積層型酸化物熱電モジュールの発電特性とエネルギーハーベスティングデバイスへの応用

作製したモジュールの外観写真を図3に示す。モジュールの大きさは5.9mm×7.0mm×2.6mmであり、割れ・欠け・層間剥離などの欠陥は見られず、相対密度も95%以上と緻密なものであった。このモジュールにおける熱電材料の接合部分のSEM像を図4に示す。図中、点線で囲ってある部分が絶縁層に相当する。図に示すように、各層間での顕著な元素拡散も見られず、熱電材料の接合部も明確であった。

Fig. 3 Photograph of monolithic multilayer module

図3: 積層一体型モジュールの外観写真

Fig. 4 SEM image of p/n junctions

図4: P/N接合部分のSEM像

試作したモジュールの無負荷電圧の温度依存性を図5に示す。図に示すように、温度差が大きくなるに従い直線的に無負荷電圧も増加しており⊿T=100℃で0.6V、300℃で2.0Vの値が得られた。負荷接続時の発電特性は、温度差⊿T=360℃のとき最大値187mW (0.15A時) が得られた。この値とモジュールの伝熱面積から単位面積当たりの発電量を算出すると450mW/cm2となる。この熱電モジュールをエネルギーハーベスティング用途に展開するには、微小な温度差での発電能力を評価する必要がある。そこで⊿T=10℃ (高温部30℃、低温部20℃) の発電量を評価した。評価の結果を図6に示す。図に示した通り無負荷時の電圧は52mVとなり、出力は最大105µW (4mA時) が得られた。

Fig. 5 Temperature characteristics of no-load voltage and maximum output

図5: 無負荷電圧と最大出力の温度特性

Fig. 6 Power generation characteristics at temperature difference of 10°C

図6: 温度差10℃時の発電特性

エネルギーハーベスティング技術により動作するデバイスには、大別して2つのモードがある。一つは発電能力が負荷の消費電力を上回っている場合で、このような状況ではデバイスの連続稼働が可能になる。一方、発電能力がデバイスの消費電力まで到達しない場合は、発電電力をキャパシタに蓄積し、所定量の電荷が蓄えられた後に負荷に電力を供給することになる。このとき電荷を蓄積するキャパシタの容量は、動作させるデバイスの特性に合わせる必要がある。今回、負荷として温度センサと通信モジュールを想定し、図7に示すような一体型のセンサ無線デバイスを作製した。

このデバイスは、約40℃のヒーターを熱源とし、熱電モジュールを貫通した熱は筺体に逃す構造になっており、外部環境が25℃の場合に、積層一体型モジュールに10℃の温度差が得られるように設計されている。今回、この構成で約10秒に1回、温度測定を実施し、その情報を無線で送信することが可能であった。今後、より低温での動作、短い動作間隔、複数のセンサ駆動など追加負荷の動作などを実現するには、モジュールの出力特性を改善する必要があり、材料の変換効率の改善、モジュール損失の低減などを進めなければならない。

Fig. 7 Energy harvesting module (Thermoelectric power generator + temperature sensor + wireless module)

図7: エネルギーハーベスティングモジュール (熱電発電+温度センサ+無線モジュール)

原論文: Monolithic oxide-metal composite thermoelectric generators for energy harvesting

論文紹介