まだまだ改善していかなければならない技術、商品化で開発は終わったのではなく、始まったばかりだ

高まるニーズに応え、独自の電界結合方式へ切り替え

着手は電磁誘導方式が早く、開発は進んだ。スマートフォンに対する充電システムとして発売も目前に迫ったとき、海外メーカーから3台同時に充電できる新製品が公表された。しかも、かなりの低価格で、競合に先を越されてしまった。同じ頃、ワイヤレスパワーコンソーシアム (WPC) という組織が結成され、電磁誘導方式の標準化が図られている。ソフトや制御のノウハウをオープンにして、ワイヤレス給電の普及を促進するのが狙いだ。技術を公表し、各社が競合する中で進むのか、違う道を選ぶのか。検討の結果、電磁誘導方式の開発を断念し、独自の技術として確立しつつあった電界結合方式へと切り替えた。体制を強化するために社内公募制度を使い、チームを8名に増員して開発を進めた。

CEATEC JAPANでは大きな人気を集め、ワイヤレス給電の関心の高さをうかがわせた。いよいよモジュールが完成し、商品化のパートナーも日立マクセル株式会社と決まった。問題は価格だった。市場想定価格は15,000円、充電という機能にユーザーが価値を認めるのだろうか。大きな課題を抱えながらも発売され、市場では一定の評価を得た。しかし、技術者として、開発は始まったばかりと感じている。改良の余地はまだまだある。

小型化によって低価格化を実現、市場が一気に大きく広がる可能性

電界結合方式は、その仕組みから小型化、薄型化が容易だと考えられている。小型化はムラタの得意とする技術で、小さくなるということは低価格化に直結する。同時に急速充電やおサイフケータイ®などの付加機能を加えれば、普及に弾みがつくのではないか。電界結合方式はムラタ独自の技術であり、競合他社はいない。何かブレイクスルーするポイントがあれば、一気に普及する可能性があると感じている。

価格が下がれば、ワイヤレス給電の市場は大きく広がる。家庭やオフィス、あるいは店舗で、適当に置くだけで充電できるというニーズは高い。応用展開として、車のコンソールボックスに内蔵すれば、そこに携帯電話を置くだけで走行中に充電できる。トランスや電源を強化すれば、電気自動車 (EV) などの充電にも使える。電磁誘導方式と違い、位置合わせをしなくても給電する点は大きなメリットになるはずだ。一般の関心が高い商品だけに、普及すれば大きな市場が形成される。そのためには、技術開発を急ぎたい。

ワイヤレス市場

ユビキタス志向が強まる中、ワイヤレス関連市場が急成長を遂げると予想されている。
電源コードなしに電力を供給するワイヤレス給電技術もその一つ。
これまでは電動歯ブラシやコードレス電話など、限定的な用途にとどまっていたが、2011年夏に対応するスマートフォンが登場し、注目を集めた。今後は電気自動車への搭載も期待されており、巨大市場が立ち上がる可能性がある。

ワイヤレス電力伝送モジュール

10Wの電力を供給できる給電モジュール。
充電のワイヤレス化が実現できる。ムラタの電界結合方式は、送電側のアクティブ電極・パッシブ電極、および受電側のアクティブ電極・パッシブ電極で構成される2組の非対称ダイポールを垂直方向に配置。2組の非対称ダイポールの結合により発生する誘導電界を利用して電力を伝送する。位置自由度が高く、高効率なワイヤレス電力伝送が可能。
(特許No: PCT/FR2006/000614)

Wireless Power Transmission Module

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