インダクタガイド

NFC回路で使われるインダクタの紹介

1.はじめに

近年、スマートフォンにはNFCという機能が搭載されている機種が増えてきました。そこで、今回はNFCについて紹介します。

NFC(Near Field Communication)とは近距離無線通信のことで、NFC機能が搭載された機器同士を近付けて、数センチ程度の短い距離で通信を行う機能のことを言います。NFCのデータ転送速度は、Bluetooth®やWiFiなどの他の無線通信と比べると低速のため、小さいデータのやりとりをすることに使われます。実際、スマートフォンやウェアラブル端末での決済サービスや、WiFi設定、Bluetooth®のペアリング設定にNFCが使用されています。

このようなNFC機能の役割を担う回路には、インダクタが必要とされます。そこで、今回はNFC回路で使われるインダクタの必要特性と商品の紹介をします。

2.NFC用インダクタに必要とされる特性

NFC回路は以下のようにNFCのIC、LCフィルタ、マッチング回路、アンテナで構成されています。

図1.NFC回路の構成

LCフィルタは、ICから出力された信号のうち、通信に不要な高周波成分を除去するローパスフィルタの役割を担っています。しかし、後段のマッチング回路と回路上距離が近いため、LCフィルタの素子の定数がマッチングに影響を与えます。そのため、LCフィルタに使われるインダクタのインダクタンスには狭偏差が求められます。また、同様の理由から、LCフィルタに使われるインダクタのインダクタンスは、電流値に依存しないことが望ましいです。

さらに、回路中の素子によって損失が生まれ、バッテリーを必要以上に消費しないよう、インダクタには低ロスが要求されます。具体的には、NFC回路には13.56MHzのAC電流が流れるため、この周波数でのACR* が低いことが重要になります。

*  ACR(交流レジスタンス)

3.NFC用インダクタ:LQW、LQMシリーズの紹介

NFC回路に使用できるインダクタとして、LQW18CNシリーズ、LQW15CNシリーズ、LQM18JNシリーズを紹介します。

インダクタは電流値によってインダクタンス値が変化してしまうケースがありますが、LQW18CNシリーズは、図2のようにAC電流に対するインダクタンスの依存性が非常に小さいです。そのため、NFC回路に流れるAC電流の大きさによって特性が大きく変わることがありません。また、図3のように大電流でも低ACRを保つことができます。

図2.インダクタンス-AC電流(Irms)特性
図3.ACレジスタンス-AC電流特性

LQW18CNシリーズの小型タイプとして、LQW15CNシリーズがあります。さらに、磁気シールドタイプとしてLQM18JNシリーズという新商品も取り揃えています。

 

LQW18CNシリーズの詳細はこちらをご確認ください。
LQW15CNシリーズの詳細はこちらをご確認ください。
LQM18JNシリーズの詳細はこちらをご確認ください。

4.不平衡回路のNFC

NFC回路と言えば、一般に図1のような平衡回路ですが、図4のように不平衡回路に接続して使用されるケースもあります。この場合、マッチング回路とアンテナの間で、バランを用いて平衡-不平衡の変換をする必要があります。ここで使用可能なバランとして、DXW21BNシリーズがあります。DXW21BNシリーズはフロート型、トランス型の両方で使用できますが、実際NFC回路ではトランス型で使用されるケースが多いです。

DXW21BNシリーズの詳細はこちら

図4.不平衡回路に接続する場合の回路構成

5.おわりに

NFCではLCフィルタ用のインダクタや、不平衡回路への変換用のバランなどが必要となります。これらのニーズに対して、株式会社 村田製作所ではLQW、LQMシリーズやDXW21BNシリーズなどのラインアップを取り揃えており、様々な部品提案が可能です。

株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術課
加納愛美

さらに詳細な近距離無線通信用インダクタの紹介は
こちらをご覧ください。

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