抵抗値-温度特性(R-T特性)

NTCサーミスタの抵抗値は、自己発熱(印加電流による発熱)量が十分に少ない電流で測定します。目安として、最大動作電流を使用することをおすすめします。
また、抵抗値は、必ず温度とペアで表現する必要があります。

特性カーブは以下の式で表されます。

R1 = R0 exp(B(1T11T0))

R0、R1
温度T0、T1のときの抵抗値
T0、T1
絶対温度

図1 : NTCサーミスタのR-T特性

B定数

NTCサーミスタの特性を示す特有の値として、B定数があります。B定数の規定には、必ず2点が必要となります。B定数は、2点の傾きを表しています。
選択する2点が異なるとB定数が異なりますので、比較の際にはご注意ください。(図2参照)

R1 = R0 exp(B(1T11T0))

R1、R0
温度T1、T0のときの抵抗値
T1、T0
絶対温度

この式(抵抗値 − 温度特性参照)を変形すると

B = ln(R1R0)/(1T11T0⊿R⊿T

2点間の傾きを表しています。

  • ムラタは、25°Cと50°Cで定義しています。B(25/50)と記載します。

図2 : 2点の選択で異なるB定数

この式を正確に表すと、1/T(Tは絶対温度)と抵抗値が対数比例し、図3のグラフになります。ほぼ直線となっていることが確認できます。

図3 : 横軸を1/Tとした温度特性

電圧-電流特性(V-I特性)

NTCサーミスタのV-I特性を図4に示します。

電流値を徐々に大きくすると、小さな電流の領域では、オーミック接触で電圧も徐々に増加します。電流による自己発熱を、サーミスタ表面などから熱を放散させて温度が上がらない状態となっています。
しかし、発熱量が大きくなると、NTCサーミスタ本体の温度が上昇し、抵抗値が減少します。この領域になると、電流と電圧の比例関係が成り立たなくなります。

通常は、この自己発熱をできるだけ抑えた領域で使用します。目安として、最大動作電流以下をおすすめします。

電圧頂点を超えた領域での使用は、発熱と抵抗値の減少が繰り返し発生する、熱暴走領域となる可能性があります。熱暴走は、サーミスタが赤熱し、破損することがありますので、ご使用されないようにお願いします。

図4 : NTCサーミスタ V-I特性

抵抗温度係数(α)

NTCサーミスタの抵抗値の1°Cあたりの変化率を表す係数をサーミスタの温度係数と言い、以下の式で算出されます。

α = 1RdRdT

R = R0 exp(B(1T1T0))

R、R0
温度T、T0のときの抵抗値
T、T0
絶対温度

Ex)50°C付近 B定数3380Kの場合

α = − 3380(273.15 + 50)2 × 100 [%/°C] = −3.2 [%/°C]

以上から、抵抗温度係数は以下のようになります。

α = − BT2 × 100 [%/°C]

表1 : 金属の温度係数

金属名 温度係数 [%/°C]
白金 0.39
0.43
ニッケル 0.67
コバルト 0.60
鉄(純鉄) 0.66

熱放散定数(δ)

周囲温度T1の状態で、サーミスタに電力P(mw)を消費させたときに、サーミスタの温度がT2となると、以下の式が成立します。

P = δ(T2 − T1)

δを熱放散定数(mW/°C)と言います。上の式を変形すると以下のようになります。

δ = P(T2 − T1)

熱放散定数δは、自己発熱で1°C温度上昇するために必要な電力のことです。
熱放散定数δは、「電力消費による自己発熱」と「放熱」のバランスで決定されるために、使用環境で大きく変動します。
ムラタでは、素子単体での熱放散定数を規定しています。

図5 : チップNTCサーミスタの熱放散の様子

熱時定数(τ)

温度T0に保持されているサーミスタを、急に周囲温度T1に変化させたときに、目標温度T1まで変化するのに要する時間を熱時定数(τ)と言います。通常は、T0、T1の温度差の63.2%に達するまでの時間を言います。

ある温度(T0)に保たれたサーミスタが、他の温度(T1)の中にさらされたときの温度変化は指数関数的に変化をし、経過時間(t)のときの温度(T)は、以下のように表せます。

T = (T1 − T0) (1 − exp (−t/τ) ) + T0

t = τ とすると、

T = (T1 − T0) (1−e-1) + T0

T − T0T1 − T0 =1 − e-1 = 0.632

このことからτは、温度差の63.2%に達する時間と規定されています。

図6 : NTCサーミスタの応答特性

表2 : 熱時定数と温度変化率

時間 温度変化
τ 63.2%
86.5%
95.0%
99.8%
99.9%

最大電圧(Vmax)

サーミスタに直接印加できる最大の電圧です。最大電圧以上の電圧を印加されると、破壊や特性劣化の可能性があります。
また、自己発熱により素子の温度が上昇します。温度上昇が使用温度範囲を超えないようにご注意ください。

図7 : 一般用NCU15シリーズの最大電圧軽減特性

最大動作電流(Iop)、最大動作電圧(Vop)

ムラタでは、印加した際に自己発熱が0.1°Cとなる電流と電圧を、最大動作電流 / 最大動作電圧と規定しています。サーミスタの性能を活用していただき、より正確に温度検知していただくためのご提案です。

従って、この電流や電圧を超えての使用が、すぐにサーミスタの破壊や特性劣化にいたるものではありません。ただし、自己発熱が大きくなり検知誤差となることをご認識ください。

図8 : 熱放散違いによる最大動作電流 / 電圧の変化

ムラタでの最大動作電流の算出方法

  • 最大動作電流の算出には、素子単体で規定された熱放散定数(1mW/°C)を使用しています。熱放散定数は、放熱の度合いを示していますが、放熱状態は、使用環境により大きく変動します。素子単体での規定は、使用環境による変動を除外した規定と言えます。
  • 使用環境は、基板の材質や厚み、構造、ランド寸法、放熱板の接触、樹脂コーティングなど多岐にわたります。そのほとんどが、放熱が大きくなる方向の変化となります。
  • 実使用では、熱放散定数は、素子単体の3~4倍程度となると、経験上から推定しています。仮に3.5倍となっている場合、そのときの最大動作電流を赤線で示します。1mW/°Cのときと比べて、1.9倍(√3.5倍)となります。

ゼロ負荷抵抗値

自己発熱を無視できる程度の電流(電圧)で測る抵抗値のことを言います。目安として、最大動作電流を使用することをおすすめします。

図9 : ムラタの抵抗値測定