PTCサーミスタ(ポジスタ)PTCサーミスタ(ポジスタ)とは?動作原理

PTCサーミスタ(ポジスタ)の基礎知識

PTCサーミスタ(ポジスタ)とは?

1940年初期、日本、アメリカ、ソ連で独立して発見されたチタン酸バリウム(BaTiO3)は、一般に常温で1010Ω・cm以上ですが、微量の希土類元素(Y、Bi、Sbなど)を添加すると、比抵抗が、10~106Ω・cmになり、かつ、キュリー点に対応して正の温度特性を示すことが、1952年Philips社のHaayman(オランダ)らによって発見されました。

しかし、彼らは文献を発行せず、特許の申請のみであったので、公知になったのは1954年頃でした。1961年に世界で初めて村田製作所が量産を開始し、ポジスタという登録商標を取得しました。1963年頃から、欧州、アメリカ、日本の各社でも工業化の利用が進み、温度補償用、水位検知、モータの過熱防止、自動温調ヒーター、カラーテレビの消磁回路などとして応用されました。

BaTiO3とPTCサーミスタの抵抗 - 温度特性

動作原理

セラミックPTCの主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO3)は、キュリー温度前後で結晶構造が変わります。キュリー温度以下では、正方晶で結晶構造的にプラスとマイナスがある電気双極子が存在します。キュリー温度以上では、立方晶に変化し、電気双極子が消失します。

セラミックの粒と粒の間にある境界を「粒界」といいますが、粒界には酸素イオンがトラップされており、電子の流れを妨げます。キュリー温度以下では、電気双極子が酸素イオンを電気的に打ち消し、電子はスムーズに流れます。キュリー温度以上では電気双極子が消失し、電子の流れを酸素イオンが妨げ、抵抗値が高くなります。

セラミックPTCのSEM像
キュリー温度前後の状態の変化

用途

NTCサーミスタと同様に、温度の変化により抵抗値が変化を利用して温度センサとして使用できます。非常にシンプルな回路構成で、機器が熱くなったことを検知することが特長です。
しかし、PTCサーミスタならではの「自己発熱」を利用した用途もあります。大きな電流を印加することで、自己発熱で抵抗値が上昇し、そのことにより電流を抑制することができます。異常な状態が取り除かれると、元の抵抗値に復帰するリセッタブルヒューズとしての用途です。部品の故障、誤配線などで回路に流れる異常な電流からICなどを保護するために使用されます。
また、この自己発熱は、その状態による抵抗値の変化で発熱と放熱のバランスを取るため、自己制御機能を持っています。この動作を利用し、定温ヒーターとして使用可能です。