製品技術紹介

End to Endトレーサビリティを実現する超小型RFIDタグ(マジックストラップ)

電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年4月6日号に掲載された内容を再構成したものです。

掲載誌:電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年4月6日号

1.はじめに

株式会社村田製作所は、小型機器向けに在庫管理や履歴追跡するバーコードの置き換えとして、製品組み立て後も読み取り可能な2012サイズ(2.0x1.25㎜)の超小型RFIDタグ(マジックストラップ®)“LXMS21NCNH-147”(図1参照) とその読み取りに最適なリーダライタ ”LXRFZZUAAAシリーズ”(図2参照)を提供している。

LXMS21NCNH-147の外観イメージ
図1. LXMS21NCNH-147の外観
図2. RFID リーダライタモジュール(左)及び小型タグ読み取り用アンテナ(右)の外観

2.RFID

RFIDとは、無線を用いた自動認識技術で、ICタグを使いさまざまなモノを識別・管理するシステムのことである。電波を使いデータを非接触で読み書きできるため、1枚ずつ読み取るバーコードと比較し、複数枚を一度に読み取ることができるほか、電波が届く範囲であれば数メートル離れた距離でも通信可能である。

3.開発の背景

1990年代後半から2000年初頭に掛けて検討・利用が進み始めた自動認識技術であるRFIDは、物流やアパレル業界などを中心に、順調に市場を拡大している。固有のIDを付与する事で在庫管理や履歴追跡が容易になるため、バーコードの置き換えとしてもさまざまな要望が増えている。しかし、リストバンド型の活動量計やメガネ・時計型のウェアラブル機器、ワイヤレスイヤフォン、補聴器などに代表される小型機器に関しては製品そのもののサイズゆえ、トレーサビリティ実現に向けた課題が多い。

当社が2008年にリリースしたRFIDタグ(マジックストラップ®)はプリント基板(以下、PCB)上に実装し、そのグランドパターンをアンテナとして利用することでPCBそのものをRFIDタグにすることができた。しかしながら、小型機器ではPCBの面積が非常に小さく、PCBでアンテナを確保することが難しくなってきた。2次元バーコードについては、筺体内部のエリア確保が難しく、またレーザーマーキングも製品組み立て後は読み取るために分解が必要となってしまう。

そこで、当社では製品内部の限られたスペースにも埋め込み可能なアンテナ内蔵型・超小型RFIDタグ(マジックストラップ®)“ LXMS21NCNH-147”とRFIDリーダライタを開発した(図3参照)。

図3. 小型機器に内蔵されたRFIDタグを読み取るイメージ

4.特徴

超小型RFIDタグ(マジックストラップⓇ):LXMS21NCNH-147

  • アンテナ内蔵(図4参照)としては業界最小クラスのサイズ:2.0x1.25x0.55mm
  • 優れた堅牢性
  • UHF帯RFIDの標準規格であるISO18000-63およびEPC Global Gen2(v1.2.0)に準拠
  • 865MHzから928MHzまで幅広く各国のUHF RFID周波数に対応
  • 内部ユーザ書き換え可能メモリ領域512bitを確保
図4. LXMS21NCNH-147内部構造

UHF RFIDリーダライタ:LXRFZZUAAAシリーズ

  • EU、US、JP帯域に対応した使用地域ごとのラインアップ展開
  • 北米向けFCC、IC認証、欧州向けETRI認証、日本国内向け技適認証を取得
  • UARTインターフェース対応
  • USBインターフェースおよびアンテナを付け加えたスターターキットの提供

5.小型機器に適用時の読み取り特性

LXMS21NCNH-147をLXRFZZUAAAシリーズのリーダライタで読み取った場合の通信距離は、自由空間で約13mm(24dBm出力時)である(図5参照)。このRFIDチップを小型機器の筐体内側に組み込むと、読み取り距離は多少の劣化はあるものの、筐体の外側からでもRFIDタグの情報をリーダライタで読み取ることができる。

図5. LXMS21NCNH-147の通信距離イメージ

これにより、製造工程における個体識別だけでなく、市場流通後のアフターマーケットでもリーダライタをかざすだけで製品を分解することなく製造番号を読み取ることができる。そのため、サービスセンタで即座に製造ロットや修理履歴の情報を参照することが可能となり、顧客サービスの向上が期待できる(図6参照)。

図6. End to Endトレーサビリティのイメージ

6.今後の展開

RFIDはタグとリーダライタの間に金属があると電波が遮蔽されて通信することができないため、現状はプラスチックなど非金属の素材が使われている部分に配置する考慮が必要である。今後は、アナログ時計や高級スマートウォッチの様に、完全に金属で覆われた状態でも読み取ることができるソリューションの提供に取り組む。

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