施策をひとつひとつ実行していくことで、実現に向けて着実に歩んでいきます。

 3つの柱のうち、特に注力しなければならないのが、「人と組織と社会の調和」です。これは私たちが社会課題の解決に取り組み、持続可能な成長を続けていくための基礎となる取り組みです。今年度、私たちは社会課題を起点としてムラタが中長期で取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を特定しました。マテリアリティを特定するにあたり、全役員が一堂に会して合宿を行い、事業と環境や社会との関わりについて徹底的に議論を交わしました。そうした議論の場を通じて、私たちは、“持続可能なモノづくりこそがムラタに持続的な成長をもたらす”という想いにいたったのです。

 まず「環境」という観点では、事業機会の拡大と同時に、事業活動プロセスから生じる影響を考慮しなければなりません。企業が社会の一員として事業を営んでいる以上、この点への配慮を欠いてしまえば、直接的に環境へ悪影響をおよぼし周囲に迷惑を掛けてしまうだけではなく、今まで培った信用を棄損し、私たち自身が活動する基盤を脅かすこととなってしまいます。これまでも各工場を中心に省エネや温室効果ガスの削減、廃棄物量の削減や資源のリサイクルを行ってきましたが、これらの活動を会社全体としてより一層強化・統合することで、事業に統合させた戦略的な取り組みを行い、社会とともに持続的に成長できる基盤を築き上げていきます。

 また、「社会」という観点では、人権と多様性の尊重を通じた安全・安心な職場づくりをキーワードとして取り組みを進めていきます。ムラタは近年の事業拡大やM&Aの実行によって、人材・組織の多様性が増しています。さまざまなメンバーがいる中でも、自分自身の意見を発信し、相手の考えを尊重しながら意見をぶつけあってチームとして の価値を高めていける環境こそが、私たちが目指している理想の職場です。この取り組みを進める上で不可欠な価値観が、ダイバーシティ&インクルージョンです。そのため、組織内や組織間のコミュニケーションを促進するプログラムの展開や、専門性を活かした多様な貢献を可能とするキャリアパスの充実も進めていきます。このような新たな取り組みと従来から継続的に行っている安全・安心な労働環境の構築を統合して、理想の職場づくりを実現していきます。

 一つ目の柱で目指している基盤づくりを原動力として、二つ目の柱である「飛躍的な生産性向上と安定的な供給体制構築」では、仕事の仕組みの進化と効率化を目指しています。この課題に取り組んでいる背景には、ひとつは生産年齢人口の減少があります。日本では2020年代前半には就業者数の増加が頭打ちになると言われており、人材確保の問題は今後の事業運営のボトルネックにもなりうるため、仕事の仕組みを変えることで抜本的に生産性を改善しなければなりません。もうひとつの理由は、最新テクノロジーを取り入れて“ 次世代のモノづくり”を実現し、ムラタの強みのひとつである“モノづくり力”により一層磨きをかけるためです。

 これまでの発想の延長線上にはない生産性改善を実現するためには、スマートファクトリーの構築が不可欠です。最新のIT技術をベースとした次世代設備・工法・管理技術を生産性向上の効果が大きい領域に重点的に導入し、各工程のデータ活用による品質作り込み強化、設備生産性の向上、設備課題の見える化、ロボット・AGVによる作業の自動化などを実現していきます。

 また、AIやRPAを含めあらゆる手段を用いて直接・間接ともに労務効率を上げていきます。AIやRPAの導入検討をきっかけにして業務の棚卸しを行い、その業務がムラタの競争優位の源泉となっているかを問い直し、取捨選択した上で、ITを活用した仕事の標準化と自動化を同時に進めていきます。

 最後の三つ目の柱が、「ポートフォリオ経営の実践」です。これは、広がっていく事業機会に対して経営資源の最適な配分を実行する取り組みです。特に市場の観点では通信と自動車の2つの市場に主たる経営資源を投入し、機会を確実に捉えマーケットの一層の発展に貢献することで、より豊かで便利な未来の創造に寄与していきたいと考えています。

 自動車市場ではお客様から求められるQCDの期待水準が高く、長期的かつ安定的な供給が求められるため、より戦略的に知恵を絞っていくことが求められます。また、自動車単体(In - Car)のみならず、ほかの自動車や交通インフラと通信技術を介して協調する領域(Out - Car)も含めて市場を捉え、ムラタの強みを活かせる領域をより広い視野で見出していきます。

 コア・コンピタンスの獲得と強化も大切です。競合他社に真似できない核となるコア・コンピタンスを活かした事業運営でなければ、持続的な成長は難しく、市場の中でムラタがその事業を担う必然性は乏しくなってしまいます。経営資源の最適配分と両輪で実行していかなければなりません。

75周年を迎え、新たな決意

これまでも、これからも変わらぬ姿勢

 今年、村田製作所はおかげさまで創業75周年を迎えることができました。京都では歴史の長い老舗企業が多いため、100周年を迎えないと一人前ではないといわれていますが、エレクトロニクスという変化の激しい分野で75周年を迎えることができたことを従業員一同、誇りに思っています。

 創業以来、ムラタの製品は幅広い電子機器に使用され、さまざまなお客様のニーズを捉え、数多くの電子部品を供給することで信頼を蓄積し、経験と実績を積み重ねてきました。その75年もの経験を通じて培われたのが、ムラタのコンピタンスである、“グローバルネットワークと顧客層の厚み”、“技術開発力”、“モノづくり力”であり、これらの強みを纏め上げているのが、ムラタ従業員の“組織連携力”です。確かな強みと強固な組織・メンバーの力が有機的に連携することによって、豊かで持続可能な社会の実現に貢献できるのです。

 私たちが担うべき社会的責任をあらためて肝に銘じるため、大切にしている創業者の言葉があります。それは、“そこにムラタがあることが、その地域の喜びであり、誇りであるように“という言葉です。

 周囲の方々に心からこのように思っていただけるためには、愚直なまでに一貫した姿勢で努力を積み重ね、周りから認めてもらえる存在であり続けなければなりません。社会に対して主体的により良い方向へ働きかけていく自らのアイデンティティを今一度再確認し、ステークホルダーと調和した価値創造に真摯に取り組んでいきたい。
私たちムラタは、数多くの協力者との共栄を目指し、これからもともに歩んでいきます。

ムラタの経営理念