水晶振動子水晶振動子 専門用語の基礎知識

専門用語説明

共振周波数 frとは 
Resonance frequency

水晶振動子の共振特性において、水晶振動子のインピーダンスが抵抗成分のみとなる周波数のうち、低い方を指します。

振動子の共振特性の図

インピーダンスZが抵抗成分のみとなる周波数は、すなわち発振子の共振特性の中で位相Θが0となる周波数です。共振特性においては2点存在します。 このうち周波数の低い方を共振周波数と呼びます。

等価回路とは 
Equivalent circuit

水晶振動子の共振特性を、抵抗、インダクタンス、キャパシタンスで表したものです。回路構成は下図をご参照ください。
等価回路におけるR1は等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance)と呼ばれ、水晶振動子の重要な特性の1つです。

等価回路に関する回路図

等価直列抵抗 R1とは 
Equivalent series resistance

水晶振動子の等価回路において、直列アームにある抵抗を指します。

負荷容量 Csとは 
Load capacitance

水晶振動子の負荷時共振周波数を与える容量であり、発振回路においては、水晶振動子から見た場合にその入出力端に仮想的に接続される容量(外部負荷容量、マイコンや基板などの寄生容量などを含む)となります(発振状態の等価発振回路におけるCs)。下記の式から計算で求めることもできます。

負荷容量に関する回路図と計算式

負荷時共振周波数 fLとは 
Load resonance frequency

振動子に負荷容量を直列に接続した状態での共振周波数を指し、共振周波数よりも高い周波数になります。振動子の仕様で規定されている負荷容量と発振回路における負荷容量が異なる場合、振動子の公称周波数と発振回路における発振周波数には差が生じます。下記の式から計算で求めることができます。

負荷時共振周波数に関する図と計算式

周波数可変感度とは 
Pulling sensitivity

負荷時共振周波数fL(すなわち発振周波数)は、負荷容量により下記上段のグラフのように変化します。このグラフの各点の傾きが、各点の周波数可変感度となります(下記下段のグラフ)。例えば、負荷容量が6pFでの周波数可変感度は−17 [ppm/pF](負荷容量1pFの変化に対して周波数が17ppm変化する)となります。
また下記の式から計算で求めることもできます。

周波数可変感度に関するグラフと計算式

アドミッタンス円とは 
Admittance circle

水晶振動子の共振特性をアドミッタンス平面上に描画したものです。円を描くことからアドミッタンス円と呼ばれます。共振周波数より低い周波数では 水晶振動子のアドミッタンスは原点付近におり、周波数が高くなるに従って時計回りの円を描いていきます。共振周波数付近で円の約半分までの軌道を描きます。周波数が高くなり反共振周波数に近づくにつれて、さらに円軌道を描きつつ原点付近に戻っていきます。

アドミッタンス円に関するグラフと計算式

発振余裕度とは 
Margin for oscillation stop / Negative resistance analysis

発振している状態から発振停止に至るまでのマージン(余裕)を表したもので、振動子を使用する発振回路において最も重要な項目です。振動子特性のほかに、発振回路を構成する部品(マイコン、コンデンサ、抵抗)によっても変わります。
当社では発振余裕度が5倍以上となる条件での使用をお奨めしています。詳細は発振余裕度についての説明をご参照ください。

負性抵抗 −Rとは 
Negative resistance

発振回路の信号増幅能力を抵抗で表したものです。一般に抵抗が信号を減衰させるのに対し、負性抵抗は信号を増幅する能力を表すため、符号は負になります。
負性抵抗の絶対値 |−R| が小さいことは信号を増幅する能力が低いことを表します。CMOSインバータを用いた発振回路において負性抵抗は、CMOSインバータ特性、帰還抵抗、制限抵抗、外部負荷容量によって決まります。

発振状態の等価発振回路図

ドライブレベルとは 
Drive level

ドライブレベルとは、発振回路が動作している状態において、振動子で消費される電力を指します。この値は振動子の共振抵抗のほかに、発振回路を構成している部品(マイコン、コンデンサ、抵抗)により決まります。ドライブレベルが過大である場合、発振周波数-温度特性において異常が現れるなどの現象が生じ得ますので、回路設計時に確認しておくことをお奨めします。

C-MOSインバータとは 
C-MOS inverter

p型とn型のMOSFETを相補型に配置した素子がC-MOS(Complementary MOS)であり、下図の形においてインバータ(論理反転回路。NOT)となります。

C-MOSインバータに関する回路図

発振回路とは 
Oscillation circuit

C-MOSインバータやトランジスタなどを用いた増幅回路において、出力を入力に戻す(フィードバック)ようにループを構成し、増幅が継続するようにした回路を発振回路と呼びます。水晶振動子を介してフィードバックすることにより、インピーダンスの低い(負荷時)共振周波数の信号のみを選択的に増幅することができます。

発振回路に関する回路図

回路マッチングとは 
Circuit matching

発振回路では、回路を構成する部品(C-MOSインバータ、水晶振動子、抵抗、外部負荷容量など)の組み合わせによって発振特性が変わります。このため常に安定した発振を得るためには、発振特性を確認し、抵抗や外部負荷容量の組み合わせを適した条件にする必要があります。この特性確認 / 回路調整を回路マッチングと呼んでいます。

公称周波数とは 
Nominal frequency

水晶振動子メーカーが水晶振動子に対して指定する周波数を指します。例えば30MHzで発振させることを目的とした水晶振動子の公称周波数は30MHzになります。実際に基板に搭載して動作させた場合の発振周波数は、マイコンや基板、外部負荷容量の違いにより、公称周波数からずれる場合がありますので注意が必要です。

周波数許容偏差とは 
Frequency tolerance

ある動作条件における動作周波数の最大許容偏差(どれだけ発振周波数が変化するか、の最大)を表します。一般に公称周波数を基準に、ppm(百万分の一)単位で示します。動作条件については水晶振動子の仕様書で規定する条件などによります。

発振周波数とは 
Oscillating frequency

発振周波数とは、振動子を発振回路に組み込んで動作させている状態での、実際の周波数を指します。発振周波数はおもに振動子の特性によって決まりますが、マイコンの特性、外部負荷容量、実装基板の寄生容量などの影響を受け、実際の発振周波数が決まります。

発振振幅とは 
Oscillation Amplitude

発振振幅とは、発振回路においてインバータの入力-グランド、出力-グランド間にそれぞれ現れる電圧波形の振幅を指します。

発振回路部品 用語説明

帰還抵抗 
Feedback resistor

C-MOSインバータを用いた発振回路において、インバータに対して並列に接続される抵抗です。マイコンに内蔵されている場合があります。インバータの入出力間の直流電圧を平衡化し、インバータを増幅器として機能させる役割を持ちます。水晶振動子のインピーダンスより高い値である必要がありますが、値が高すぎると実装基板などの絶縁抵抗の影響を受け、正常に発振しない場合もありますので注意が必要です。
当社では帰還抵抗がマイコンに内蔵されていない場合、1MΩを帰還抵抗として搭載することをお奨めしています。

制限抵抗 
Damping resistor

制限抵抗はC-MOSインバータを用いた発振回路において、インバータの出力側に接続する抵抗です。インバータで増幅された振幅を減衰させる働きがあり、おもにドライブレベルが高すぎる場合にその抑制を目的に用いられます。ただし、この抵抗値が高すぎると発振余裕度の低下、ひいては発振停止の原因となりますので注意が必要です。マイコンの特性にもよりますが、0~2kΩ程度の範囲で使用されます。

外部負荷容量 
External load capacitor

外部負荷容量とは、C-MOSインバータを用いた発振回路において、インバータの入力側、出力側とグランドの間にそれぞれ接続される容量です。 発振回路においては負性抵抗や発振周波数に直接影響する、非常に重要な部品です。セラミック発振子(セラロック)においてはこの容量を負荷容量と呼んでいますが、水晶振動子においては負荷容量Csと混同するため、“外部負荷容量”と呼んでいます。一般に、外部負荷容量として使用する2つのコンデンサの容量は同じ値のものを使います。マイコンの特性や実装基板の寄生容量にもよりますが、水晶振動子においては5~10pFの範囲が適切と考えます。