ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)

マグネット式ワイヤレス給電のノイズ対策

1. 概要

大手スマートフォンメーカーが新規のワイヤレス給電方式であるマグネット式ワイヤレス給電器を自社製品向けに発売しました。これに伴い、その他多くの企業から類似品が発売されています。
本記事では、新規のワイヤレス給電方式を採用したワイヤレス充電器とその類似品においてノイズ問題を調査しました。また、観測されたノイズの対策方法について検討しました。

マグネット式ワイヤレス給電器のイメージ

2. マグネット式ワイヤレス給電のノイズ問題

ノイズ評価は、純正品1モデルと互換品4モデルを用意して行いました。
評価環境については以下のような形で行いました。

放射ノイズ評価環境と条件のイメージ図
放射ノイズ評価環境と条件

3. 放射ノイズ評価の結果

純正品では放射ノイズレベルがかなり小さく問題ありませんでした。互換メーカー品2、互換メーカー品4ではCISPR32の規格を満足しない結果となりました。ノイズ状況を確認したところ、ACアダプタを変更することでノイズ波形が変化していることからノイズ源はACアダプタであると予想しました。

放射ノイズ評価の結果のグラフ1
ACアダプタ1(18W)Horizontal
放射ノイズ評価の結果のグラフ2
ACアダプタ2(20W)Horizontal
放射ノイズ評価の結果のグラフ3
ACアダプタ1(18W)Vertical
放射ノイズ評価の結果のグラフ4
ACアダプタ2(20W)Vertical

4. コモンモードチョークコイル(CMCC)を用いたノイズ対策手法

ACアダプタがノイズ源と思われるため、ACアダプタから放射源であるケーブルにノイズが流入することを防ぐため、ケーブルとUSB-Cコネクタの接合点にコモンモードチョークコイル(CMCC)を追加して、ノイズの放射が抑えられるかを確認しました。

コモンモードチョークコイル(CMCC)を用いたノイズ対策手法のイメージ図
コモンモードチョークコイルを挿入

今回使用したフィルタ

電源用コモンモードチョークコイル

2.5Aの大電流に対応可能で、電源電流による磁気飽和の影響を受けず、コモンモードノイズを効果的に除去します。

5. 互換メーカー品2のノイズ対策効果の確認

CISPR32の規格は依然満足できないものの、CMCCの追加により30MHzから500MHzのほぼ全周波数範囲で10-20dBのノイズ抑制効果が確認できました。60MHzで悪化したのはCMCCのLと周辺Cの共振によるものであると思われます。

互換メーカー品2のノイズ対策効果のグラフ1
ACアダプタ1(18W)Horizontal
互換メーカー品2のノイズ対策効果のグラフ2
ACアダプタ2(20W)Horizontal
互換メーカー品2のノイズ対策効果のグラフ3
ACアダプタ1(18W)Vertical
互換メーカー品2のノイズ対策効果のグラフ4
ACアダプタ2(20W)Vertical

6. 互換メーカー品4のノイズ対策効果の確認

CISPR32の規格は依然満足できないものの、CMCCの追加により30MHzから1GHzのほぼ全周波数範囲で10-15dBのノイズ抑制効果が確認できました。80MHzで悪化したのはCMCCのLと周辺Cの共振によるものであると思われます。

互換メーカー品4のノイズ対策効果のグラフ1
ACアダプタ1(18W)Horizontal
互換メーカー品4のノイズ対策効果のグラフ2
ACアダプタ2(20W)Horizontal
互換メーカー品4のノイズ対策効果のグラフ3
ACアダプタ1(18W)Vertical
互換メーカー品4のノイズ対策効果のグラフ4
ACアダプタ2(20W)Vertical

7. まとめ

スマートフォンが私たちの生活に欠かせないデバイスになっていることで、充電器も付随して欠かせないものなっています。
新たに登場したマグネット式ワイヤレス給電式も、ノイズ対策が重要です。
今回、放射ノイズ評価の結果、純正品ではノイズレベルが最も低く、互換メーカー品のうち2製品においてCISPR32規格を満足しない結果となったため、対策 方法を検討しました。
その結果、CMCCをケーブルとUSB-Cコネクタの接合点に追加することで大きいノイズ低減効果を確認できました。
このようなノイズに対してはコモンモードチョークコイルの挿入が効果的です。

今回紹介したフィルタ

電源用コモンモードチョークコイル

2.5Aの大電流に対応可能で、電源電流による磁気飽和の影響を受けず、コモンモードノイズを効果的に除去します。

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