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弾性表面波デュプレクサの開発で「市村産業賞 本賞」を受賞

2011/04/13

株式会社村田製作所
代表取締役社長 村田 恒夫

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概要

株式会社村田製作所は、財団法人新技術開発財団第43回「市村産業賞本賞」を受賞いたしました。市村産業賞とは、優秀な国産技術の開発に功績のあった技術開発者に贈られ、1969年の第1回以来、18件目となる名誉ある賞です。受賞内容は以下の通りです。

テーマ

平坦化SiO2膜/Cu電極/基板構造小型弾性表面波デュプレクサの開発

受賞者

代表取締役 社長 村田恒夫
技術・事業開発本部 門田研究室 室長 門田道雄
技術・事業開発本部 開発1部 係長 中尾武志
EMI事業部 商品開発部 主任 西山健次

受賞理由

温度特性を改善し、十分な耐電力性能も備えたPCS*1やW-CDMA*2などの携帯電話用の弾性表面波 (SAW) デュプレクサ*3を開発しました。形状を従来の誘電体デュプレクサに比べ約40分の1に小型化することに成功し、これにより、携帯電話の小型化、低消費電力化、マルチバンド化に大きく貢献していることが高く評価されました。

開発の背景

アメリカのPCS方式携帯電話システムでは、送信周波数と受信周波数との間隔が非常に狭く、混信を防ぐための温度安定性と急峻な周波数特性が求められます。また、全世界向けW-CDMA方式等では、消費電力低減のため温度に依存しない挿入損失*4の低いデュプレクサが要求されます。さらに、携帯電話への投入電力による発熱から生じる周波数変動があるため、より一層の温度安定性が必要です。一方、温度特性が良好な誘電体デュプレクサは形状が非常に大きく高価なため、小型で低価格な弾性表面波 (SAW) を用いたデュプレクサが望まれていました。ところが、従来のSAW素子の温度特性には多くの課題があり、温度安定性に優れたSAWデュプレクサは実現されていませんでした。

開発技術の概要

温度特性改善のために、厚いアルミ (Al) 電極が形成された基板上に酸化シリコン (SiO2) 膜を成膜した時に生じる特性の劣化の原因が、表面のAl電極と同じ厚みの大きな凸形状にあることを突き止め、SiO2膜表面の平坦化を行いました。しかし、平坦化を行っても特性が劣化したため、解決策として銅 (Cu) 高密度電極を新規に採用しました。Cu電極の厚みは電極抵抗や電気機械結合係数から最適化しています。また、携帯電話に投入される電力に耐えるため、Cu電極にAlを添加し、その量の最適化及び製造時の周波数ばらつき低減方法の開発等を行うことで、実用化にも成功しました。

市村産業賞について

リコー三愛グループ各社を統轄した創業者、故市村清氏の昭和38年4月29日紺綬褒章受賞を記念して、科学技術の普及啓発に資するとともに科学技術水準の向上に寄与することを目的として創設されました。財団法人新技術開発財団により、科学技術の進歩、産業の発展、文化の向上、その他国民の福祉・安全に関し、科学技術上貢献し、優秀な国産技術の開発に功績のあった技術開発者が表彰されます。

用語解説

*1 PCS (Personal Communications Service) :
アメリカのデジタル携帯電話サービスで採用されている方式
*2 W-CDMA (Wideband Code Division Multiple Access) :
第三世代携帯電話の無線通信方式の一種
*3 デュプレクサ:
アンテナ共用器。送信と受信を同時に行う通信機器において、送信アンテナと受信アンテナを共用するために、送信経路と受信経路を電気的に分離して送受信する部品
*4 挿入損失:
デバイスに入力した信号の強度とデバイスから出力される信号の強度比。デバイス内部で失われる電気エネルギー量を示す

ムラタについて

村田製作所はセラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーです。独自に開発、蓄積している材料開発、プロセス開発、商品設計、生産技術、それらをサポートするソフトウェアや分析・評価などの技術基盤で独創的な製品を創出し、エレクトロニクス社会の発展に貢献していきます。

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