ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ

第6章

EMI除去フィルタ

6-3. LCを使ったローパスフィルタ

一般にローパスフィルタはコンデンサとインダクタを使って作ります。コンデンサやインダクタでフィルタを作ることは、回路設計者の方々には日常的な作業だと思いますが、ここでは基本特性の復習をしてみたいと思います。

6-3-1. コンデンサ

(1) ノイズの電流をグラウンドにバイパスする

コンデンサは、図1のように負荷に並列に装着することで、ローパスフィルタを形成します。
コンデンサのインピーダンスは周波数が高くなるにつれて小さくなる性質があります。この性質により周波数が高くなるほど、負荷に表れる電圧は小さくなります。これは図に示すように、コンデンサによりノイズの電流がバイパスされ、負荷には流れなくなるためです。

コンデンサによるローパスフィルタ"

【図1】コンデンサによるローパスフィルタ

(2) 高インピーダンス回路が得意

このノイズをバイパスする効果は、コンデンサのインピーダンスが出力インピーダンスや負荷のインピーダンスよりも相対的に小さくならなければ発生しません。したがって、コンデンサは周りの回路のインピーダンスが大きい方が、効果を出しやすいといえます。
周りの回路のインピーダンスは、挿入損失の測定では50Ωですが、多くの場合、ノイズ対策でフィルタが使われるときは50Ωではありませんし、特に定まった値を持ちません。フィルタが実際に使われるときのノイズ除去効果を見積もるには、じつは挿入損失で測定された値を元に周りの回路のインピーダンスに応じて変換が必要です。
この件は6.4項で説明しますので、ここでは基本特性を理解するために、周りの回路のインピーダンスが50Ωだとして、話を進めます。

6-3-2. コンデンサによるローパスフィルタの基本特性

(1) 周波数が高いほど大きな効果

コンデンサによるローパスフィルタの周波数特性は、周波数軸 (横軸) を対数としたとき、図2に示すように減衰域で20dB/dec.の傾きを持った直線になります。これは、コンデンサのインピーダンスが周波数に反比例するので、周波数が10倍になるとコンデンサのインピーダンスが1/10になり、挿入損失が20dB変化するためです。
ここでdec. (ディケード) とは、周波数が10倍変化することを表します。

コンデンサによるローパスフィルタの基本特性

【図2】コンデンサによるローパスフィルタの基本特性

(2) 静電容量が大きいほど大きな効果

また、コンデンサの静電容量を変化させると、図のように挿入損失曲線は並行移動します。コンデンサの静電容量が10倍変わるとき、減衰域の挿入損失は、同じく20dB変わります。コンデンサのインピーダンスは静電容量に反比例するので、1/10になるためです。

(3) カットオフ周波数

一般にローパスフィルタの周波数特性は、低周波域 (透過域) ではゼロdBに貼りつき、高周波域 (減衰域) では大きな挿入損失を示します。2つの領域を分ける周波数として、挿入損失が3dBになる周波数を使い、カットオフ周波数と呼びます。カットオフ周波数は、図3のように、フィルタが効果を発揮する下限周波数の目安になります。
バイパスコンデンサのカットオフ周波数は、50Ωで測定する場合は、コンデンサのインピーダンスが約25Ωになる周波数になります。

カットオフ周波数

【図3】カットオフ周波数

6-3-3. インダクタ

(1) ノイズの電流を絞る

インダクタは図7のように負荷に対して直列に装着します。
インダクタのインピーダンスは周波数が高くなるにつれ大きくなる性質があります。この性質により、周波数が高くなるほどノイズの電流は通りにくくなり、これにともない負荷に表れる電圧はく小さくなります。このように電流を絞るので、この用途に使うインダクタをチョークコイルと呼ぶこともあります。

インダクタによるローパスフィルタ

【図4】インダクタによるローパスフィルタ

(2) 低インピーダンス回路が得意

このインダクタがノイズの電流を絞る効果は、インダクタのインピーダンスが信号源の内部インピーダンスや負荷のインピーダンスよりも相対的に大きくなければ発生しません。したがって、インダクタはコンデンサとは反対に、周りの回路のインピーダンスが小さい回路の方が、効果を発揮しやすいといえます。

6-3-4. インダクタによるローパスフィルタの基本特性

(1) コンデンサと同じく20dB/dec.の傾き

インダクタによるローパスフィルタの周波数特性は、図5に示すように、コンデンサと同じく減衰域で20dB/dec.の傾きを持った直線になります。これは、インダクタのインピーダンスが周波数に比例して大きくなるので、周波数が10倍になるとインピーダンスも10倍になり、挿入損失が20dB変化するためです。

インダクタによるローパスフィルタの基本特性

【図5】インダクタによるローパスフィルタの基本特性

(2) インダクタンスに比例して効果が大きくなる

また、インダクタのインダクタンスを変化させると、図のように挿入損失曲線は並行移動します。これもコンデンサ場合と同様です。

(3) カットオフ周波数

インダクタのカットオフ周波数は、50Ωで測定する場合は、インダクタのインピーダンスが約100Ωになる周波数になります。

6-3-5. コンデンサ、インダクタを使ったときの電流の変化

(1) ノイズの流れを見えるようにする

コンデンサやインダクタがつかわれたとき、電流はどのようにバイパスされ、絞られるのでしょうか。3章で紹介した近傍磁界の測定系を使って、フィルタを使う前後の電流分布を観測した結果を図6、図7に示します。

近傍磁界の測定条件

【図6】近傍磁界の測定条件

(2) 信号線に流れるノイズを観測

図6は測定条件を示しています。3-3-4で電流定在波を測定したのと同じ測定系を使っています。図6 (b) のように、300mm×100mmの基板の中央部に、1本の信号線を左右に引いています。基板の裏面と、表面の信号線以外の部分は全てグラウンドになっています。この信号線の左から、33MHzのデジタル信号を入力したときの近傍磁界をプローブで測り、電流分布としています。信号線の先端にはデジタルICがつながっています。
このようにグラウンドで裏打ちされた信号線は、MSLという伝送線路になっていると考えられます。信号線の幅は特性インピーダンスが50Ωになるように調整してあります。
近傍磁界の測定はEMIテスタという市販の測定器を使っています。図の測定範囲は290m×30mm、測定ピッチは5mm、観測した周波数は99MHzです。99MHzは、33MHzのデジタル信号の3倍高調波にあたります。

(3) フィルタが無いときのノイズの分布

この信号線の中央部 (信号入力から150mm) にバイパスコンデンサとインダクタを取り付けたときの電流分布の変化を見ました。測定結果を図7に示します。
図7 (a) はフィルタが無いときで、3-3-8の図19 (a) に示したデータと同一のものです。図で、ノイズは左から入り、右端の終端のデジタルICに向かうにつれて電流が徐々に小さくなっています。これは、右端のデジタルICでは入力インピーダンスが高く電流が小さいため、電流定在波ができており、この観測範囲では定在波のほぼ半周期が観測されているものです。

(4) コンデンサでバイパスされたノイズの観測

図7 (b) はコンデンサを使ったときです。1000pFのMLCCを信号線とグラウンドの間に使っています。
測定結果から、中央のフィルタの左側で電流が大きくなり、右側では電流が小さくなっていることがわかります。左側からノイズが入り、コンデンサでバイパスされるため、右側には出力されなくなっていると解釈できます。
このようにコンデンサを使うとノイズはノイズ源側に強く反射されるため、ノイズ源とコンデンサの間の電流は大きくなります。この部分からノイズが放射することが無いように、ノイズ源とフィルタはできるだけ近付けて使います。

(5) インダクタでノイズの電流を絞る

図7 (c) はインダクタを使ったときです。470Ω@100MHzのフェライトビーズを信号線に直列に挿入しています。
測定結果から、中央のフィルタの左右で (両方とも) 電流が小さくなっていることがわかります。これはインダクタで電流が絞られる効果がノイズ源側にも及ぶためと解釈できます。
このようにインダクタはノイズ源側の電流も小さくしますので、ノイズ源の近くにはスペースが無く、配線の途中でノイズ対策部品をつけざるを得ないときには重宝します。ただし、ノイズを遮断する効果は、通常はコンデンサよりも小さくなります。

近傍磁界の測定結果

【図7】近傍磁界の測定結果

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