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手はんだ付けはリフローはんだ付けと比較し、任意の箇所への局所的な急加熱によりはんだ付けを行うという点が異なります。その際には特有の温度変化と残留応力が原因となり、以下2点への注意が必要となります。
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局所的な急加熱、熱衝撃による部品へのダメージ(クラックの発生)を防止するために、チップの予熱を行う等、チップへの熱衝撃を緩和すること
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基板温度がリフロー時よりも低いことから、冷却時の残留応力に差が生じ、機械的強度(耐基 板曲げ性)が低下しやすい。その強度を高めるために、はんだ付け時の基板の温度を高く保つこと
片面基板であれば、ホットプレートでチップと基板を予熱しながら、手はんだ付けをすることが出来ます。以下では、両面基板の場合を想定し、1.スポットヒーターにて修正箇所の基板とチップを予熱しながらはんだ付けする方法、2.スポットヒーターのみではんだ付けする方法について紹介します。
※製品シリーズ・品番によって、実装条件が異なるもの、コテ修正できないものがあります。納入仕様書または詳細スペックシート詳細スペックシートとは
を必ずご確認下さい。
1. スポットヒーターにて基板とチップを予熱しながらはんだ付けする方法
- 片側のランドに予備はんだを付ける
- チップとランド部にフラックスを塗布する
- チップをホットプレート上で予熱する
- 熱風を基板に当てることで、基板予熱を行う
- チップと基板温度が所定の温度に予熱されたら、チップをピンセットで保持し、すばやく搭載位置に移動する (予熱に必要な時間は、基板の熱容量により異なります)
- はんだコテで予備はんだを再溶融し、片側端子をはんだ付けする
- 反対側の端子も、糸はんだを供給しながらはんだ付けする
2. スポットヒーターのみではんだ付けする方法
- 片側のランドに予備はんだを付ける
- チップとランド部にフラックスを塗布する
- スポットヒーターを当て片側端子をはんだ付けする
- 反対側の端子も、糸はんだを供給しながらはんだ付けする
熱風によるはんだ付けを行う事で、チップを予熱せずにクラック発生を抑制する事ができます。また、はんだ付け作業時、基板に対しても熱風が当てられる事で、はんだ付け時の基板温度を上げる事も可能となります。
手はんだによる耐基板曲げ性低下のメカニズム
リフローはんだ付けと手はんだ付けのプロセス上の大きな違いは、はんだ付け時の基板温度であり、この差異が耐基板曲げ性に影響しています。
はんだ付け後、冷却過程において、はんだ、チップ、基板が収縮します。はんだ、チップの収縮は、耐基板曲げ性試験におけるチップの破壊起点である外部電極端部(応力集中部)に対し、引張り応力として働くのに対して、基板の収縮は圧縮方向の力として働き、他の引張り応力を緩和します。基板からの圧縮応力は、はんだ凝固開始時の基板温度により決定します。
リフローはんだ付けの場合、全体が均一に加熱・冷却されるのに対して、手はんだ付けの場合、はんだ凝固開始時の基板温度が低い(予熱無しの場合50~70℃)事で、常温まで冷却された時点における応力集中部にかかる引張り方向の残存応力が強くなり、リフローはんだ付けの場合よりも、耐基板曲げ性強度は低下する事になります。
冷却収縮時の応力推定図