インダクタガイド

車載カメラのBias Tee用途に適したインダクタ[巻線インダクタ編]

1. はじめに

最近、運転手のアシストや将来的な自動運転を目的として、自動車へのカメラ搭載が広がってきました。一部の国では、既に事故防止のために新規車種での搭載が義務付けられています。この広がりをより一層拡大するため、外観や室内空間への影響を与えないように、カメラの小型が要求されています。

カメラを小型にする為には、使用する部品そのものを小さくして、なおかつ背を低くすることは勿論ですが、別の観点でも検討が進んでいます。その1つがワイヤーハーネス(電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にした集合部品。)を減らす取り組みです。従来、カメラで撮影した画像の伝送、カメラの制御、及びカメラ駆動用の電力供給は、別々のワイヤーハーネスを使って行われていました。しかし、ワイヤーハーネスが増えるほど、それを接続するためにカメラモジュール側に実装するコネクタのサイズは大きくなります。これを解決する手段の1つとして、1本のワイヤーハーネスで信号と電力の両方を伝送する方式が注目されています。

上記手法はメリットが多い一方、信号と電力の相互影響を無くすための対策が必要となります。ここでは、対策の1つであるBias Tee回路(直流成分と交流成分を分けるための回路)を組む際に必要なインダクタの性能、及びその用途として適切なインダクタを紹介します。

2. 車載カメラ向けBias Teeで注意するべき性能

信号回路と電力回路の相互影響を無くすために、図1のようにBias Tee回路を組む場合があります。一般的にBias Teeは、信号の処理部分に大きな直流電流が流入するのを防ぐための直列コンデンサと、電源の回路部分に信号成分が流入するのを防ぐためのインダクタで構成されています。

ここでは、特に車載カメラ向けのインダクタの必要特性について考えます。車載カメラの信号成分は、撮影した画像を伝送するための高速信号(数Gbps)だけではなく、制御用の低速信号(数百k-数Mbps)も含まれます。これら信号成分の電源回路への流入を防ぐためには、広い周波数帯で効果が出るように、異なる特性のインダクタを複数組み合わせる必要があります。図2にBias Teeに適用される組み合わせ特性の一例を示します。部品を組み合わせることで、数MHz~数GHzに渡って高いインピーダンスを実現しています。

図1. 車載カメラのBias Tee回路例
図2. Bias Teeに適用されるインダクタ組み合わせ特性の一例

3. インダクタの提案:LQH32PZシリーズ及びLQW15CNシリーズ

村田製作所では独自の材料技術と巻線技術を活用して、小型サイズで低インダクタンス~高インダクタンスのインダクタを商品化しています。LQH32PZシリーズは比較的高いインダクタンスのインダクタを、LQW15CNシリーズは比較的低いインダクタンスで自己共振周波数が高いインダクタをそれぞれ実現しており、これらを組み合わせることで適切なBias Tee回路を組むことが出来ます。

上記図2に示した特性は以下3つのアイテムを組み合わせたものです。

以下にLQH32PZシリーズ及びLQW15CNシリーズのスペックを示します。ご覧の通り小型サイズで様々な特性のインダクタを商品化しており、複数の部品を組み合わせることで、要求性能に近いBias Tee回路を構築することができます。

 
 
 
 
 
 

他にも、様々な巻線インダクタがラインアップされています。

など。

4. おわりに

今回紹介したLQH32PZ、LQW15CNシリーズは、車載カメラのBias Tee回路に適した部品の一例です。様々なインダクタンス値の部品を組み合わせ、必要な帯域に対して十分な特性を持つBias Tee回路を構築することが重要です。

 

株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術2課

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