世界最小サイズのSAWデュプレクサ、フィルタを開発、量産を開始 ~回路設計の高密度化、スマートフォンの多機能化に貢献~

  • 弾性波デバイス

2019/07/16

株式会社村田製作所
代表取締役会長兼社長 村田 恒夫

株式会社村田製作所(本社:京都府長岡京市、代表取締役会長兼社長:村田恒夫)は、世界最小サイズ*1のSAW*2デュプレクサ*3 「SAYAVシリーズ」、「SAYRVシリーズ」、「SAYAPシリーズ」、およびSAWフィルタ「SAFFWシリーズ」(以下、本製品)を開発し、量産を開始しました。
*1 当社調べ。2019年6月末時点。
*2 物質の表面を伝搬する表面弾性波(SAW: Surface Acoustic Wave)のこと。
*3 送受信のアンテナを共用することで送信経路と受信経路を電気的に分離できるデバイス。


高性能化するスマートフォンにおいて使用される電子部品はさらなる小型化が求められています。特に特定周波数を送受信する役割を持つSAWデバイスはスマートフォンのマルチバンド対応のため、特定地域に対応したミドルクラスの機種でも1台あたり14個~15個、グローバル対応のプレミアムモデルでは30個~40個採用されることがあり、小型化のニーズが非常に強い部品です。当社は独自の設計・小型化技術を用いることで、チップ設計とパッケージング方法を徹底的に見直し、世界最小サイズを実現すると同時に従来品と同等以上の特性を持つ本製品を開発しました。


主な特長

本製品の特長は以下の通りです。

世界最小サイズのSAWデバイス
700MHz帯から2.6GHz帯までの周波数帯に対応するSAWデュプレクサ「SAYAVシリーズ」、「SAYRVシリーズ」、「SAYAPシリーズ」は1.6mm×1.2mm(長さ×幅)、SAWフィルタ「SAFFWシリーズ」は0.9mm×0.7mm(長さ×幅)の製品サイズにより、従来比*4で約24%(デュプレクサ)、約37%(フィルタ)の小型化を実現しました。電子回路における実装面積の大幅な削減を可能とし、高密度回路設計に貢献します。
*4 それぞれ1.8mm×1.4mmのSAWデュプレクサ、1.1mm×0.9mmのSAWフィルタとの比較。

本製品と既存品のサイズ比較


左:既存品のSAWデュプレクサ
右:本製品のSAWデュプレクサ 

左:既存品のSAWフィルタ
右:本製品のSAWフィルタ 

従来品と同等以上の特性を実現
当社が持つ独自の設計・小型化技術を用いることで小型化にともなう特性劣化を抑え、優れた特性を実現しています。本製品は伝送特性*5、アイソレーション特性*6において、いずれも従来品と同等以上の特性を有しています。また、第5世代移動通信システム(5G)をはじめとした今後のスマートフォンにおけるハイパワー化に備え、耐電力性の改善も先駆けて実現させました。
*5 アンテナと送受信回路の間での通過損失の度合い。
*6 デュプレクサで送信・受信それぞれのフィルタリング機能を分離する特性。


主要周波数帯に対応したラインアップ
本製品は、標準化団体である3GPP*7が定めた周波数帯区分の規格のうち、主要な周波数帯に対応した製品ラインアップを揃えています。

ラインアップと対応周波数帯
SAW デュプレクサ SAW フィルタ
Band  P/N  Band  P/N 
SAYAV1G95BA0F0A  SAFFW2G14AA0E0A 
SAYAP1G88BA0C0A  SAFFW1G96AA0E0A 
SAYRV1G74BC0C0A  SAFFW1G84AA0E0A 
SAYRV836MBA0F0A  SAFFW881MAA0E0A 
SAYRV2G53BA0E0A  SAFFW2G65AA0E0A 
SAYRV897MBA0C0A  SAFFW942MAA0E0A 
20  SAYAP806MBA0C0A  40  SAFFW2G35AA0E0A 
    41  SAFFW2G59AA1E0A 
    GNSS  SAFFW1G56AA0E0A 
    ISM2.4GHz  SAFFW2G45MA0E0A 

*7 Third Generation Partnership Projectの略。第3世代以降の移動通信システムの標準規格の仕様検討などを行っている。


当社は本製品ラインアップの拡充に取り組み、2019年度末には700MHz帯から2.6GHz帯までの主要な通信帯への対応を行う予定です。このほか、5Gで新たに利用が想定されている3GHz~6GHzのsub-6と呼ばれる周波数帯に対応した製品の開発も進めています。当社は、今後も市場・お客さまのニーズに応じた小型製品の開発を行い、電子回路の省スペース化、高密度回路設計に貢献してまいります。

その他技術情報

第4世代移動通信システム(4G)による通信環境下において、スマートフォンが対応すべき周波数帯が多様化したほか、キャリアアグリゲーション*8やMIMO*9といった通信品質を高める無線技術が発展しました。5Gの本格的な普及にともない、送受信の役割を担うRF回路がさらに複雑化することが予想されています。
本製品は、デュプレクサまたはフィルタの単機能を搭載したディスクリートデバイスです。多数の周波数帯への対応が要求されるグローバル対応のプレミアムモデルのスマートフォンでは、個々の周波数帯に対応する複数種類のSAWデバイスを小型モジュールにパッケージングする形で採用されています。当社は本製品の開発に用いられた独自の設計・小型化技術を活用し、モジュールの小型化も推進してまいります。
*8 複数の搬送波を同時に用いて、通信速度を向上させる技術。
*9 Multiple-Input and Multiple-Outputの略。複数の送受信アンテナを用いて、通信速度の向上を実現する技術。



ムラタについて

村田製作所はセラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーです。独自に開発、蓄積している材料開発、プロセス開発、商品設計、生産技術、それらをサポートするソフトウェアや分析・評価などの技術基盤で独創的な製品を創出し、エレクトロニクス社会の発展に貢献していきます。
詳細はこちらのページをご覧ください。www.murata.com/ja-jp

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