セラミックコンデンサの加速試験としては、温度と電圧の加速試験が代表的な手法です。セラミックコンデンサに負荷される温度と電圧に関する加速式は、以下のアイリングモデルに従うという報告があり、電圧加速係数(※1)と活性化エネルギー(※2)を求めることで、セラミックコンデンサの寿命を推定できます。
この加速式から、より厳しい条件下(より高い温度、より高い電圧)で加速試験を行うことで、実際の製品が使用される環境下でのセラミックコンデンサの寿命を推定することが可能となります。
なお、簡便な推定方法として、試験温度T
Aでの故障時間が標準温度T
Nのときより1/2または2倍となる温度差θを温度加速定数とした、以下の経験式も用いられています。
ここでセラミックコンデンサでの加速試験と、実際的な製品使用の想定環境との比較について考えてみましょう。この場合、コンデンサの加速試験での耐久試験時間をL
A、実使用環境下での相当時間をL
Nとして上式を用います。
耐久試験条件 |
想定使用環境 |
電圧加速定数 |
温度加速定数 |
相当時間 |
TA=85°C
VA=20V
LA=1000h |
TN=65°C
VN=5V
|
n=3
|
θ=8 |
LN=?h |
このように、85℃、20V印加環境下にて行われた1000hの耐久試験は、65℃、5V印加環境下での362039h(≒41年!)に相当すると推定されています。計算に用いられる電圧加速定数、温度加速定数はセラミック材料の種類や構造により異なりますが、加速式を用いることで長期間に及ぶ実使用環境下でのセラミックコンデンサの寿命を比較的短時間の試験結果から検証することが可能となります。
【補足説明】
※1 電圧加速係数nの算出:
試料に寿命を確認したいMLCCを用いて、試験温度を固定して印加電圧をパラメータとして寿命試験をおこないます。各寿命試験におけるワイブル解析結果から、印加電圧の対数と平均寿命(MTTF) の対数との関係を直線近似したときの傾きが、電圧加速係数nとして求めることができます。
※2 活性化エネルギーEaの算出:
電圧加速係数を算出したものと同じMLCCを用いて、印加電圧を固定して試験温度をパラメータとして寿命試験をおこないます。各寿命試験におけるワイブル解析結果から、温度(絶対温度)の逆数と平均寿命(MTTF)の対数との関係を直線近似したときの傾きから、活性化エネルギーEaを求めることができます。