ポリ乳酸の圧電性を応用した新しいセンサデバイスの開発

特徴を生かした応用デバイスの提案

リーフグリップリモコン

リーフグリップリモコン (図4) は、曲げやねじりの単純な動作により、TVをリモートコントロールできるものです。中央のプレート部分はアクリル板の2層構造となっており、一方のプレートには曲げ検知用の圧電フィルム、他方にはねじれ検知用の圧電フィルムを貼り付けています。2層のプレートの隙間には、フレキシブルな光発電デバイス (色素増感電池) フィルムを挿入しています (図5) 。

圧電フィルムは透明度が高いため、光電池の発電効率を落とすことがありません。両側のグリップ部分には二次電池、電源回路、送信回路、センサ回路が埋め込まれています。光電池は光がある環境では常に発電し、その電力を二次電池に蓄えているため、電池交換は不要です。

このリモコンでは以下のような操作ができます。

  • 軽く振る: 電源のON、OFF
  • ねじる: チャンネルのアップダウン
  • 曲げる: ボリュームのアップダウン
  • 素早く2回ねじる: 入力の切替

このように手元を見ることなく、直感的な操作でTVをコントロールできるため、従来のボタン式リモコンとはまったく違う、新しい操作感覚を体験することができます。また、例えば高齢者にとっては都度眼鏡をかけ、手元を見てボタン操作を行うような煩わしさから解放されます。

Fig. 4 External view of the Leaf Grip Remote Controller

図4: リーフグリップリモコン外観

Fig. 5 Cross-sectional view of the Leaf Grip Remote Controller

図5: リーフグリップリモコン断面図

タッチプレッシャーパッド

タッチプレッシャーパッド (図6) は、従来の静電容量型のタッチパネルに押圧力検知を加え、XYZの3軸検知を実現したものです。曲げ検知用圧電フィルムの両面に、従来の静電容量方式の位置検知用電極に加え、押圧力による電圧の発生を検知する電極を複合して形成することで、押圧力が加わったときわずかにタッチパネル自体がたわむことを検知します (図7) 。

PVDFでは焦電性があるために指で触れただけで温度が変わり、電圧が発生してしまい、押圧力を正確に検知することができませんでしたが、PLLAでは焦電性がないために正確に押圧力のみを検知することが可能となりました。単に従来のタッチパッドに歪みセンサなどの他のセンサを付加して押圧力を検知できるようにしたものではなく、タッチパネルそのものが押圧力を検知できるため、構造を非常に単純化できるというメリットを持ちます。電極を透明にしたタッチパネルへの応用に際しては、PLLAは極めて透明度が高いことも大きなメリットのひとつです。

Fig. 6 External view of a touch pressure pad

図6: タッチプレッシャーパッド外観

Fig. 7 Sensing principle of a touch pressure pad

図7: タッチプレッシャーパッド検知原理

おわりに

変位センサとしての応用では、曲げ、ねじれの変位量によって発生する電圧の大きさが変動するため、直感的なコントロールが要求されるゲーム機器や介護機器の操作などへの応用が期待できます。近年は未来型携帯電話としてキネティックコントロールも提唱され始めており、タッチプレッシャーパッドの技術を応用すれば、タッチパネル自体が、曲げ、ねじれ動作を検知することも可能となります。このタッチパネルは、従来通りジェスチャー認識機能も有しており、さらに一歩進んだ直感的なHMIの実現が可能です。このように手指でコントロールする機器には、温度による誤検知を防ぐため、非焦電性であることが求められ、この点においてもPLLAは非常に優れた材料であるといえます。今後もさまざまな場面での用途を探索し、人とマシンをやさしくつなぐセンサ商品群の一助となれるよう開発を進めていきたいと考えています。

用語解説

*1 焦電性: 温度変化によって誘電体の分極 (表面電荷) が変化する現象をいう。
*2 生分解性高分子: 微生物により分解される高分子である。PLLAは土中の加水分解細菌により完全に水と二酸化炭素に分解されるが、空気中では極めて安定な材料である。
*3 キラリティ: 3次元の図形や物体、あるいは現象が、それ自身の鏡像と重ね合わすことができない性質。

アプリケーションノート