人工水晶について

Murata Icon X 人工水晶の歴史

人工水晶育成の歴史は1905年にイタリアのGeorge Speziaが水熱合成法により人工水晶を育成したのが始まりで、日本では1953年に山梨大学において研究が開始されました。その後オートクレーブと呼 ばれる高温・高圧の育成炉に改良が加えられ、育成技術も向上され、人工水晶の工業化は1959年に育成炉1基あたりの生産量7kgで開始されました。

その後、技術の進歩により天然水晶と同レベルの品質の人工水晶の量産が可能となり、オートクレーブの大型化が推進され、1973年には1m3以上の内容積を持つオートクレーブが現れ本格的な量産が実現しました。現在では内容積4m3を超えるオートクレーブもあり、1基あたりの生産量も2トン (2,000kg) 以上となっています。

Murata Icon X 人工水晶の特徴

一般的性質
硬度 モース硬度7
比重 2.65×103kg/m3
屈折率 (波長589.3nmに対して)
1.5443 (常光線)
1.5534 (異常光線)
結晶系 三方晶系
化学組成 Sio2
誘電率 4.5
転移温度 573℃
溶解性 フッ素化合物に溶解
圧電気現象

水晶は圧電結晶ですので、ある方向に力を加えますと電荷を生じます (圧電気現象) 。またある方向に電界をかけますと変形を生じます (逆圧電効果) 。
一例として左図のようにX軸 (電気軸) に垂直に切出した水晶片を金属製の電極ではさんで押すと図に示すように電荷を生じます。逆に図に示すように電界を加えると水晶片は厚さ方向に縮みます。

Murata Icon X 人工水晶の育成

オートクレーブ 人工水晶は、水晶のアルカリ溶液に対する溶解度が温度により異なる (高温で水晶が多く溶ける) ことを利用し、高温・高圧の雰囲気で育成する、いわゆる水熱合成法と呼ばれる方法で育成されます。

育成炉はオートクレーブと呼ばれる圧力容器で、この中にNa2CO3やNaOH等のアルカリ溶液を充填して昇温し超臨界状態で水晶が育成されます。
オートクレーブの上部が下部より低温になるように維持すると高温・高圧下で溶解した原料が溶液の対流により下部から上部へ移動して、種結晶上に析出することにより人工水晶が育成されます。

用途に合わせ、育成条件、種結晶の方位および寸法を調整し、形状・寸法および特性の異なった人工水晶が育成されます。充分な管理の下に育成された人工水晶は、形状や寸法が制御されて均一な品質を持っています。

Murata Icon X 種結晶

種結晶の方位は、水晶振動子製造の経済効果を配慮して決定されます。Zカットやrカットの種結晶で育成された人工水晶からは、高周波数帯域に使用される厚みすべり振動や、中間周波数帯域の輪郭振動の振動子が製造されます。
X軸回転系の種結晶は、低周波数帯域の伸縮振動や屈曲振動を使用する水晶振動子に利用されています。
また、育成された結晶の種結晶の表面には異物から構成されるシードベールと呼ばれる薄い層が形成されることがあり結晶の品質に多大な影響をあたえます。

Murata Icon X 人工水晶の品質評価

人工水晶の欠陥及び不純物量は、成長速度、添加物、原料などに影響されます。特に成長速度は赤外線吸収係数 (α: Q値と相関あり) と周波数温度特性という人工水晶の重要な特性に影響を及ぼします。成長速度が速いとαが増加 (Q値は低下) し、周波数温度特性にバラツキを生じます。

初期の人工水晶品質指標は、水晶振動子のQ値であり、5次オーバトーン5MHz振動子が水晶片の保持や振動子製造上の諸条件によるバラツキの影響を受けにくく、そのQ値が人工水晶自体の内部損失をより正確に反映するため使用されました。しかし、この方法では直径の大きい水晶片が必要であり、目的とする振動子をZ領域から製造できない事もありました。振動子製造によるQ値の測定は、多くの時間と労力を必要とするために現在では赤外線吸収係数αを測定してQ値を推定する方法が採用されています。この方法は微小領域の測定が可能であり成長による変化も検出でき簡単に測定できるという利点があります。

推定Q値グレードC以上の人工水晶は、良質な天然水晶と同等な周波数温度特性を示しますのでこのような結晶は高周波数帯域の高品質振動子などの使用に適しています。育成工程での条件が管理された同一ロット内でのαのバラツキは非常に少ないので特定の製造ロットから評価のためのサンプルを抽出する際にはロット内でZ寸法が最も大きい水晶を選択します。その理由は、αは成長速度に比例して大きくなるので、Z寸法が最大の結晶は同一ロット内でαの最大値 (最低のQ値) を示すからです。