圧電振動波制御とその無鉛圧電セラミックスへの応用に関する研究

無鉛圧電セラミックスへの応用

次に無鉛圧電セラミックスにこの分極構造制御技術を応用した。一般に圧電定数が大きい無鉛圧電セラミックスを得ることは困難であるが、共振周波数温度特性に優れた無鉛圧電セラミックスを得ることも困難である。どちらも組成的相境界が必要であり、鉛系の圧電セラミックス以外で組成的相境界を持つものが見つかっていないからである。

我々は種々の無鉛圧電セラミックスの研究開発を進めてきたが、一部のビスマス層状化合物系材料が組成的相境界とは無関係に、良好な共振周波数温度特性を示すことを見出した (表1参照) 。

この材料 (SrBi2Nb22O9系材料) に上述の分極構造設計技術を応用することで、エネルギー閉じ込めを実現し実用的な共振特性を得ることができた。図5にインピーダンス共振波形を示したが、きれいな単一モード共振特性を示している。
Fig. 5 Impedance resonance characteristics of SrBi2Nb2O9-based lead-free piezoelectric ceramics

図2: SrBi2Nb22O9系無鉛圧電セラミックスのインピーダンス共振特性

表1: 種々の無鉛圧電セラミックスの特性

Material Family Main Composition ε33T0 kt (%) Qm TCF (ppm/°C) Tc (°C)
Alkali Niobates (Li, Na) NbO3 90 30 2,000 -120 400
Bismuth Layer Structured
Ferroelectrics
SrBi2Nb2O9
CaBi2TiO15
130
130
17
14
2,200
3,000
-10
-30
400
820
Tungsten Bronzes (Ba, Sr) 2NaNb5O15 500 18 400 +15 260
Bismuth Perovskites (Bi, Na) TiO3 800 42 40 -360 180

まとめ 将来の材料研究開発

ここで取り上げた「分散関係」は周波数と波数の関係であったが、周波数が一般にエネルギーに対応する量であることを考えると、固体の電子論で言うところのエネルギーバンドに対応するものとも考えられる。このように構造を制御することで、従来得られなかった特性を実現する技術は今後ますます重要になってくると思われる。

今後は進展するナノテクノロジーにより物質の微構造設計を行い、エネルギーバンドをコントロールすることで新しい物性の創成に挑戦していきたいと考えている。

原論文: "Resonance characteristics derived by structural design of thermally stable piezoelectric ceramics", J. Ceram. So. Jpn. 118 pp.855-861, 2010

論文紹介