導電性高分子アルミ電解コンデンサ故障・寿命について

Polymer Al Capacitor

主な故障モード

ECASシリーズの故障モードは、エージングによる「オープンモード」が主体です(1)
弊社工程で十分なデバッキングとスクリーニングを実施しているため、基本的に故障発生の可能性が低く、特性は安定していますが、故障発生の可能性はゼロではありません。また、許容以上の負荷がかかるなど過酷な条件下では、ショートモードが発生する可能性があります(2)。

  • (1)磨耗故障 : 静電容量の低下によるオープンモード

    高温環境下で電解質(高分子)の劣化が進行して静電容量が規格値から外れた状態になり、最終的にはオープンモードに至ります。これがECASシリーズの寿命にあたります。
    ECASシリーズは導電性高分子を使用しているため、ドライアップ故障が発生する電解液タイプの従来型電解コンデンサよりも寿命が長いという特徴があり、2000年の事業化以降、多くのお客様に問題なくご使用いただいている実績があります。

  • (2)偶発故障 : 漏れ電流が大きくなることによるショートモード

    回路上で許容以上の負荷(熱的ストレス/電気的ストレス/機械的ストレス)が突発的に掛かることで、ごく稀に誘電体酸化皮膜の絶縁破壊を引き起こしショートモードに至ります。

市場での故障モードについて

市場における故障モードは主にオープンモードです。

摩耗故障の推定寿命

導電性高分子アルミ電解コンデンサは、周囲の温度や湿度などの使用条件によりゆっくりと劣化します。
具体的には、内部構成部材である酸化アルミニウム(誘電体)、および導電性高分子、カーボンペーストなどの有機成分の電気化学反応によって、静電容量の減少、ESRの増加となって現れます。

図1 静電容量とESRのエージング劣化による変化

エージングによる静電容量の減少とESRの増加は、模式図的には下図のように、電気化学反応にて生じた生成物により電極の活性面積減少や層間の接触面積減少によって引き起こされます。

図2 時間と活性表面減少の関係(モデル)

このように、一定数ESRや静電容量が劣化した状態をコンデンサの寿命と定義すると、その寿命に達するまでの時間の推定も可能です。
温度依存性については反応速度論すなわちアレニウス則に従い、電圧依存性についてはアレニウス則から拡大したアイリング則に基づきます。

ムラタでは、この信頼性ロジックに基づいてオリジナルの推定寿命計算シミュレーションツールをご提供しています。
このシミュレーションによって実際の使用環境下における静電容量/ESRの劣化度合いを予測し、設計に反映していただくことが可能です。

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