LCフィルタLCフィルタの基礎知識

LCフィルタとは?

高周波フィルタとは?

フィルタ(Filter)とは、与えられたものから欲しいモノだけ取り出し、不要なモノを除去するものです。またその作用をフィルタリングと呼びます。
高周波とは、電波、音波など波形の周波数が高いものを指します。
高周波フィルタとは、必要な周波数信号を通し、不必要な周波数信号を遮断するものです。このようなフィルタをRFフィルタと呼ぶこともあります。

図1:高周波フィルタのフィルタリング例 図1:高周波フィルタのフィルタリング例

LCフィルタとは?

「LCフィルタ」は、インダクタ(L)とコンデンサ(C)が組みあわさった部品で、不必要な周波数信号を遮断したり、必要な周波数信号だけ通過させたりすることができます。
ムラタのLCフィルタは、300MHz~40GHzまでの幅広い帯域の周波数に対応しています。

図:LCフィルタ
図2:コンデンサ・インダクタ高周波特性 図2:コンデンサ・インダクタ高周波特性

LCフィルタの構造

温度係数の小さいLTCC(低温同時焼成セラミックス)と銅の印刷コイルにより、多層構造のLCフィルタになっています。LとCを多層構造にしたことで、小型化を実現しています。
フィルタの波形の変更は、コイルパターンやコンデンサパターンを差し替えることにより、実現が可能です。

図3:LCフィルタ構造図 図3:LCフィルタ構造図

LTCCとは?

LTCCとはLow Temperature Co-fired Ceramicsの頭文字を取った略語であり、低温同時焼成セラミックスを指します。
LTCCの特徴は、通常1500°C以上の高温で焼成されるセラミックスの材料にガラス成分を混ぜることで、焼成温度を900°C程度に下げられることです。これにより、内蔵する配線に導体抵抗の低い銅、銀を使うことを可能としました。

ムラタのLTCCは内部電極に銅を使うことにより、イオンマイグレーションの発生を抑え、ロスが少なく電気的特性にすぐれた「LCフィルタ」を商品化しております。

  • イオンマイグレーション:湿度が高い環境下において、電圧を印加すると、配線パターンの陽極の金属がイオン化して対向する陰極に移動し、再び陰極で金属として生成される現象。これによりショート不良につながる恐れがある。

LCフィルタを使用するメリット

下記はLPWA(Low Power Aria Network)の回路図例です。
左図は10pcsインダクタ(L)とコンデンサ(C)を使って、868MHzのローパスフィルタ+バルンを構成しています。
それをLCフィルタを採用することによって、1部品で置き換えた例が右図です。LCフィルタの採用により下記4つのメリットが生まれました。

  • 設計が容易
  • 部品バラツキ低減
  • 設計スペース削減
  • 部品点数の低減
図4:LPWA(Low Power Aria Network)の回路図例 図4:LPWA(Low Power Aria Network)の回路図例

LCフィルタの種類

LCフィルタは取り出す周波数の違いによって4種類に大別されます。

ローパス・フィルタ:Low Pass Filter(略称:LPF)

低域(Low)側の周波数のみ取り出すフィルタ。遮断周波数の低い周波数を通過させてるフィルタなのでローパス・フィルタと呼ばれています。

図:ローパス・フィルタ

ハイパス・フィルタ:High Pass Filter(略称:HPF)

高域(High)側の周波数のみ取り出すフィルタ。遮断周波数の高い周波数を通過させるフィルタなのでハイパス・フィルタと呼ばれています。

図:ハイパス・フィルタ

バンドパス・フィルタ:Band Pass Filter(略称:BPF)

特定の周波数範囲のみ取り出すフィルタ。設定した周波数範囲のみ通過させるフィルタなのでバンドパス・フィルタと呼ばれています。

図:バンドパス・フィルタ

バンドエリミネーション・フィルタ:Band Elimination Filter(略称:BEF)

特定の周波数範囲のみ遮断させるフィルタなのでバンドエリミネーション・フィルタと呼ばれています。

図:バンドエリミネーション・フィルタ

LCフィルタの用語説明

LCフィルタを使用する上でよく使われる用語について説明します。

挿入損失:Insertion Loss

挿入損失は、英語でいうとInsertion Loss(インサーションロス)であり、省略するとILです。
ILは、通過させたい周波数帯域の信号が、製品を通過する際に損失する量であり、単位はdBです。ILが良いと、フィルターのロスが少ない、もしくはILが低いといわれます。ILが悪いと、通したい信号がロスしてしまい、信号が通過できません。
そのため、ILの良い特性を持つ製品が優れているといえます。

減衰量:Attenuation

減衰量は、英語でいうとAttenuation(アッテネーション)であり、省略するとATTです。
アッテネーションは、減衰させたい周波数帯域の信号が、製品を通過する際に減衰する量であり、単位はdBです。アッテネーションが良いと、フィルターの減衰量が高い、もしくはアッテネーションが大きいといわれます。アッテネーションが悪いと、通したくない信号であるノイズなどが通過してしまいます。
ILを重視した設計をした場合、アッテネーションの特性が悪くなる傾向があるので、フィルター開発者はILとアッテネーションの特性の双方のバランスを見ながら開発をしています。

反射特性:Return Loss

反射特性は、英語でいうとReturn Loss(リターンロス)であり、省略するとRLです。
Return Lossは、信号を製品に入力する際に反射する信号の量のことであり、単位はdBです。Return Lossが良いと、通過させたい信号がフィルターによって反射する量が少ない、つまり、反射されずフィルターを通過する信号が多いということになります。
Return LossはILに関係している特性であり、ILが良いとReturn Lossが良い傾向にあります。

通過帯域幅:Band Width

通過帯域幅は、英語でいうとBand Width(バンドウィズ)であり、省略するとBWです。
通過帯域幅は、信号を通過させる周波数帯域のことであり、単位はHzです。1Hzの千倍がkHz、百万倍がMHz、十億倍がGHzになります。
1Hzというのは、交流信号が1秒間に1回、プラスとマイナスが入れ替わる波を示します。1MHzは1秒間に百万回の波ということになります。

図5:LCフィルタ波形 用語説明 図5:LCフィルタ波形 用語説明

ムラタのLCフィルタの特徴

ムラタのLCフィルタは、CC Co-fire(CCコファイア)技術を採用しております。
CC Co-fireとは、複数のセラミック材料(最大3種類)を一緒に焼結することにより、高性能のフィルタ特性を実現する技術です。
高イプシロン(ε)の誘電体材料は、コンデンサ層に使われ、低イプシロン(ε)の誘電体材料はインダクタ層に使われます。この技術は、小型化と低挿入損失を実現でき、更に高機能化にも応えています。
また、低背化も実現でき、モジュール内蔵部品として最適な製品開発にも役立っております。

図:CC Co-fire
図:inductor