近年、相次いでM&Aを行った。まず2012年3月にルネサスエレクトロニクス (株) のPA事業を買収。ムラタでは従来からPAを商品化していたが、Wi-Fi®用が中心で、スマホや携帯電話に使えるセルラー用のものがほしかった。現状の技術を進化させていくよりも、先行している他社技術を体内に取り込もうと協議し、M&Aに至った。
もう一つは、2014年12月に買収が完了した米国のペレグリン・セミコンダクター社。同社は、スマホのアンテナ周りの部品であるRFスイッチの最先端技術を有する会社で、以前よりムラタとの取り引きは多く、売り上げの7割ほどはムラタが占めていた。買収額の約490億円はムラタにとって最大規模。
ペレグリン社が有するCMOSのRFスイッチの技術はユニークなものだ。高周波向けの特性は出せないといわれていたCMOSを使いながら、高い特性を出している。ムラタも10年以上前から共に開発してきて、その技術の優位性は理解している。
スマホで電波を送受信するには、複数のFDD (同波数分割複信) 周波数帯の信号を所望のデュプレクサに接続するために切り換えたり、TDD (時分割複信) の送受信信号を送信受信回路に接続するために切り換えを行うスイッチ、信号を増幅するためのPA、電波から必要な周波数だけを取り出すSAWフィルタ、これらアンテナ周りの主要3部品が必要だ。ムラタにはシェアトップといわれるSAWフィルタがある。これにルネサスのPA、ペレグリン社のRFスイッチが加わることで、主要3部品がムラタ内部に揃い、スマホの高周波回路を構成するキーデバイスの設計・開発が自社で可能となり、一貫生産・提供できる体制が整えられた。これにより、製品のポートフォリオを強化でき、お客様からの要求にスピーディに対応できるだけでなく、デバイスを内製してモジュール化すれば、技術のトレンドも掌握できる。今回の買収のメリットは大きい。