ノイズ対策ガイド

ノイズ対策の基礎 【第5回】 チップ三端子コンデンサ

前回のチップフェライトビーズに続いて、今回はチップ三端子コンデンサについてお話します。

<リードタイプのセラミックコンデンサ>

チップ三端子コンデンサについてご紹介する前に、まずリードタイプの三端子コンデンサについて理解していただいたほうがわかりやすいと思います。
図1が一般のリードタイプのセラミックコンデンサ(二端子)の構造です。

図1 リードタイプ二端子コンデンサの構造

リードタイプのセラミックコンデンサは単板の誘電体の両側に電極を塗り、それにリード端子を取り付けた構造になっています。この構造ではリード端子部分が微小なインダクタンス(残留インダクタンス)を持つため、このコンデンサをパスコンとして使用する際にはグランドとの間にインダクタンスが入ることになります。

図2 コンデンサの挿入損失周波数特性例

図2はコンデンサをパスコンとして使用した時の挿入損失特性の例です。挿入損失のグラフなので、下へ行くほどノイズが落ちていることになります。本来、コンデンサは周波数が高くなるほどインピーダンスが低くなりますので、周波数の高い領域でも図の破線のようにどんどん挿入損失が大きくなるはずです。ところが、実際のコンデンサには前述のように残留インダクタンスがありますので、この微小なインダクタンスが邪魔をして高周波における性能を低下させ、実線のようなV字型の挿入損失カーブを示すことになります。

<三端子コンデンサは片側のリード線を2本引き出しにしたもの>

三端子コンデンサは、二端子コンデンサの高周波特性を改善するために、リード端子の形状を工夫したセラミックコンデンサです。三端子コンデンサは、図3のように、片方のリード端子を2本出しにしたものです。このような形状にして2本出しのほうのリードを電源や信号ラインの入力と出力にそれぞれ接続し、反対側をグランドに接続することによって、右の等価回路図のような接続をすることができます。このような接続をすることにより、2本出し側のリードのインダクタンスはグランド側に入らないため、グランドのインピーダンスを極めて小さくすることができます。また、2本出し側のリードのインダクタンスはT型フィルタのインダクタのように働くため、ノイズを落とす方向に働いてくれます。

図3 リードタイプ三端子コンデンサの構造

<チップ積層セラミックコンデンサとチップ三端子コンデンサ>

現在一般に使われているコンデンサはチップ積層セラミックコンデンサになっています。図4が二端子チップ積層チップコンデンサの構造概念図です。誘電体の薄いシートを挟んで両側の外部電極に一方ずつ接続された内部電極が互い違いに積層された構造になっています。チップ形状になっているためにリード線がなくなり、その分の残留インダクタンスがなくなっています。ところが、それでも、内部には微小なインダクタンスが残るため、より高周波においては性能の低下が発生します。

図4 二端子積層セラミックコンデンサの構造

リードタイプ三端子コンデンサと同様に、電極構造を変更することによって高周波の性能を向上したのがチップ三端子コンデンサです。図5がチップ三端子コンデンサの構造概念図になります。チップの両側にグランド端子を設け、誘電体を挟んでスルー(貫通)電極とグランド電極を交互に積み重ねることによって貫通コンデンサのような構造をとっています。等価回路図をみるとわかるように、スルー(貫通)電極のインダクタンスはリード三端子コンデンサの時と同様にT型フィルタのインダクタのように働くので、残留インダクタンスの影響が小さくなります。また、グランド側は短い距離で接続されるので、この部分のインダクタンスも微小なものになります。さらに、グランド側は両端に接続されているので、並列接続となり、インダクタンスは見かけ上さらに半分になります。

図5 三端子積層セラミックコンデンサの構造

図6に、チップ三端子コンデンサと二端子チップ積層コンデンサの挿入損失特性を比較しています。両部品とも静電容量が同じなので周波数の低い領域は同様の特性を示しますが、二端子コンデンサが10MHzを超えたところから性能が低下するのに対して、三端子コンデンサでは100MHz付近まで性能は低下していません。このように、チップ三端子コンデンサは、高周波領域まで性能が低下しないため、高周波までノイズを除去する必要がある場合に適しています。

図6 チップ三端子コンデンサによる高周波特性の改善

<チップ三端子コンデンサは本当は四端子>

図5に示すように、チップ三端子コンデンサは三端子と言いながら、実は四端子構造となっています。これは、四端子にしたほうがグランド側のインピーダンスがより小さくできるためですが、電気的にはどちらの端子も同電位であること、もともとのリードタイプの三端子コンデンサが三端子であったことから、チップ化されても「三端子」と呼ばれています。

<チップ三端子コンデンサの実装方法>

チップ三端子コンデンサは、スルー(貫通)端子とグランド端子があるため、普通の二端子コンデンサとは実装の方法が異なっています。図7に実装例を示します。

図7 チップ三端子コンデンサの実装方法

チップ三端子コンデンサをパスコンとして実装する際には、信号や電源のパターンをカットしてその間にスルー電極を接続し、グランド端子のところにグランドパターンを用意して接続します。グランドパターンはインピーダンスを低く保つためにできるだけ短い距離で安定したグランドプレーンに接続する必要があります。両面基板や多層基板を使用している場合はスルーホールでグランドプレーンに接続するのが望ましいです。

 

担当:村田製作所 コンポーネント事業本部 販売推進企画部 三屋 康宏

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