水晶振動子の発振周波数が公称値からずれる主な原因として、以下の3つが考えられます。
- ドライブレベルが仕様値を超えている
- 負荷容量不一致
- 異常発振
これらは回路条件と振動子仕様の不整合により発生し、回路定数や部品選定の適正化によって改善が可能です。
発振周波数がずれる場合は、以下の順に確認すると原因の切り分けがしやすくなります。
- 発振周波数を測定し、公称周波数との差を確認する
- ドライブレベルが仕様範囲内かを確認する
- 回路の負荷容量と振動子仕様の負荷容量が一致しているかを確認する
- 発振波形を確認し、異常発振の有無を確認する
<原因①ドライブレベルが仕様値を超えている>
振動子で消費される電力が規定値より大きい状態です。
ドライブレベルが高すぎると発振周波数が高めに変化したり、等価直列抵抗(R1)が増加することで周波数ずれが発生する場合があります。
主な対策
- 制限抵抗の値を大きくすることによりドライブレベルを低下させることが推奨されます。この場合、同時に発振余裕度も低下しますので、発振余裕度が民生用途では5倍、車載用途では10倍を下回らないよう注意が必要です。また発振振幅も低下しますので、極端に振幅が小さくならないよう注意が必要です。
- 負荷容量を小さく調整することで発振回路のインピーダンスを高くし、回路電流を低減することが推奨されます。この場合、発振回路の負荷容量が小さくなるために発振周波数は高くなります。負荷容量を変更した後での発振周波数が所望の周波数範囲内に収まっているか確認することをお奨めします。
- ドライブレベルの測定方法については『ドライブレベル 測定方法の基礎知識』を参照下さい。
<原因②回路側負荷容量と振動子の仕様値との不一致>
発振回路の実際の負荷容量が振動子仕様書の値と異なる状態です。
振動子は指定負荷容量で周波数が規定されているため、回路容量の不一致により発振周波数がずれます。
主な対策
- 負荷容量を変更し、実際の発振周波数を調整します。実際の発振周波数を低くしたい場合は容量の値を大きく、逆の場合は小さくします。負荷容量を大きくすると発振余裕度が低下しますので、注意が必要です。また発振回路インピーダンスの低下により発振振幅が小さくなる場合がありますので、この点にも注意が必要です。
- 負荷容量の異なる振動子へ変更することが推奨されます。仕様書で規定されています負荷容量よりも大きい容量の振動子に変更すると発振周波数は高く、逆に小さい容量の振動子に変更すると発振周波数は低くなります。
例) 発振周波数を30MHzとしようと思い、公称周波数30MHz、負荷容量6pFの振動子を搭載した。すると実際の発振周波数は30MHzより30ppm低かった。この結果から、発振回路の実際の負荷容量は6pFよりも大きいと考え、負荷容量8pFの振動子に変更した。その結果、発振周波数は30MHzに対して約5ppm低い程度になり、発振周波数ずれを改善できた。
<原因③発振が正常でない(異常発振)>
振動子が本来の共振周波数以外で発振している状態です。
マイコンのインバータ特性や回路条件により、水晶振動子の基本波以外のモードや回路起因の発振が生じ、発振周波数が規定値からずれる場合があります。
主な対策
- マイコンのインバータがアンバッファタイプであるか確認します。マイコンに内蔵されているインバータがアンバッファタイプではないなど、マイコンの特性によっては、発振しているにも関わらず振動子の公称周波数付近で発振しない場合があります。
- 必要に応じて適切なインバータ構成のマイコンへ変更します。根本的にはマイコンに内蔵されているインバータをアンバッファタイプに変更するなど、マイコンでの対処が必要になります。
- 制限抵抗や負荷容量を調整し、異常発振の発生頻度を低減する場合もあります。