チップ積層セラミックコンデンサの静電容量測定の注意事項

静電容量測定の注意事項


チップ積層セラミックコンデンサ(以下、MLCCと呼ぶ)の静電容量測定を行って、次のようなことが起こったことはありませんか?

問題を解決しましょう!!

※クリックで各項目に移動します。


温度補償用(低容量)のMLCCの静電容量を測定した際、
測定値が公称値より、大きくなった、小さくなった。



       
高誘電率系(大容量)のMLCCの静電容量を測定した際、
測定値が公称値より、小さくなった。


 
       
※静電容量の測定条件に関しては、詳細スペックシートをご確認ください。

※静電容量測定全般に関しては、別資料『コンデンサの基礎【第7回】 セラミックコンデンサの静電容量測定法』を参照ください。


温度補償用(低容量)測定の注意事項

     
温度補償用(低容量)のMLCCの静電容量を測定した際、
測定値が公称値より、大きくなった、小さくなった。



     

以下の順序で説明していきます。

1)テストフィクスチャのゼロ調整とは?

2)OPEN補正時の端子間距離と静電容量測定値

3)静電容量の測定値が変化した理由

4)測定時の注意事項

↑ TOPへ

1)テストフィクスチャのゼロ補正とは?


①下図のようにしてMLCCを測定しますが、

・測定ケーブルには直列抵抗や直列インダクタンス
・MLCCを挟み込む測定端子には浮遊容量

が発生し、実際のMLCCの静電容量を精度良く測定することができません。
そのために、測定したいMLCCのない状態でそれぞれのパラメータをキャンセルする行為を『テストフィクスチャのゼロ補正』と呼びます。
測定前にOPEN補正、SHORT補正をする行為がこれにあたります。

②OPEN補正はMLCCを挟み込む測定端子の浮遊容量を、SHORT補正は測定ケーブルの直列抵抗や直列インダクタンスをキャンセルします。

③このOPEN補正、SHORT補正の後に、MLCCを測定することにより精度を確保することができます。


↑ TOPへ


2)OPEN調整時の端子間距離と静電容量測定値


1pFのMLCCの静電容量測定において、OPEN補正時のテストフィクスチャの端子間距離を変えて測定を行いました。
結果、OPEN補正時の端子間距離が測定するMLCCのL寸法より大きいと静電容量は大きくなり、小さいと静電容量は小さくなります。

■測定条件
試料 :GRM0334C1H1R0B
測定器 :HP4278A
測定治具:HP TEST FIXTURE16034E(挟み込み型)
条件 :1±0.1MHz/1±0.2Vrms

↑ TOPへ


3)静電容量の測定値が変化した理由


■OPEN補正時の端子間距離によって、なぜ静電容量が変化するのか?

    金属と金属の間に絶縁体があると静電容量が発生します。
空気も絶縁体なので測定端子間に静電容量が発生します。

静電容量は、金属と金属の距離が短い程大きくなります。
したがって、端子間距離が短い程、端子間に発生する静電容量は大きくなります。
 
     

■OPEN補正端子間距離と静電容量測定結果



↑ TOPへ


4)測定時の注意事項

<OPEN補正時のポイント>

OPEN補正時のフィクスチャ端子間距離は、測定するチップのL寸法と同一にしてください。


フィクスチャの端子間距離が長い状態でOPEN補正すると、補正時のフィクスチャの浮遊容量が、実際の測定時の静電容量より小さくなります。 
 
 C=ε・S/d ・・・・・ 式① にてdが大きくなるため

C :浮遊容量(静電容量)
ε:誘電率
S :電極面積
d :端子間距離(電極間距離)
   

フィクスチャの端子間距離が測定するMLCC寸法と異なる状態でゼロ補正を行うと、フィクスチャ自身の浮遊容量が正確にゼロに補正されません。

OPEN補正時の端子間距離をMLCCL寸法より小さくすると、フィクスチャの浮遊容量が実際より大きい状態でゼロ補正されますので、補正後の測定結果は小さくなります。

逆に端子間距離をMLCCL寸法より大きくすると、補正後の測定結果は大きくなります。
OPEN補正時の端子間距離のばらつきは、挟み込み型フィクスチャ(例えばAgilent16034)を使用する場合より、ピンセット型フィクスチャ(例えばAgilent16334)を使用する方が大きくなります。

ピンセット型フィクスチャは、挟み込み型フィクスチャと比較して、測定端子先端の面積(式①のS)が大きいため、端子間距離の差異に伴う静電容量測定値の変動が大きくなります。


↑ TOPへ


高誘電率系(大容量)測定の注意事項


高誘電率系(大容量)のMLCCの静電容量を測定した際、
測定値が公称値より、小さくなった。


     

以下の順序で説明していきます。

1)大容量MLCC測定の事例

2)静電容量の測定値が低下する理由

3)測定時の注意事項

↑ TOPへ


1)大容量MLCC測定の事例


大容量と大容量でないMLCCをALC (Automatic Level Control )をON/OFFの
状態で静電容量測定を行いました。その結果を以下に示します。


■測定条件

試料 :GRM188R60J106K/ GRM188B11H103K

測定器 :Agilent E4980A

測定治具:Agilent TEST FIXTURE16334(ピンセット型)

条件 :GRM188R60J106K ;1±0.1KHz/0.5±0.1Vrms

    GRM188B11H103K; 1±0.1KHz/1.0±0.2Vrms

⇒大容量の静電容量測定において、ALCをOFFした場合のみALCをONにした場合に比べ測定結果が小さくなりました。


■静電容量測定結果


↑ TOPへ

2)静電容量の測定値が低下する理由


それぞれの場合の測定電圧をテスターで測定した結果を示します。
大容量MLCC測定において、ALCがOFFの場合は測定電圧が規定の条件を満たしていません。


■測定条件:1±0.1KHz/0.5±0.1Vrms

■測定条件:1±0.1KHz/1.0±0.2Vrms


■静電容量が大きくなると、なぜ測定電圧Vcは小さくなる?
     
静電容量Cは、
 

で表せます。

静電容量Cが大きくなると
Zcが小さくなります。
また、測定回路では、測定電圧Vcは

 
で表せます。
したがって、Zcが低くなると測定電圧Vcが小さくなります。

   
   
 
■測定電圧Vcが小さくなると、なぜ静電容量の測定結果は小さくなる?
     

MLCCは周囲温度、印加される電圧によって静電容量が変化します。


測定条件20℃、1KHzにおけるMLCCのAC 電圧特性を右図に示します。

AC電圧が変化すると静電容量も変化し、0.5Vrmsより印加される電圧が小さくなると静電容量も小さくなります。

   


↑ TOPへ

3)測定時の注意事項


■静電容量が低く出た場合は、テスターを用いて測定電圧を測定して下さい。


もし、測定電圧が規定の測定電圧よりも小さくなっていれば、


①ALCをONにする

②規定の測定電圧が発生する測定器に交換するを行ってください。


測定電圧の測定は、下の写真のようにMLCC測定中のそれぞれの測定端子にテスターを当てて測定してください。



↑ TOPへ

高誘電率系の静電容量のエージングについて


高誘電率系の磁器コンデンサ(代表的なものとして、BaTiO3を主成分とし、温度特性がB、E、F 特性のものなど)は、静電容量が時間経過と共に低下する性質を持っています。

この性質のことを静電容量のエージング(Aging)と呼んでいます。

BaTiO3磁器は図①に示すようにペロブスカイト(perovskite)形の結晶構造を持ちます。キュリー点以上の温度では立方晶系(cubic)です。

   
   
図① BaTiO3磁器の結晶構造
図② 温度による結晶構造および比誘電率の変化
(純粋なBaTiO3磁器の場合)
   


BaTiO3系磁器をキュリー点以上に加熱すると、結晶構造が正方晶系から立方晶系へ相転移し、キュリー点以下に冷却すると、キュリー点近くで立方晶系から正方晶系へ相転移します。


なお、結晶の微細構造はキュリー点以上に加熱することで初めの状態に戻り、再びエージングを始めます。


エージングにより減少した静電容量は、御社の取り付け工程での加熱により回復します。


[補充資料]

高誘電率系積層磁器コンデンサの静電容量は、125℃以上の熱処理から24 時間後の値を基準として、対数時間グラフ上でほぼ直線的に低下します。弊社製品の静電容量のエージング特性の代表例を下に示しますので、ご参照下さい。


↑ TOPへ

補足:GRM188B11H103K測定比較


↑ TOPへ