3. NFMシリーズの7つの利点
NFMシリーズは、下図の左側に示す4つの効果を組み合わせて大きな挿入損失を実現しています。
またこの部品には、ノイズ対策に用いる上で有利となる、下図の右側に示す3つの利点があります。
以下の章で、これらの特長について説明します。
(1)3端子構造+貫通仕様の効果
仮にグランドが1箇所だけの3端子コンデンサ(このような電極構造の3端子コンデンサは存在しません)を作りますと、下の右図のようになります。
3端子コンデンサは、ノイズをバイパスする経路のインダクタンスの半分をノイズの経路に直列の方向に変換することのできる電極構造で、コンデンサ本体や実装ランドで発生するインダクタンスを半減する効果があります(挿入損失では6dBの効果)。
これに加え3端子コンデンサではノイズが貫通する仕様となっているので、コンデンサ本体に発生するインダクタンスも、ほぼ半減されます(約6dBの効果)。
これらの効果が足し合わさり、12dBの改善効果を得ることになります。
通常のコンデンサ
3端子コンデンサ
3端子構造でESLが半減(=6dB)、貫通仕様の効果でESLはさらに半減(=6dB)合わせて12dBの効果
<貫通仕様でインダクタンスが小さくなる仕組み>
MSL(マイクロストリップ線路)中央からviaまでの距離を半分以下にできるので、インダクタンスは1/2以下になります。
積層コンデンサの場合
NFMの場合
1608Mサイズの積層コンデンサとNFMを比較した場合、上図のようにMSL中央からviaまでの距離が半分以下になります。
さらにバイパス方向に対するコンデンサのボディの幅※は、積層コンデンサが0.8mmであるのに対し、NFMでは1.6mmと倍になり、バイパス方向のインダクタンスも若干減ります。
viaの部分のインダクタンスは変わらないのですが、上記の効果により、全体のインダクタンスは半分以下、すなわち6dB以上の改善効果が見込めます。
実際に測定してみますと、積層コンデンサと、片側のグランド電極を用いてvia1本で接続したNFMでは、このように挿入損失特性が違います。
(2)グランドが左右に2箇所ある効果
グランド2箇所の並列効果でESLは半減(=6dB)、左右の相互作用でさらに半減(=6dB)、合わせて12dBの効果。
グランドが1箇所の場合
グランドが2箇所の場合
NFMではグランド電極が左右に2箇所あるため、グランドへのバイパス経路が2系統あります。
したがって、回路的には2系統の効果によりトータルインダクタンスは半減します(6dBの効果)。
ところが実際に測定しますと、挿入損失はもっと大きく改善されています(実際には約12dBの効果)。
これは、左右に流れる電流の相互誘導効果(相互インダクタンス)により、各ESLが小さくなっているものと考えられます。
実際に測定してみますと、NFMのグランドが片側のときと両側のときで、挿入損失特性は以下のように変わります。
<左右に流れる電流の相互誘導効果とは>
NFMはグランド電極を左右に2箇所持っています。電流が部品中央部から左右に流れるときの相互誘導効果により、ESLが減少する仕組みを考えてみます。
aa'断面
コンデンサをショートとみなしたときの等価回路
左右が対称でL1=L2であり、電流も等しいとしたときの合成インダクタンスは下記のようになります。
<実際に、インダクタンスはどの程度減るんでしょうか>
コンデンサの部分を、下図のように円筒状の導体であるとモデル化して、インダクタンスを計算してみました。
半径が1mmの円筒型の配線をギャップゼロで突き合わせて逆向きの電流を流したときの、片側の配線の外部インダクタンスの計算結果は上図のようになります。配線の長さが直径よりも短い領域では相互インダクタンスが大きくなり、総合インダクタンス(LNFM+Land)が小さくなる傾向があります。
<インダクタンスの減少効果を挿入損失に当てはめてみますと>
NFM18HCを想定した長さ0.8mmでは8dB程度、挿入損失(50Ω換算)が大きくなると言う結果になります。
(半径1mmの線を、間隔0mmで突き合わせた場合)
前ページのインダクタンスの削減効果を、挿入損失の改善効果で表しますと、上図のようになります。
線の長さが1mm以下など、極端に「太く短い」線の場合に、左右に流れる電流の相互誘導効果によるインダクタンス削減効果が無視できなくなります。
1608サイズのNFMでは8dB程度の効果が表れてもおかしくないのですが、実際の部品の外形は円筒状ではないこと、実際の基板ではviaのインダクタンスなどの、この部分以外のインダクタンスがあるなどの影響により、今回の測定結果では6dB程度(11ページの12dBのうちの半分)の効果にとどまったものと思われます。
<左右に電流を流す効果は、積層コンデンサでも少し表れます>
コンデンサが2個並列になるだけですと、6dBの違いになるはず※ですが、この実験のように線路の両側に実装(以下、対応と言う)した場合では、6dBではなく8dB変化しています。
- ※コンデンサが2個並列(横並び)になると、実際には相互誘導効果が逆に働きますので、そのような実装の場合は、挿入損失の差分は6dBより若干小さくなる場合があります。
3端子コンデンサを非貫通で使用する場合は、部品内部から電流を流す効果を得ることができますので、積層コンデンサを2個対向にするよりもさらに効果が大きくなります。
ただし、3端子コンデンサを貫通で使用するときと比較しますと、効果は小さくなります。これは貫通仕様の場合は電流が全て3端子コンデンサの内部を通過するためです。
積層コンデンサを2個対向にするよりも、3端子コンデンサを非貫通で使用しますと、挿入損失が約3dB大きくなりました。
3端子コンデンサを非貫通で使用するよりも、3端子コンデンサを貫通で使用しますと、挿入損失が約10dB大きくなりました。
(3)部品真下にグランド用viaをおける効果
部品の左右にviaを設けた場合
部品真下にviaを設けた場合
NFMの左右にグランドのviaを設ける代わりに、真下に設けた場合は、左右の電流の相互誘導効果の他に、右図のように上下の電流の相互誘導効果が発生し、この部分のESLはさらに小さくなります。
さらに、部品からviaまでのパターンのインダクタンスも無くすことができます。
このようにプリント基板より上の部分のインダクタンスは小さくなるのですが、反面、viaの数が半分になるので、viaのインダクタンスは2倍になります。viaの長さによっては上記の効果と相殺される可能性があります。
<測定結果>
部品の左右にviaを設けた場合と部品真下にviaを設けた場合の挿入損失の違いを見ました。
この場合は、部品真下にviaを設けた場合の方が、大きな挿入損失が得られました。
(4)グランド用viaを複数用いる効果
<測定結果>
さらに、推奨ランドと部品の左右にviaを設けた場合、部品真下にviaを設けた場合の挿入損失の違いを見ました。
この場合は、推奨ランドで最も大きな挿入損失が得られました。
NFM18HCの場合は最終的にviaの数を3個(推奨ランド)とすることで、大きな挿入損失を得ています。
NFMシリーズではこのように各種の効果を積み重ねることにより、積層コンデンサに比べて極めて大きな挿入損失を実現しています。
(5)電源などの低インピーダンス回路でも優れた効果
<MPUの低電圧化に伴い、電源インピーダンスが低下している>
このため、低インピーダンス回路におけるノイズ除去効果の必要性が高まっています。
電源インピーダンス計算の例
(Bulk Capacitorの静電容量設計時のインピーダンス計算から)
参考文献 : Ron Schmitt 黒田忠広 監訳「LSI技術者のための親切な電磁気学」p.283 丸善株式会社 2005
LSIの電源回路では電源インピーダンスを1Ω以下の小さな値に抑える必要があります。このような低インピーダンス回路では、積層コンデンサでは十分大きなノイズ除去効果を発揮しにくいことが考えられます。
<積層コンデンサを低インピーダンス回路で使ったときの挿入損失>
先に示した積層コンデンサの挿入損失特性の測定結果から、入出力インピーダンスを変換する計算をしますと、上図のようになります。
0.5Ωのような低いインピーダンスで使用する場合は、積層コンデンサは効果がほとんどない周波数が表れる(100~300MHz付近)ことがわかります。
このため、数10個のコンデンサを並べて使ったり、静電容量を変えた(共振周波数の違う)コンデンサを並べて使う必要が出てきます。
<NFMを低インピーダンス回路で使った場合の計算結果>
(6)電源プレーンを拡散する電流も絞り込んで確実に除去
<多層基板では電源プレーン上を拡散するノイズが問題>
BGAやPGAのLSIに電源プレーンを用いて電力を供給する場合、電源端子に発生したノイズは多数のデカップリングコンデンサを用いても拡散してしまいます。これは、電源プレーンではインピーダンスが極めて低いので、コンデンサのノイズ除去効果が小さいこと、さらに上図のように拡散してコンデンサを配置する場合には、コンデンサのピッチを十分に小さくすることが難しく、コンデンサの隙間を縫ってノイズが拡散するためと考えられます。
一方、NFMでは電流を部品内部に強制的に絞り込むので電源プレーン上を拡散するノイズの除去が可能です。
電源プレーンに対し、上図のようにNFMを使用しますと、電源端子に出入りする電流は必ずNFMの内部を通りますので、確実にノイズ除去ができます。LSI下面の多数のコンデンサも原則として不要になります。
なお、NFMの装着位置はこの図ではLSIの裏面で記載していますが、表面でも問題ありません。できるだけグランドプレーン側に取り付けてご使用ください。
<実験による確認>
主に電源ケーブルからノイズが放射されている条件で、積層コンデンサと3端子コンデンサのノイズ除去効果の比較を行いました。
16MHzで動作しているICを、多層基板(FR4/4層基板)で動作させたときの放射ノイズを測定しました。
<ノイズ測定方法>
ノイズ測定は、下記の2種類で実施しています。また評価した基板は、下記3種類となります。
- 伝導ノイズ(CISPR25電圧法準拠)測定
- 電源ラインを伝導するノーマルモードノイズのみの状態でのノイズ除去効果の指標を示すデータ
- 電源ラインの入出力部は50Ωとは異なる、GNDはほぼ理想状態
- 放射ノイズ(CISPR25 ALSE法準拠)測定
- 電源ケーブルから放射するノイズ(ノーマル/コモンモードノイズ混在状態)のノイズ除去効果を示すデータ
- 電源ラインの入出力部は50Ωとは異なる、GNDは実機と同程度の状態
CISPR25電圧法※に準拠して測定をしています。
評価基板をGNDプレーンを用いてGND強化した状態にしています。
電源ラインのみ測定/GNDには終端器を接続しています。
- ※CISPR25電圧法は、上限周波数が108MHzまでですが、今回は1000MHzまで延長して測定を実施しています。
EMIレシーバ(N9038、Keysight)
測定条件
測定周波数 : 30MHz~1000MHz
RBW : 120kHz、VBW : 300kHz
ATT : 0dB
Pre Amp : 30dB(310N Sonoma)
積層コンデンサを電源プレーン上に拡散配置した場合(0.22uF 4個)に比べ、NFMを使用した場合は、周波数範囲によっては20dB以上ノイズ除去効果が大きくなる結果となりました。
(7)パターン設計の優劣によらずノイズ除去効果が安定
コンデンサによるノイズ除去は、接続するパターンの形状で効果が大きく変わります。
よく知られているように、ノイズの経路からコンデンサまで、コンデンサからviaまで接続するパターンのインダクタンスにより、コンデンサの挿入損失は大きく変化します。したがって、コンデンサを接続するパターンを非常に注意深く設計する必要があります。
<パターンに発生するインダクタンスの大まかな見積り>
マイクロストリップラインの単位長さ当たりのインダクタンス
1uFの積層コンデンサに接続する配線の長さに応じた挿入損失の変化
(ここでの長さはコンデンサに接続する配線長、左のグラフのw=0.5mmのインダクタンスを用いて算出しています。)
10mm程度の配線を接続すると、20dB程度挿入損失が小さくなる可能性があります。
NFMでは部品直下にグランドviaを設けることができれば、大きな性能変化はありません。
NFMでは推奨パターンを使うことで、グランドに接続するためのインダクタンスを安定して小さくすることができます。なお、viaのインダクタンスを小さくするために、グランドプレーンまでの距離(基板の層厚)を小さくすることをお勧めします。
NFM18HCの場合は最終的にviaの数を3個(推奨ランド)とすることで、大きな挿入損失を得ています。
NFMシリーズではこのように各種の効果を積み重ねることにより、積層コンデンサに比べて極めて大きな挿入損失を実現しています。
NFM真下にviaを設けられない場合は、両側のviaを増やしていただくことで挿入損失を大きくすることができます。
この場合、できるだけ部品に近い場所に設けることと、両側同じvia数にすることを推奨させていただきます。