測定条件の違いが理由として考えられます。
設計支援ツールSimSurfingにて確認することができる積層セラミックコンデンサの静電容量-周波数特性(C-f特性)の静電容量が公称静電容量と比較して低くなっている場合があります。例えば、GRM155B30J225KE95は公称静電容量が2.2uFですが、図1に示すC-f特性では1.68uFと小さくなっています。この理由は、周波数特性測定においてコンデンサに印加される測定電圧を、公称静電容量の測定条件より小さい値で設定しているためです。
ここでは、C-f特性が公称静電容量より小さくなっている理由について、その背景も含めて説明します。
図1. 静電容量-周波数特性(GRM155B30J225KE95)
IC駆動電圧の低電圧化に伴うコンデンサに要求される特性
ICの高集積化、動作周波数の高速化、低消費電力化に対応するため、IC駆動電圧の低電圧化が進んでいます。1990年前半まで5.0Vであったのが、3.3V、2.5V、1.8V、1.5V、1.2V、1.0Vと低電圧化しています。
低電圧化が進むと同時に許容できる電圧変動も小さくなり、例えば許容精度を±5%とした場合、5.0Vでは4.75Vから5.25Vと±0.25Vの電圧変動が許容できますが、1.0Vにおいては±0.05Vしか許容できなくなります(図2)。
このような厳しい電圧要求に対し、電源のPoint of Load化(POL)、平滑コンデンサやデカップリングコンデンサとして積層セラミックコンデンサを使用することなどにより、電圧変動を抑制する対策が取られます。このとき、コンデンサには、ICの駆動電圧に数十mV以下のAC電圧(リップルやゆらぎ)が加わった状態となり、コンデンサの特性としてこの条件下における性能が重要となります。
図2. IC駆動電圧と許容幅(許容精度5%)
周波数特性と公称静電容量の測定条件
前項で説明したように、IC駆動電圧の低電圧化に伴い、積層セラミックコンデンサは数十mVの電圧が印加した状態で使用されることが増えてきており、コンデンサの特性を示す上で低い信号電圧で測定したデータが必要となってきています。
そこで、SimSurfingにて公開している周波数特性データの測定条件は、コンデンサに印加される測定電圧が数十mV以下となるように設定しています。
高誘電率系の積層セラミックコンデンサはAC電圧依存性を持っており、その多くはAC電圧が低くなると静電容量は小さくなる傾向を示します。従って、周波数特性データは低信号電圧で測定した結果であるため、公称静電容量と比較して低い値となっています。
図3にGRM155B30J225KE95のAC電圧特性を示します。 AC10mVrmsにおける容量値は1.66uFとなっており、図1の静電容量-周波数特性とほぼ一致することが分かります。
図3. AC電圧特性(GRM155B30J225KE95)
関連FAQ
> 積層セラミックコンデンサにおける温度特性やDCバイアス特性、AC電圧特性、インピーダンス/ESRなどの周波数特性、リップル発熱特性などの主要な電気特性データをください。また、そのデータをCSV形式で提供可能でしょうか。
> 積層セラミックコンデンサの測定条件(周囲温度や交流の印加電圧)を変えた場合のDCバイアス特性データをください。(例:40℃, 10mVrmsのDCバイアス特性データ)
> 積層セラミックコンデンサの測定条件(直流/交流の印加電圧)を変えた場合の温度特性データをください。(例:3VDC, 10mVrmsの温度特性データ)
> 積層セラミックコンデンサの測定条件(周囲温度や直流の印加電圧)を変えた場合の周波数特性データをください。(例:40℃, 3VDCの周波数特性データ)
> 積層セラミックコンデンサの電気特性データシートをください。また複数品番の比較データをください。