Leader Talk

グローバルな視野でエネルギーをとらえる、非セラミックという事業で新たな社会貢献を目指す

Both advanced and developing nations alike share energy issues, but the challenges they face are different. Murata is looking at ways to offer products that suit countries both with and without abundant power supply. To this end, the company needs to develop products from a global perspective, products that allow it to meet the challenges of opening up new markets; and this is exactly where Karun Malhotra can make the best use of the international experience he has accumulated in India, Canada, Japan, and the USA.

マルホトラ カルン/Karun Malhotra
技術・事業開発本部
技術企画統括部
統括部長

1990年入社。研究開発、コンデンサ工場 (日本・北米) 、北米コンデンサマーケティングおよびキャパシタ新規事業部門に5~6年間ずつ勤め、2012年3月より現職。将来の技術戦略を構築しながら、ムラタのエネルギー事業の立ち上げも担っている。
趣味は散歩、料理と異文化を理解すること。

創業以来主に手がけてきたセラミックとは異なる素材を使ったコンデンサ。 いわゆる非セラミック系のコンデンサが、2010年10月に登場。 今後、非セラミックは、新たな事業領域として成長していくことになる。 これも、ムラタの環境・エネルギー分野への挑戦の一つだ。

非セラミックのコンデンサ開発エネルギー分野への進出

セラミック系のコンデンサ開発を担当してきた。およそ5年前からカーボンを使った研究を始め、2010年10月に製品化し発表した。蓄電効率が高く、電子機器の中でバッテリーのような役割を担うことができる電気二重層型のコンデンサで、注目されるエネルギー分野への拡大を考えている。すでにデジタルカメラ、デジタルビデオ、ハイブリッド車などのパワーエレクトロニクス関係に採用されており、車両関係や夜間電力の蓄電などへの展開を模索している。

今のセラミックコンデンサの役割は、蓄電というより電気の整理であり、容量よりも機能が求められている。それに対して、電気二重層コンデンサは、エネルギー密度が高く小型化しやすいため、容量が多くとれる。電気自動車 (EV) などの回生エネルギーを蓄えるのにも使える。

企業間のアライアンスが、これからの成長を支える

エネルギー事業を展開するに当たり、社内の力だけでは不足だと考えている。社内外を問わず、幅広い技術提携が必要。私はこれからの企業は、アライアンス (提携) で伸びていくと思う。最近はM&A (企業の合併・買収) も盛んに行われているが、買収の多くは買う側の企業文化に飲みこんでしまう。お互いが伸びるためには、相手を尊重することが重要で、そのためには提携が適している。エネルギー分野についても、世界的な視野で提携していける企業を探していく。

今回の新製品、電気二重層コンデンサも、オーストラリアの企業との提携から生まれた。2008年に提携したCAP-XX社は、活性炭の技術を持つベンチャー企業。その技術を生かした電気二重層コンデンサは、化学反応を利用せずに、活性炭表面へのイオンの物理吸着のみでエネルギーの蓄積を行う。これにより、一般的な二次電池に比べて充放電が半永久的に繰り返し行えるという特長を持ち、急速な充放電にも対応している。導電性高分子アルミ電解コンデンサは、昭和電工株式会社から譲渡を受けたポリマーを素材とする機能性高分子コンデンサ事業が技術的なベースとなっている。

環境・エネルギー

ムラタは、今後の成長市場として「環境・エネルギー」「自動車」「ヘルスケア」を挙げ、この3分野への注力を表明している。 3分野で2013年3月期までに売上高400億円の目標を掲げ、このうち半分を環境・エネルギー分野が占めると予想している。 この分野では、まず電気二重層コンデンサの量産化を立ち上げ、さらには昭和電工株式会社から事業譲受した、ポリマーを素材とする機能性高分子コンデンサ事業の技術をベースに、新製品の開発を急いでいる。

エネルギー分野は有望な市場先進国ではマネジメント、新興国では効率よく電気を使うこと

エネルギーをロスなく伝えるムラタが社会貢献できる分野

エネルギー分野は今後有望な市場。電気というエネルギーを考えると、まず発電という仕組みがあり、それを送電・配電する。さらに変換して、蓄電する。この間に必ずロスというものが発生する。ムラタとしては、その効率を上げることで社会に貢献できると思う。

エネルギーは、先進国と新興国で2極化しているような気がする。先進国では、発電そのものは問題なく、送電や配電も完備している。今後の課題はエネルギーのマネジメント。いかに効率よくエネルギーを使っていくかという問題だ。発電した電気は貯めておくことができないので、スマートグリッドのように、昼夜の使用電力量を考慮して、EVの充電や洗濯などは夜間電力を使うなど、適切な時間に適切な電力を各家庭に供給する。一方、新興国ではまだ発電が充実していない。発電所を作ることも重要だが、エネルギーを効率よく使うことも検討する必要がある。

例えば、自動車は人口の多い中国やインドで最も売れているが、走っている車がブレーキをかけたときの回生エネルギーは膨大なものになる。そのエネルギーを有効に使う仕組みを提案することでビジネスが生まれると思う。こうしたニッチなマーケットもとらえていくことが重要。エネルギーは無限のものではないだけに、有効に使うことを提案していきたい。

グローバル感覚のリーダーが必要、社内の人材育成も重要

インドで16歳から大学に進学し、化学工学を専攻した。21歳で卒業してカナダへ。23歳で日本に留学、その後いったんカナダに戻ってからムラタに就職し20年以上になる。最初は開発企画をやって、リチウム電池などの企画を起こした。その後は日本の工場からアメリカの工場へ。化学工学という学問は、いわゆる化学の実験から、装置や操作、生産についてのプロセス設計を行うので、現在の仕事は専攻が生かされた形だ。

アメリカではマーケティングもやって、5年前に非セラミックという新規事業のために日本に赴任した。インド、カナダ、日本、アメリカと世界を見てきて、ムラタもこれまで以上にグローバルにならなければと思う。資金や人材など資産が豊富で、コンデンサは常に世界のトップクラス。もう少し国際的なリーダーを育てていければと考えている。

社内では仕事をすることも大切だが、人材を育てていくことも重要。製品開発だけではなく、外国人社員として人材育成にも貢献できたらと考えている。まだまだムラタは伸びると思う。非セラミック系のコンデンサは第1号の新製品が出たばかりだが、これからも次々と出てくるはずだ。数年後には、一つの事業の柱となるように育てていきたい。

電気二重層コンデンサ

バッテリー機器の高効率・高機能化が求められている中で、多様なニーズに応えるために発売された。ミリオームレベルの低抵抗を小型で薄型のパッケージで実現した量産化モデルである。電極構造等の電気化学システムを最適化することにより、幅広い温度領域で高出力から低出力までフレキシブルな充放電が可能。短時間のピーク出力を補助することで、バッテリーの負荷軽減やバッテリーでは困難な高出力の駆動が可能となった。

導電性高分子アルミ電解コンデンサ

アルミ箔の積層タイプと捲回タイプの2つがあるが、ムラタのものは陽極にアルミ箔、陰極に固体の導電性高分子を用いた積層構造を樹脂封止したチップタイプである。高周波対応の低ESR、高容量を実現した。