はじめに

最近のスマートフォンにおいては、多機能化に伴いバッテリーの容量が増加する傾向にあり、一方、短時間で充電を完了させたいニーズが生まれています。
これに伴い、USB Type-Cを利用した急速充電が採用されることが多くなっています。

急速充電システムにはDC-DCコンバータが利用されますが、DC-DCコンバータは直流をスイッチングによって矩形波に変換して電圧を変換するため、スイッチングノイズが発生します。




急速充電は充電電流値が大きいため、従来の充電器よりもスイッチングノイズの問題が顕著になる傾向があります。



急速充電におけるノイズ問題

急速充電器から発生したノイズは基板上のパターンやケーブルから空中に放射し、自機の無線受信用アンテナに侵入し、受信感度低下を引き起こします。受信感度が低下すると、受信可能範囲が小さくなったり、受信速度が低下したり、機器の性能低下に繋がります。

急速充電が動作すると…




①スイッチングノイズが発生

②ノイズが放射し、自機のアンテナに結合する

 



③アンテナ感度が低下 ④通信障害が発生



ノイズ問題の事例

急速充電で発生したノイズによって受信感度が低下する例を紹介します。
以下のデータは、急速充電を開始した前後の受信感度を確認したものです。棒が下に伸びるほど感度が高いことを示しています。
急速充電を行うことにより、充電しないときと比べてLTE low band (700~900MHz) の受信感度が低下することが確認されました。

ノイズ分布の観察

本当に基板上のノイズが原因なのかを確認するため、ノイズ可視化ツールを利用しました。

【基板上のノイズ分布の観察】


基板上でのノイズ分布・アンテナに侵入するノイズの観察を行うと、
基板上のノイズとアンテナに結合するノイズのスペクトラムが類似していることが分かります。


<基板上のノイズスペクトラム>


<アンテナに結合するノイズ>


ノイズの伝導経路

ノイズの伝導経路を確認したところ、DC-DCコンバータで発生したノイズが電源の出力ラインから平滑コンデンサを経由して基板グランドに伝わり、このノイズがパターンから放射し、アンテナに侵入していたことがわかりました。

【ノイズの伝導経路】
  ①ノイズがDC-DCコンバータの出力ラインに伝導する
  ②ノイズが電源ラインから平滑コンデンサを経由して基板グランドに伝導する
  ③基板グランドに伝導したノイズがパターンから放射し無線受信感度を低下させる


ノイズ対策の提案

先程の調査の結果、DC-DCコンバータの出力部からノイズが流出していたことが確認できたため、出力部にフェライトビーズを挿入することが効果があると予想されます。また、同様に入力部もノイズ流出元になりやすいので、入力部にも同様にフェライトビーズを利用することが望ましいです。
使用するフェライトビーズですが、急速充電で大電流が流れるため、定格電流の高いものを選ぶ必要があります。
そのうえで、無線キャリア周波数のノイズに対応するために、高周波特性に優れたものを選びます。



推奨フィルタ

BLE18PSシリーズは最大8Aに対応し、GHz帯まで高インピーダンスを得ることができ、この用途に最適です。
BLE18PS080SN1
  • Size 1608[mm]
  • Rated current 8[A](at 85°C)
  • Rdc(max) 0.004[ohm]
  • Superior DC superimposing characteristic
 


ノイズ対策効果の確認

フェライトビーズによるノイズ対策の効果を実機で確認しました。
フェライトビーズBLE18PS080SN1を平滑コンデンサの前に挿入しました。


ノイズ対策による受信感度改善効果

フェライトビーズを挿入することでどれだけ受信感度が改善されたか確認しました。
急速充電中の感度を挿入前後で比較した結果、LTE Low bandの700MHz-900MHzで受信感度が改善されていることが確認できました。


ノイズ対策によるノイズ分布の変化の確認

実際にノイズが減っている様子をノイズ可視化ツールで確認しました。
基板上に分布するノイズレベルが減っているのが確認できます。

フィルタなし

 

フィルタあり

ノイズ対策前

 

ノイズレベルの低下を確認



アンテナのノイズレベルの低下

アンテナに侵入するノイズも、下図のようにレベルが低下しているのが確認できました。




(参考)フィルタの挿入による影響の確認

フィルタを挿入することにより、DC-DCコンバータの効率に影響が現れる懸念が合ったため、影響が出ているかどうかを確認しました。その結果、フィルタ挿入前後で効率には変化が見られず、効率に悪影響を与えていないことがわかりました。


その他のノイズ対策ポイント

今回はDC-DCコンバータの出力部のみフィルタを挿入しましたが、入力部にも挿入することをおすすめします。 (BLE18PS080SN1)
今回の検証例では問題になっていませんでしたが、入力側にもスイッチングノイズが漏れて問題となる場合があるためです。

フィルタ挿入ポイント① チャージャICの出力部 (平滑コンデンサ前)
フィルタ挿入ポイント② チャージャICの入力部 (入力コンデンサ前)


今回紹介したノイズフィルタ BLE18PS080SN1

小型ながら、最大8Aの大電流に対応しています。

内部構造の工夫により高い自己共振周波数を持ちます。

GHz帯のノイズにも対応可能です。



品番 サイズ インピーダンス at 100MHz 定格電流
at 85℃ at 125℃
BLE18PS080SN1 1.6x0.8x0.6mm 8.5Ω 8A 5A

BLE18PS080SN1
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サイズ インピーダンス 定格電流
at 100MHz at 1GHz at 85℃ at 125℃
BLE18PK100SN1 1.6×0.8×0.8mm 10Ω 45Ω(Typ.) 6A 3.5A
BLE18PK160SN1 1.6×0.8×0.8mm 16Ω 70Ω(Typ.) 5A 2.8A

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