LaAlO3-Sr (Al, Ta) O3系透明セラミックス
デジタルカメラやビデオカメラなどの撮像系のレンズは色のにじみや像のぼけを補正するために屈折率や分散特性の異なるレンズ材料を複数枚使用する。そのため、 (Ba, Ca) (Ti, Mg, Ta) O3透明セラミックスのような低アッベ数の材料が必要とされる一方で、高アッベ数の材料も必要とされる。そこで高屈折率かつ高アッベ数の材料を開発することにし、材料系としてはLaAlO3系に着目した。LaAlO3のバンドギャップは5.6eVであり、Ba (Sn, Zr, Mg, Ta) O3の吸収端から計算されたバンドギャップ (4.4eV) よりも大きな値であるため、高いアッベ数が期待できる。また、Gladstone-Daleの式によるとLaAlO3の屈折率は2.06であり、高屈折率も期待できる。ただしLaAlO3自体は結晶構造が菱面体であるため、そのままでは多結晶体で高い透過率が望めない。LaAlO3系で立方晶の材料として、LaAlO3とSr (Al, Ta) O3の固溶体が知られている。組成は0.25LaAlO3-0.75Sr (Al, Ta) O3で、薄膜形成用の単結晶基板材料として使われているが、この固溶体系について多結晶セラミックスの報告はなかった。そこで本固溶体系にて幅広い組成比でセラミックスを作製し、その結晶構造と光学特性を調べた。種々の組成比のLaAlO3-Sr (Al, Ta) O3系固溶体セラミックスの透過率について測定した結果を図4に示す。X線回折でSr (Al, Ta) O3を40mol%以上固溶させた場合に結晶系が立方晶になることがわかったが、透過率の結果でも立方晶の組成 (図4中のx=0.4以上) にて高い透過率を示すことが明らかである。屈折率とアッベ数の測定値は端組成のLaAlO3 (x=0.0) で nd=2.06、νd=42.8、Sr (Al, Ta) O3 (x=1.0) でnd=2.01、νd=34.3が得られ、Sr (Al, Ta) O3の固溶量 (x値) の増加とともにnd、νdとも単調に低下することがわかった。 (1-x) LaAlO3-xSr (Al, Ta) O3固溶体における透過率の高い組成の屈折率とアッベ数は、たとえばx=0.5にてnd=2.04、νd=37.8であった。
このようにLaAlO3-Sr (Al, Ta) O3系固溶体にて高屈折率、高アッベ数の透明セラミックスを得ることが可能であった。ここで、当社で開発した各種透明セラミックス材料の屈折率とアッベ数を光学ガラス材料の値と比較した図を図5に示す。光学ガラス材料には各種組成のものがあるが、その屈折率とアッベ数は図5中で帯状に分布している。当社の透明セラミックスはそれら光学ガラスの集団から外れた特性値を有していることがわかる。