セラミックコンデンサ(キャパシタ)問題解決事例
インバータ回路の電解コンデンサ置換え (動画)

ブラシレスモータを駆動するインバータ入力部の電解コンデンサをセラミックコンデンサに置換えたときに性能がどう変化するかをデモでご覧いただけます。
容量が小さくなるのに、なぜ置換えが可能なのか、その理由も詳しく解説します。

(09:55)

概要

インバータ回路とは直流電力から交流電力に逆変換する電源回路、またはその回路を持つ電力変換装置のことです。
制御装置と組み合わせることなどにより、省エネルギー効果をもたらすことが可能なため、近年利用分野が拡大しています。
ご紹介するデモは、ブラシレスモータ駆動用の評価ボードに搭載されているアルミ電解コンデンサを積層セラミックコンデンサに置換えた時の、コンデンサ電極間の電圧波形を比較します。
積層セラミックコンデンサへ置換えることにより、実装面積の削減だけでなく、電圧変動の抑制も期待できます。

デモの説明

評価に使用した評価ボードを図1に示します。
Texas Instruments社製のMotor Control Reference Design Kitを使用しました。

図2に回路図を示します。
図の黄色く塗った部分のインバータ入力部のコンデンサにアルミ電解コンデンサが使用されていますが、これを積層セラミックコンデンサに置換えます。

使用したコンデンサを図3に示します。
左側がオリジナルのアルミ電解コンデンサ、右側が置換えた後の積層セラミックコンデンサです。

置換前: φ16mm×16.5mm/470µF/63Vのアルミ電解コンデンサ
置換後: 3225サイズ/10µF/50Vの積層セラミックコンデンサ (GCM32EC71H106KA01L) 3個

図1 Texas Instruments社製: Motor Control Reference Design Kit 図1 Texas Instruments社製: Motor Control Reference Design Kit
図2 回路図 図2 回路図
図3 オリジナルのアルミ電解コンデンサと置換えた積層セラミックコンデンサ 図3 オリジナルのアルミ電解コンデンサと置換えた積層セラミックコンデンサ

評価結果

実際にブラシレスモーターを駆動した状態でコンデンサ両電極間の電圧を測定した結果を図4に示します。
電圧変動幅が144mV低減されます。

図4 コンデンサ電極間の電圧測定結果 図4 コンデンサ電極間の電圧測定結果

なぜ電圧変動幅が小さくなるか?

なぜ電圧変動幅が小さくなるかを考察するにあたり、電源ラインに重畳しているノイズ成分を調べたところ、以下のノイズ成分が重畳していることが分かりました。

  • 20kHzのリップルノイズ
  • 150kHzのスパイクノイズ (DC-DCコンバータのスイッチングノイズ)
  • 2MHzの20kHz間隔で発生するリンギングノイズ

ここで、各コンデンサのインピーダンス特性を図5に示します。
周波数によってインピーダンスが異なり、20kHzでは積層セラミックコンデンサの方が高いですが、2MHzでは低いことが分かります。
このことは、積層セラミックコンデンサは20kHzのノイズは落としきれませんが、2MHzのノイズは有効に落とせることを意味し、トータルの電圧変動としては積層セラミックコンデンサの方が小さくなり、電圧変動抑制効果が大きかったと言えます。

図5 各コンデンサのインピーダンス特性 図5 各コンデンサのインピーダンス特性

まとめ

以上のように、積層セラミックコンデンサは必ずしも同じ容量で置換える必要はなく、ノイズを落とさなければならない周波数によっては小さい容量でも置換えが可能です。
たとえ、性能が同等であったとしても、小型化のメリットや信頼性が高くなるメリットは、車載用のブラシレスモーター駆動用途などではその効果は大きいと言えます。