SubTitleIconNo01BLEとは?


これまで、Bluetoothはワイヤレスヘッドセット、ワイヤレスヘッドホンなど近距離の音声通信の手段として普及してきました。

BLEは、このBluetoothをより省電力にしてIoTなどでの使い勝手を向上させたBluetooth Low Energyの略称で、Bluetooth4.0で追加された規格です。

従来のBluetoothと同様、2.4GHz帯の電波を用いて通信を行いますが、従来のBluetoothに比べ伝送速度や到達距離を抑えることにより低消費電力を実現しています。

SubTitleIconNo02推奨されるBLE用パワーインダクタ


結論が先になりますが、BLE用として推奨できるパワーインダクタをここで紹介します。
  

積層構造のフェライトコアを採用した2012サイズのLQM21FN100M80とLQM21PNR47MGHです。より小型のものが必要な場合は4MHzの場合、LQM18PNR47NFRが推奨されます。

表1 BLE用として推奨するパワーインダクタ

内蔵DC-DCコンバータのスイッチング周波数
チップ
サイズ
品 番
インダク
タンス値

1MHz
2012
LQM21FN100M80
10μH
4MHz
2012
LQM21PNR47MGH
0.47μH
1608 LQM18PNR47NFR
0.47μH

これらがどういう理由でBLE用として推奨されるのかという点について、この後説明していきます。



SubTitleIconNo03BLEに使用されるパワーインダクタに必要な特性


BLEはBLE ICに内蔵されたDC-DCコンバータによって必要な電圧が用意されます。

この際、電圧変換用のパワーインダクタが外付けされますが、ここで使用するパワーインダクタの性能によってDC-DCコンバータの電力変換効率が左右されます。

BLEにおいては省電力であることが重視されるため、電力変換効率にすぐれたパワーインダクタを外付けすることがBLEの省電力性能につながります。

ここでは、BLEに適したパワーインダクタについて、必要な性能の考察を行い、具体的な商品を紹介します。


SubTitleIconNo04インダクタの違いがBLE電源効率に与える影響の調査


インダクタの違いがBLEの電源効率にどのように影響を及ぼすかを調査しました。
ここで、インダクタにおけるロスにはDCロスとACロスがあることに着目しています。DCロスは、インダクタに流れる電流の直流成分に起因する損失であり、直流抵抗(Rdc)と電流の直流成分(Idc)を用いて以下のように表されます。
一方、ACロスは主にインダクタに流れる電流の交流成分に起因する損失であり、巻線抵抗+コアロスによる見かけ上の抵抗である交流抵抗(Rac)と電流の交流成分(Irms)を用いて以下のように表されます。

交流成分(Irms)は電流振幅の大きさを表すものであり、この値はスイッチング周波数を高くすることやパワーインダクタのインダクタンスを高くすることで、低減することができます。

BLE ICに内蔵されたDC-DCコンバータは、2018年現在スイッチング周波数が1MHz程度のものと4MHz程度のものがあります。そこで、それぞれの周波数ごとにインダクタンス1.5uHと10uHのインダクタを使用した場合、DCロスとACロスの割合がどの程度になるかをシミュレーションしてみました(図1)。

周波数条件などにもよりますが、パワーインダクタではRdcよりもRacの方が大きくなります。そのため、図1に示すような負荷電流(=Idc)が50mA以下と小さい領域においては、DCロスは非常に小さくなり、ACロスが大部分を占めていることが分かります。

図1右下のL:10μH、周波数:4MHzの条件では、高Lかつ高周波数のため電流振幅が小さくなることによりACロスが抑えられるため、DCロスの割合が増えています。それでも、BLEでは負荷電流が10mA程度と微小であるため、全領域でACロスが支配的であると考えることができます。

この結果より、BLE用途でのインダクタロスを低減するためには、ACロスに影響をあたえるインダクタンスやRacが重要なパラメータとなります。

低Racでインダクタンスを高く取得するのが理想的ですが、インダクタンスを取得しようとすると、巻き線抵抗やコアロスが増加してしまいます。そのため、インダクタンスとRacのバランスが重要になります。Rdcについては、DCロスの割合が小さいBLE環境においては影響度が低いと考えることができます。ただし、大きくなりすぎると無視できなくなるので注意が必要です。

図1 BLE用電源ICのACロス/DCロスの割合

DC-DCコンバータの電力ロス要因としては、インダクタロスの他にもICのスイッチングロスやIC導通ロスなどが考えられます。

BLE向けパワーインダクタでは、インダクタンスの大きさがスイッチングロスに影響する場合があるので、その点も考慮して選定する必要があります。

図2はインダクタに流れる電流波形をシミュレーションしたものです。BLEのような低負荷での動作時には、電力効率を向上させるために一般的にPFM制御(パルス周波数変調)と呼ばれる制御モードで動作します。PFM制御では、スイッチングを連続的には行わず回数を減少させることで効率を向上しています。図2の左図は同じ周波数でインダクタンスを変更した際の電流波形です。

インダクタンスを大きくした方が電流振幅を小さく抑えられていますが、トータルの電流量を合わせるために三角波の発生数が増加しています。これはスイッチング回数の増加を意味しており、スイッチングロスが増加することになります。同じく図2の右図は、同じインダクタンスで周波数を変更した際の電流波形です。周波数が高い方が電流振幅を小さく抑えられていますが、スイッチング回数は増加していることが分かります。

このようにPFM制御においては、インダクタンスや周波数を高くして電流振幅を小さくすることによりACロスを低減できる一方で、スイッチングロスを増加させる側面をもっています。

図2 インダクタンス値やスイッチング周波数を変えたときの電流波形

それでは、どの程度のインダクタンス値を使うのがよいのでしょうか? 

図3では、スイッチング周波数1MHzと4MHzの両方で、インダクタンス値を変えたときの電源のロスをシミュレーションしてみました(LQM21P-GHシリーズの特性をベースに、インダクタンス値の変動に合わせてRacも変化させて計算しています)。

グラフは電源トータルロスとインダクタだけのロスをそれぞれ表示しています。

スイッチング周波数が低い1MHzの場合は、インダクタンスが大きいほどインダクタロスが低下しており、これに伴いトータルロスも低下していることが分かります。一方、4MHzの場合は、インダクタンスが大きいほどインダクタロスが低下していますが、トータルロスとしては増加する結果となっています。これは、インダクタンスが大きくなることによりスイッチングロスが増加したことが原因です。

1MHzに対して4MHzの場合では、そもそものスイッチング回数が多くスイッチングロスの割合が大きいため、インダクタンスの変動によるスイッチングロスの増加が著しくみられたといえます。

これらの結果より、1MHzの場合は10μH程度が適切であり、4MHzの場合は0.47μH~1.0μHが適切となります。

図3 インダクタンス値と電源ロスの関係


SubTitleIconNo05BLEに適したインダクタのまとめ


表2、3にBLEに適したインダクタのまとめを示します。

これまでに解説しているように、スイッチング周波数が1MHzの場合はインダクタンスが10μH程度、4MHzの場合はインダクタンスが0.47μH~1.0μHが適切といえます。

ここでは具体的に触れていませんが、直流抵抗やコアロスについても目安があり、表2、3で示したようなスペックのインダクタが求められます。


表2 スイッチング周波数1MHzの場合の推奨インダクタスペック
■スイッチング周波数1MHzの場合
L=10μH以上で低Rコアロスが重要。Rdcの影響は小さい。  

※具体的なインダクタの例:LQM21FN100M80


表3 スイッチング周波数4MHzの場合の推奨インダクタスペック
■スイッチング周波数4MHzの場合
L=0.47-2.2μH、低Rコアロスが重要。Rdcの影響は小さい。


※具体的なインダクタの例:LQM21PNR47MGH、LQM18PNR47NFR



SubTitleIconNo06BLE用に選択したインダクタのパフォーマンス


前節で紹介したBLE用の具体的なインダクタを使用した際のパフォーマンスを通常のインダクタと比較してみました。
同じスペックのインダクタでも、直流抵抗や磁性体の違いによりその結果は変わってきます。まずスイッチング周波数1MHzの場合です。

この場合、積層タイプインダクタLQM21FN100M80をBLE用のインダクタとして選択しています。市販のBLE機器に取り付けて評価した結果が図4です。LQM21FN100M80を使用することにより、消費電力が低下していることがわかります。

図4 スイッチング周波数1MHzのBLEで消費電力を比較
動作条件 :Vin=3.30V、Vout=1.68V、FSW=1MHz、Idc=10mA

図5はスイッチング周波数4MHzのBLE機器の場合です。この場合はインダクタンス0.47μHのLQM21PNR47MGHを使用しています。この場合も、適切な性能のインダクタに置き換えることによって消費電力を低減することに成功しています。


図5 スイッチング周波数4MHzのBLEで消費電力を比較
動作条件 :Vin=3.30V、Vout=1.80V、FSW=4MHz、Idc=4mA


SubTitleIconNo07まとめ


BLEに使用するパワーインダクタは電源効率に影響をあたえるため、BLEの特長である低消費電力を左右するキーパーツになります。

インダクタに求められるスペックはBLEで使用されるパワーICのスイッチング周波数によって異なり、1MHzでは10μH程度、4MHzでは0.47-1.0μH程度となります。

ただし、同じ形状、同じインダクタンス値でもインダクタのシリーズによって電源の効率は異なってくるため、BLEに適したインダクタのシリーズを選択することが必要となります。

ここで紹介したBLEに最適なパワーインダクタ
     
スイッチング周波数1MHzに対応   スイッチング周波数4MHzに対応
LQM21FN100M80
  LQM21PNR47MGH

 
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