セラミックコンデンサのFAQQセラミックコンデンサの静電容量は経時変化するのかどうか教えてください。また、経時変化の注意点があれば教えてください。

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セラミックコンデンサの中でも高誘電率系に分類されるコンデンサ(X5R特性やX7R特性など)につきましては、その静電容量が時間経過と共に低下する性質を持っています。
時定数回路などに使用する場合は、その特性を十分に考慮頂き、実使用条件、および実機における確認をお願い致します。

例えば、以下グラフに示しますように、経過時間が長くなればなるほど、その実効的な静電容量は低下します。(対数時間グラフ上でほぼ直線的に低下します。)
*以下グラフは、横軸に経過時間(h)、縦軸に初期値に対する静電容量変化率を示したものです。

このように、静電容量が時間経過と共に低下する性質のことを静電容量の経時変化(エージング)と呼びます。

尚、エージング特性につきましては、弊社製品に限ったものではなく、高誘電率系コンデンサ全般に見られる現象で、温度補償用コンデンサには、エージング特性はございません。

また、エージングにより静電容量が小さくなったコンデンサが、工程内のはんだ付け等で再度キュリー温度(約125℃)以上に加熱されると静電容量は回復致します。
そして、そのコンデンサがキュリー点以下に冷えた時点から再びエージングが始まります。

エージング特性のメカニズムについて

セラミックコンデンサの中でも高誘電率系コンデンサは、現在主にBaTiO3(チタン酸バリウム)を主成分とした誘電体が使用されています。
BaTiO3 は下図に示すようにペロブスカイト(perovskite)形の結晶構造を持ち、キュリー温度以上では立方晶系(cubic)で、Ba2+イオンは頂点に、O2-イオンは面心に、Ti4+イオンは体心の位置にあります。

これがキュリー温度(約125℃)以上では立方晶系(cubic)の結晶構造ですが、それ以下の常温領域では一つの軸(C軸)が伸び、他の軸がわずかに縮んで正方晶系(tetragonal)の結晶構造となります。

この際、Ti4+イオンが結晶単位の伸びた軸方向にずれた結果として分極が生じますが、この分極は、外部から電界や圧力を加えなくても生じているもので、自発分極(spontaneous polarization)といいます。

このように、自発分極を持ち、自発分極の向きを外部電界によって反転させることのできる性質を特に強誘電性と呼んでいます。

また、BaTiO3 をキュリー温度以上に加熱すると、結晶構造が正方晶系から立方晶系へ相転移します。これに伴って自発分極が消失し、分域もなくなります。

これをキュリー温度以下に冷却すると、キュリー温度近くで立方晶系から正方晶系へ相転移し、C 軸方向が約1%伸び、他の軸がわずかに縮んで自発分極および分域が生成します。同時に結晶粒は周りから歪みによるストレスを受けるようになります。

この時点では結晶粒内に微少な分域が多数生成しており、各分域が持つ自発分極が低電界でも反転しやすい状態にあります。
キュリー点以下の温度に無負荷で放置されると、時間の経過とともに、ランダムな方向を向いていた分域がより大きな寸法をもち、かつエネルギー的により安定した形(図 90°domain)へと徐々に再配列して結晶の歪みによるストレスを解放するようになります。
これに加えて、粒界層の空間電荷(動きの鈍いイオンや空格子点など)が移動し、空間電荷分極が生じます。空間電荷分極は自発分極に作用して自発分極の反転を阻害します。

つまり、自発分極の生成から時間が経つと、徐々に自発分極が安定した状態に再配列するとともに粒界層に空間電荷分極が生じて自発分極の反転を阻害するようになります。
この状態では分域がもつ自発分極を反転させるためにより高い電界が必要になります。
単位体積あたりの自発分極の反転に相当するのが比誘電率ですので、低電界で反転する分域が減少すれば、静電容量が低下します。
これがエージング特性のメカニズムと考えられています。

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