導電性高分子アルミ電解コンデンサ導電性高分子アルミ電解コンデンサとは

パソコンなどの電子機器のメイン基板を見てみると、図1のような6タイプのコンデンサをよく見かけます。タンタル電解コンデンサ(二酸化マンガンタイプ、高分子タイプ)、アルミ電解コンデンサ(缶タイプ/電解液、缶タイプ/高分子、チップタイプ)、MLCCなどです。

コンデンサにはその他にもフィルムコンデンサやニオブコンデンサなどいろいろな種類がありますが、今回は村田製作所も手掛けているアルミ電解コンデンサ(導電性高分子アルミ電解コンデンサ)について説明します。

EMICON, EMICON-FUN !, Murata Manufacturing, Capacitor, Polymer Capacitor,ECAS series 図1 主なコンデンサ

アルミ電解コンデンサとは

アルミ電解コンデンサは、アルミニウムの酸化皮膜を誘電体として用いた有極性のコンデンサです。
電解質が液体か固体かによっても分類されます。

< 構造 >

・陽極部、陰極部
ともにアルミ箔
 陽極
99.9%以上の高純度の導電体(アルミニウム)
 陰極
誘電体に液体又は固体の電解質を密着させたもの
・誘電体
表面に酸化皮膜を付したもの(アルミニウム:Al₂O₃)

コンデンサは、「電極面積が広い」「誘電体の比誘電率が高い」「電極間距離が狭い」ほど、静電容量が大きくなります。

アルミニウムは弁金属といわれる整流作用を有する特殊な金属です。他に弁金属の性能を示す金属はタンタルやニオブがあります。アルミニウム表面に陽極酸化により生成する誘電体である酸化皮膜(Al₂O₃)の比誘電率は約7~10であり、他のコンデンサに使用される誘電体よりも決して高くはありませんが、アルミニウム表面を電解によるエッチングにより表面積を~350倍に拡大した多孔質の構造を形成することで大容量のコンデンサを実現しています。また、コンデンサの耐電圧(定格電圧)は誘電体の厚さに依存します。一方で、誘電体を厚くすると静電容量は小さくなります。アルミニウムは1Vあたりの誘電体の厚みが約1.3nmと薄いことが特徴です。従って、高い耐電圧かつ高容量のコンデンサを設計するのに適しています。

図2-1 コンデンサの一般式
アルミニウム タンタル セラミック
(MLCC)
誘電体 酸化アルミニウム
Al₂O₃
酸化タンタル
Ta₂O₅
チタン酸バリウム系
BaTiO₃
比誘電率 7~10 24 2,000~4,000
電極形状 多孔質
エッチング
多孔質
焼結粉末
フラット
焼結粉末
拡面倍率 ~350倍 ~250倍 ≒1
1Vあたりの誘電体厚み 1.3nm 1.6nm 60~100nm

表2-1 各種コンデンサの誘電体の特徴

アルミ電解コンデンサは電解質が「液体」か「固体」かによっても分類されます。電解質が「液体」のアルミ電解コンデンサは、液体電解質(電解液)を気密封止できる缶タイプのみであり、大容量かつ高耐圧の特性があります。
一方、電解質が「固体」のアルミ電解コンデンサには、固体(導電性高分子)である故に気密封止の必要がないため、缶タイプだけでなく、樹脂モールドした表面実装タイプがあり、大容量かつ製品高さが低い特性があります。さらに、固体電解質であるゆえに揮発するリスクがないので、液体電解質のものと比べて長寿命であるという特性があります。

  • 図2-2 液体電解質のアルミ電解コンデンサ
  • 図2-3 固体電解質のアルミ電解コンデンサ

導電性高分子コンデンサとは

導電性高分子コンデンサとは、陰極に導電性高分子(導電性ポリマーとも呼ぶ)を用いた電解コンデンサを指します。これはタンタル電解コンデンサやアルミ電解コンデンサも同様です。
導電性高分子タイプのアルミ電解コンデンサであれば、陽極に「アルミニウム箔」、陰極に導電性高分子を用いています。
一方で、導電性高分子タイプのタンタル電解コンデンサは、陽極に「タンタル金属」、陰極に導電性高分子を用いています。
図3-1に導電性高分子アルミ電解コンデンサの模式図を示します。

EMICON, EMICON-FUN !, Murata Manufacturing, Capacitor, Polymer Capacitor,ECAS series 図3-1 導電性高分子アルミ電解コンデンサの模式図

従来タイプの電解コンデンサは、陰極に液体電解質(電解液)や二酸化マンガンを用いています。これらに代わって陰極に導電性高分子を用いて「導電性高分子」にすると、1.低ESR、2.安定した温度特性、3.安全性の向上、4.高寿命化、が実現できます。(1.低ESRに関しては、図1および図3-2参照)

また、電解コンデンサであれば基本的に陽極に使っている弁金属の種類によって誘電体の種類が決まり、それにより誘電率やDCバイアス特性、音鳴きの特性が決まります。このように陽極と陰極、そして誘電体は、複数の種類の材料を組み合わせることでさまざまな特性を得ることができます。材料によって得意な領域と苦手な領域があるため、電子機器設計者は回路設計する際にそれらを使い分ける必要があります。

図3-2 各種電解質材料の導電率の代表例

村田製作所の導電性高分子アルミ電解コンデンサ(ECASシリーズ)について

ムラタの導電性高分子アルミ電解コンデンサ(ECASシリーズ)は、低ESR、低インピーダンス、大容量という特長を有しています。

さらに、静電容量のDCバイアス特性がなく、温度特性も安定しているためリップル吸収、平滑、過渡応答性能に優れています。そのため、各種電源回路の入出力段の平滑用途や、CPU周辺の負荷変動に対するバックアップ用途に最適です。これにより、部品点数の削減や基板面積の縮小に貢献します。