製品技術紹介

IMUユニットにおいて期待!ジャイロセンサを用いて真北検知を実現

電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2018年10月4日号に掲載された内容を再構成したものです。

掲載誌:電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2018年10月4日号

株式会社村田製作所(以下、当社)のジャイロセンサは高精度/高機能製品として自動車市場を始め、産業、ヘルスケア市場で利用されている。

今後自動車市場では自動運転の普及が進むにつれ、車体の位置情報を正確に計測することが重要となる。

今回当社はジャイロセンサの高精度さを実証するデモ機を開発した。正確な真北検知を可能にしたソリューションと位置情報検出技術への展開について紹介する。

North Finder(デモ機)のイメージ
図.1 North Finder(デモ機)

新しいデモ機-North Finder-は、高精度なMEMSジャイロセンサにより、地球の回転を検出し、2分で真北を検出できる。この迅速なソリューションは自動車の自動運転の向上に利用できるが、他の車両の操縦や正確な位置検出など全く新しい用途への活用も可能である。当社のMEMSジャイロセンサは現在第3世代目を開発しているが、さらなる性能改善に向け今後も開発を継続する。真北を2度の精度、しかもわずか2分で検出することができるNorth Finderと名付けたデモ機の完成はこれまでの開発の成果である。

新しいアプリケーションを低コストで実現可能

正確、迅速に真北を検出するソリューションが車の自動運転や位置検出用途に全く新しい可能性を切り拓く。 
自動運転では常に車体の位置や移動方向を把握する必要があり、North Finderには最適な用途である。将来、自動運転車が一般的になれば、その重要性はさらに高まるだろう。 

例えば、地図に載っていない場所に車を駐車した場合、車体がどの方向を向いているか把握する必要がある。それが分からなければ最寄りの道路に出るルートを探すことができないが、North Finderを使えば、自動運転車はカメラなしでも短い距離であれば走行が可能となる。「自動運転は自動車に限らず他の車両にも広がり、真北の情報が自動運転のヘリコプターや航空機にも同様に重要になる日が訪れることは間違いない」と開発担当者は予測している。

また、North Finderは、鉱山やトンネル設備など地下用途にも使用可能である。バックホウやブルドーザ、コンクリートポンプ車などの大型重機でも、ブームやノズル位置の制御に正確な位置情報が必要なため、North Finderが役立つ。この新しい製品は今後さまざまな分野での利用が予想され、当初想定していた用途を超えた展開も見込まれる。

ジャイロセンサで真北を検出する

MEMSジャイロセンサを用いて真北を検出する上での最大の課題はノイズであった。当社はこれを極めて低レベルに抑えることに成功した。高精度/低ノイズセンサの実現により、より新しいソリューションへの展開が可能となった。

しかしながら、ジャイロセンサを使ってジャイロコンパスを作るというアイデアは別に新しいものではない。タンペレ工科大学のチームがムラタのMEMSジャイロセンサSCC1300を利用して、2010年に初の実験を実施している。最初のジャイロコンパスでは真北を探すのには2時間を要したが、その後アルゴリズムを改良することで15分にまで短縮することができた。しかしそれでも、これを現実的な用途で使うのには無理があった。

高性能なジャイロセンサは地球の回転を測定できる。地球は24時間で360°回転するが、これを1分に換算すると0.25°になる。North Finderは、北、東、南、西と方位を順次指し示すが、センサが北を指しているときの測定レートが最大で、南を指している時が最低となる。

SCC2000シリーズのイメージ
図.2 SCC2000シリーズ
表1.スペック

磁北極のふらつき

北の方角を知ることは操縦でも位置検出でも重要となる。概して、これまで北を検出するために使用されてきたソリューションは、不正確であるか、高価であった。例えば、磁気コンパスは、船や磁性を持つ鉱石がたくさんある場所など、大量の金属がある環境で使用すると間違った方角を指してしまう。これは室内でも同様である。

また、近くに誤動作を起こすような物がなくても、磁気コンパスには1つ大きな問題がある。磁気コンパスは磁北の方角を指し示すということである。真北は地球の回転軸が地表と交わる点であるのに対し、磁北は時間が経つと地核の磁性の変化と共に動く。現在、磁北はカナダにあり、真北の地点とは約500キロ離れている。精度が要求される用途ではこれは問題である。

また、その他のソリューションとして航空機ではリングレーザージャイロスコープが使われているが、これは高価である。衛星を使ったシステムは衛星が見える必要があるので、地下では使えない。

MEMSテクノロジー

当社のシリコンベースの静電容量センサは、単結晶シリコンとガラスからできている。これらの材料は時間や温度に対して、他に類を見ない信頼性、精度、そして優れた安定性を保証している。製造には半導体産業の製造技術を利用しており、費用対効果の高い大量生産が可能である。 

当社のMEMSセンサは堅牢な構造を持ち、シンメトリーで安定した設計思想が安定性や直線性、交差軸の感度、振動への感受性の改善に役立っている。当社の3D MEMS素子は、パーティクルや化学物質が入り込むことがないように密封されており、信頼性を確保している。

※本記事は当社ジャイロセンサの精度のよさを示すものであり、デモ機やアルゴリズムの配布や販売は行っておりません。

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