ノイズ対策ガイド

突入電流って何?

電気機器において電源を投入する際には、初期段階で定常電流値を超えて大きな電流が流れることがあります。この電流は突入電流(Rush current)と呼ばれます。
なぜこのような突入電流が発生するのでしょうか。要因は複数ありますが、事例としては以下のようなものがあります。

 

  • 大容量の平滑コンデンサやデカップリングコンデンサを持つ機器では、
    電源投入時にまずそれらのコンデンサを充電する必要があるため、電源投入時には大電流が流れます。
  • 電源投入直後はフィラメント (filament) などはその抵抗が小さく、大電流が流れます。
    (発熱して温まると、抵抗が大きくなり定常電流になります。)

突入電流のイメージがもう少し判り易くなるように、電源投入時の電流波形を図1に示します。電源をONにすると電流が流れ始めますが、初期に流れる電流は定常電流値より大きなピーク電流値に達します。その後、徐々に電流値は低下して、安定した定常電流値に達します。この定常電流値に至るまでの大きな電流が流れる部分が、突入電流です。突入電流の大きさが使用部品の許容値を超えてしまっている場合には、その突入電流量(ピーク電流値と定常電流値の差)と時間の長さ(ピーク電流値が定常電流値まで収束するまでの時間、以降はパルス幅と表記する)によっては、回路に使用している部品が過剰に発熱するため、電気機器の誤作動や故障の原因となる可能性があります。

図1. 電源投入時の電流波形

次に電源ラインのノイズ対策に使用されている部品の一般的な不具合について、実例を示します。今回は比較的安価で使い勝手の良いチップフェライトビーズ(弊社BLMシリーズ)にて説明します。
ノイズ対策に使用されているチップフェライトビーズに定格電流値を超える突入電流が流れた場合、過剰に発熱し最悪の場合オープン不良になります。図1の突入電流波形のピーク電流値とパルス幅の条件を変化させたものとして図2を示します。波形①はピーク電流値が大きい場合、波形②はパルス幅が大きい場合、波形③は不具合が起こらない場合をそれぞれ表しています。
波形①の場合、チップフェライトビーズには瞬間的に過剰な電流が流れて内部電極が溶断しオープン不良になります。溶断の際にはチップ自身が割れて破壊する場合があります。一方、波形②の場合、チップフェライトビーズは発熱し続けて波形①と同様に内部電極が溶断します。その時チップフェライトビーズが熱源となって実装している基板ごと焼損する場合があります。

図2. 突入電流波形

以上のようにノイズ対策に使用されているチップフェライトビーズにおいて突入電流が流れた場合、故障することがあります。突入電流にはピーク電流値やパルス幅などの要因があり、安全に製品を使用するには定格電流を考慮して選定することが重要になります。電源ラインでのノイズ対策や突入電流が印加される場合に懸念があれば、事前に弊社にお問い合わせください。

 

担当:株式会社村田製作所 コンポーネント事業本部 O.H

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