近距離無線通信用インダクタ

Murata Icon X NFC

近年スマートフォン・タブレットなどの小型携帯機器において、NFC機能を搭載した製品が増えています。NFCとは近距離無線通信(Near Field Communication)の略称で、周波数13.56MHzの磁界を利用して専用のリーダー/ライターおよび搭載機器に近づけることで簡単に通信が出来る機能です(図1)。

株式会社村田製作所ではNFC用インダクタとしてLQW18Cシリーズ(巻線タイプ)およびLQM18Jシリーズ(積層タイプ)を用意しています。特にLQM18JシリーズはNFC搭載機器に最適な電気特性を実現した新商品です。


3.NFCの使用例

図1 NFC使用例

Murata Icon X NFC回路におけるインダクタの利用

近距離無線通信とは、広義にはBluetooth、Zigbeeなど到達距離の短い無線通信を指しますが、ここではNear Field Communicationの略語であるNFC通信を指します。近年、スマートフォン、タブレットなどの小型携帯機器ではNFC対応の機器が増えてきており、今後も需要が増加すると予想されます。
図2にNFCのアンテナと制御IC間の代表的な回路の概略図を示します。アンテナと制御IC間にローパスフィルタとしてLCフィルタが組まれています。このLCフィルタは高調波をカットすることでNFCの動作周波数である13.56MHzの信号のみを効率的に通信させるために挿入されています。

NFC回路の設計時に図2の回路のようにインダクタを用いてインピーダンスマッチングを行いますが、上述のLCフィルタはインピーダンスマッチングに影響するため、インダクタのインダクタンスは狭偏差(+/-5%以内)が要求されます。


図2_NFC回路概略図

図2 NFC回路概略図

Murata Icon X NFC用インダクタの選定ポイント

NFC用インダクタには13.56MHzの高振幅電流が流れます。そのため通常のマッチング用インダクタとは選定ポイントが異なります。ここではNFC回路の特徴とインダクタ選定のポイントを説明します。


従来のNFC制御ICは通信時の出力が小さいICが主流でした。しかし、携帯機器に搭載するためにNFC用アンテナの小型化が進んでおり、電流振幅が小さいままではNFC通信性能が低下します。そこで、高いNFC通信性能を実現するために通信時の出力が大きいICが増えています。NFC用インダクタの選定において高電流振幅でもインダクタンスが変化しないことが重要です。
図3にLQW18CNR16J00(巻線タイプ)、LQM18JNR16J00(積層タイプ:新)およびLQB18NNR22J10(積層タイプ:旧)のインダクタンスの電流振幅依存性を示します。NFC通信において、インダクタには約100~700mAppの電流振幅をもつ交流電流が流れます。LQB18Nは400mAppにおいておよそ2倍のインダクタンスに変化してしますが、LQW18CとLQM18Jは1Appを超えてもインダクタンスが変化しない特性を実現できています。

LQM18Jは通電時にインダクタンスが変化しないだけでなく、良好なNFC通信性能を示します。図4に示すように、NFCフォーラム(NFCの標準規格・共通仕様の策定を行う業界団体)の通信性能試験における測定点のうち赤色の点で通信性能を測定しました。LQW18CとLQM18Jの通信性能測定の結果を図5に示します。4.1Vの線はこの試験における合格基準であり、電圧が高いほどNFC通信性能が良好といえます。LQM18JはLQW18Cと同等のNFC通信性能を確保できています。


図3_LQW18C、LQM18J、LQB18Nの電流振幅に対するインダクタンスの変化率比較

図3 LQW18C、LQM18J、LQB18Nの電流振幅に対するインダクタンスの変化率比較


図4_NFCフォーラム準拠の通信性能測定系における測定点

図4 NFCフォーラム準拠の通信性能測定系における測定点


図5_LQW18CとLQM18Jの通信性能測定結果

図5 LQW18CとLQM18Jの通信性能測定結果



Murata Icon X NFC用インダクタの実装上のポイント

スマートフォンなどの携帯機器では高機能化に伴い、電子部品の実装密度が上がっています。LQW18Cは開磁路構造であるため、部品の周囲に磁束が漏れ、高密度実装の場合インダクタ同士で磁束が干渉してしまい、特性が変化する可能性がありました。そのためT字型に配置するなどインダクタ同士の磁束の干渉が起きない工夫が必要でした(図6)。
新開発のLQM18Jは磁気シールド構造であるため、部品の周囲に磁束が漏れません。そのため、高密度実装においても並列実装が可能であり、実装スペースの削減ができます(図6)。
実際にインダクタ間の距離を200umとしてLQW18Cを並列実装、T字実装、LQM18Jを並列実装した際の結合係数の違いを図7に示します。LQW18Cを並列実装した場合、インダクタ同士で強く結合しますが、LQW18CをT字実装した場合とLQM18Jを並列実装した場合はインダクタ同士が結合しない状態を実現できます。


図6_インダクタ実装上のポイント

図6 インダクタ実装上のポイント


図7_並列・T字実装時のインダクタ間結合

図7 並列・T字実装時のインダクタ間結合

Murata Icon X まとめ

NFC回路にはマッチング用としてインダクタが使用されますが、その特性としてインダクタンスの狭偏差仕様、大振幅電流通電時のインダクタンスの安定性、高密度実装が可能な外部との磁気結合対策などが求められます。積層タイプのインダクタLQM18Jシリーズはこれらの条件を備えた小型インダクタであり、NFC用としておすすめできるインダクタです。



Murata Icon X NFC用途に適したインダクタ