ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)
USB4におけるノイズ対策-3
INDEX
- USB4の規格と普及
- USBとThunderboltの統合
- Thunderbolt3とUSB4の仕様・比較
- USBで予想されるノイズ問題
- USB4のノイズ対策方法
- 放射ノイズ測定
- 放射ノイズ測定結果
- イントラシステムEMC-DUT(Thunderbolt 3対応add inカード)の概略
- イントラシステムEMC-Wi-Fi受信感度への影響の評価
- イントラシステムEMC-Wi-Fi受信感度の測定結果(対策なし)
- イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズの評価
- イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズ 測定結果(対策なし)
- イントラシステムEMC-近傍ノイズ測定(対策なし)
- イントラシステムEMC-対策部品の挿入ポイント
- イントラシステムEMC-受信感度 測定結果(対策後)
- イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズ 測定結果(対策後)
- 信号波形確認-アイパターン測定手順
- 信号波形確認-アイパターン測定
- まとめ
10. イントラシステムEMC-Wi-Fi受信感度の測定結果(対策なし)
Wi-Fi受信感度の評価事例
USB4の動作によってWi-Fiの受信感度にどの程度影響が出ているか調べました。
各種データ通信が行われることで、Wi-Fi(2.4GHz帯)の受信感度レベルが3dB程度劣化しています。これは、通信時に発生するノイズがアンテナに干渉しているためと考えられます。
今回のDUTにおいては5GHz帯の受信感度の劣化は確認されませんでした。
11. イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズの評価
アンテナ結合ノイズの評価事例
次に、近接するアンテナに結合するノイズレベルの確認を行いました。
ここでも差動信号ラインとアンテナとの間の距離は5cm程度としました。
- 構成について
Hostには、Thunderbolt3 Add-in card、DeviceにはThunderbolt3 ドッキングステーションを使用。
Add-in card基板上のThunderbolt3信号配線から5cm離れた位置に無指向性アンテナを配置し、Add-in card基板から放射するノイズを無指向性アンテナで観測。
信号通信時には、Add-in card上にはPCI Express、DisplayPort、Thunderbolt3の信号が同時に流れています。
12. イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズ 測定結果(対策なし)
測定結果
2~4.5GHzにDisplayPort、PCI Express、Thunderbolt 3 の通信に起因する広帯域なノイズが発生し、無線アンテナに結合していることがわかりました。
特に、Wi-F通信帯域(2.4GHz)やSub6通信帯域(3.3GHz)で発生しており、通信を安定させるためにはこれらのノイズを抑制する必要があると考えられます。
13. イントラシステムEMC-近傍ノイズ測定(対策なし)
測定結果
ノイズ発生箇所を特定するために、近傍磁界をマッピングできるEMCテスタで基板を測定しました。
各種通信が行われることで、Add-in card基板上のThunderbolt 3のTX信号線上、
PCI Express Gen3のTX信号線上、DisplayPortの信号線上に広帯域なノイズが伝搬しています。
この広帯域ノイズが信号線から空間に放射し、無線アンテナに結合したと考えられます。
これにより、Wi-Fi受信感度やSub6受信感度の劣化が発生します。
この現象は、Thunderbolt 3とほぼ同じ電気的仕様であるUSB4でも起こりうると推測します。
14. イントラシステムEMC-対策部品の挿入ポイント
これまでの評価より、Thunderbolt 3通信時に、PCI Express、DisplayPort、Thunderbolt 3の信号配線上から広帯域なノイズが放射することで 無線通信の感度劣化を招いていることが分かりました。
そこで、配線からのノイズの放射を抑制するために、ノイズの伝導経路となる信号配線上にCMCC(NFG0QHB372)を搭載しました。
15. イントラシステムEMC-受信感度 測定結果(対策後)
測定結果
PCI Express,DisplayPort,Thunderbolt 3通信時において、各信号ラインにCMCC(NFG0QHB372)を搭載することで、CMCCのないときと比べて、Wi-Fi(2.4GHz)の受信感度が3.0dB改善できました。
16. イントラシステムEMC-アンテナに結合するノイズ 測定結果(対策後)
測定結果
アンテナに結合するノイズも最大で8dB改善されています。
結合しているノイズの周波数を考慮して、2.4GHz~5GHzのノイズを抑制できるスペックの部品を選定することが重要です。
- 続けて読む:信号波形確認-アイパターン測定手順