EMI除去フィルタ(EMC・ノイズ対策)ノイズ対策 基礎講座【第2部】
デジタル回路におけるノイズ対策部品の使い分け

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第1回

デジタル信号ラインにおけるノイズ対策

1-1. はじめに

 はるか昔のわたしの学生時代になりますが、PCの横でFMラジオを聴いていると雑音が入り、不便だなと感じていました。PCからの放射雑音がFMラジオに入り妨害を与えていたのです。そのとき、理由は分かりませんでしたし、まさか会社に入ってからこの問題に立ち向かうことになるとは夢にも思っていませんでした。実際に仕事として取り組んでみると、このノイズ対策がなかなか難しく数ヶ月かかることもありました。その主な理由は、以下の通りでした。

  • ①どこでノイズが発生(ノイズ源)していて、どのように伝導しているかが分からない
  • ②的確なノイズ対策法が分かりにくい

 正しいノイズ対策法がわからないと、現在の対策箇所が間違っていて、別の箇所に手をつけないといけないのではとか、いろいろなことが頭をよぎります。あるセットで効果のあったフィルタリングなどのノイズ対策が、別のセットではだめなことも珍しいことではなく、さらに頭を悩ませました。

 そのためわたしは、行き当たりばったりではない理論的なノイズ対策法の研究が必要だと感じ、正しいフィルタ選択法の研究を行いました。その一環として、同じノイズフィルタでも回路によってノイズ対策効果が違う理由などを調べ、具体例としてまとめました。本稿では、その内容を紹介します。



1-2. デジタル信号からのノイズの発生原因と対策法

 さて、学生時代のノイズ体験の場合、PCのクロック周波数は4MHz程度でした。ところが、FM放送で使われている周波数帯は、例えば日本では76MHzからです。ノイズ源のクロック周波数が放送周波数と重ならないのにどうして、障害が発生したのでしょうか。デジタル信号は矩形波で、図Aに示したように、基本波となる正弦波とその整数倍の高調波から成り立っています。立ち上がりの鋭い矩形波には、より高次の高調波成分が含まれます。つまり、実際のデジタル信号にFM放送の帯域と重なる高調波成分があり、それがFMラジオの音声に雑音を発生させていたわけです。

【図A】デジタル信号波形の周波数成分

 そのため、信号の高調波を除去することがノイズ対策の基本となります。なお、高調波を除去すると、波形の立ち上がり/立下り時間が遅れる(波形がなまる)現象が生じます。そのため、回路の動作に支障が無い範囲で、適度に高調波を除去するフィルタを選択する必要があります。

【図B】周波数による信号とノイズの分離


1-3. 代表的なノイズフィルタとその使用例

1-3-1. 代表的なノイズフィルタ

 信号ラインに使用される代表的なフィルタとして、コンデンサ・抵抗・フェライトビーズが思い浮かぶと思います。それぞれの働きは簡単に書くと以下のようになります。

  • コンデンサ
    コンデンサは、周波数が高くなると、そのインピーダンスが低くなります。そのため、信号ラインとGND間に並列接続(シャント接続)すると、信号の高周波成分(ノイズ)がGNDへバイパスされます。
  • 抵抗
    抵抗成分がエネルギーを吸収します。
  • フェライトビーズ
    フェライトビーズはインダクタの一種です。周波数が高くなると、そのインピーダンスも高くなります。そのため、信号ラインに直列に接続(シリーズ接続)し、ノイズを吸収したり、反射させたりします。一般的なインダクタはリアクタンス成分Xが支配的ですが、フェライトビーズではエネルギーの損失が大きくなるように、抵抗成分Rが大きくなるフェライト材料を選んでいます。このため、フェライトビーズは一般的なインダクタよりもノイズを吸収する働きに優れています。なお、リアクタンス成分Xは無損失な成分です。
【図A】代表的な信号ライン用のフィルタ


コラム: フィルタの挿入損失とは

 フィルタの効果を示すのに、挿入損失特性(IL:Insertion Loss)が利用されます。これは、フィルタ取付けにより、信号がどれくらい減衰するかを示したものでMIL-STD202などで規定された方法です。ここで、注意いただきたいのは、入出力インピーダンスが50ohmで測定された値であるという点です。実際に使用する回路のインピーダンスが50ohmと異なる場合は、フィルタの効果も異なります。

フィルタの挿入損失特性

コラム: フィルタのカットオフ周波数とは

 カットオフ周波数は、①フィルタを通過する電力と②通過できない電力が拮抗する周波数です。

 つまり、出力電力が入力電力の1/2となる周波数です。W=V2/Rですから、電圧に換算すると1/√2となります。それでもあえて、カットオフ周波数はどれくらいのフィルタを選べばいいのと聞かれた場合は、基本周波数の3倍から5倍くらいと答えています。矩形波を維持するのに、3次から5次くらいの高調波を残したいためです。ただし、回路の入出力インピーダンスが50ohmでない場合、カットオフ周波数はずれますので、あくまでも目安と考える必要があります。

 参考ですが、オシロスコープのスペック上、帯域が1GHzというのは、このカットオフ周波数を示しています。つまり、1GHzの信号は、3dB減衰して観測されてしまうことを意味します。プローブによる信号の減衰もあるため、測定する周波数よりも帯域に余裕のある測定器を使用する必要があります。

フィルタのカットオフ周波数

コラム: 特性インピーダンスとは

 TVのアンテナケーブルでは特性インピーダンス75ohm、計測器だと特性インピーダンス50ohmという言葉をよく耳にすると思います。この特性インピーダンスは簡単に言うと、単位長さあたりのインピーダンスを表しています。抵抗成分による損失を無視できるとすると、①単位長さあたりのキャパシタンス(F/m)と②単位長さあたりのインダクタンス(H/m)から計算されます。計算式の分子と分母に(/m)があるため、それがキャンセルされてしまい、分かりにくくなっています。

伝送線路の特性インピーダンスとは

1-3-2. コンデンサ・抵抗・フェライトビーズの挿入損失

 コンデンサ・インダクタ・抵抗の挿入損失特性を図Aに示します。これはあくまで50ohm系で測定されたものです。インピーダンスカーブと似たような形となります。

 デジタル信号回路の等価回路の例を図Bに示します。この例では、出力抵抗が20ohm、出力端子容量が10pF、負荷容量が5pFとなっています。つまり、50ohm系ではありません。

【図A】コンデンサ・抵抗・フェライトビーズの挿入損失の例
【図B】デジタル信号の等価回路の例(IC LVC)


1-4. 代表的なフィルタの使用例

 ここで、50ohm系ではない実際のデジタル回路で、それぞれの部品を使用した場合の波形と放射雑音のノイズ対策効果の実測例を紹介します。放射雑音は、セットから3m離れたところにアンテナを立てて、測定しています。放射雑音のグラフに書かれている黒の太線は、ノイズの国際規格であるCISPR 32の限度値です。

1-4-1. コンデンサによるノイズ対策例

 まず、コンデンサを使用してノイズ対策を行った場合の結果をご紹介します。

 負荷の容量が5pFなので、取付けるコンデンサは、負荷容量よりインピーダンスを下げる必要があり、100pFをシャントに接続しました。その結果を図Bに示します。コンデンサ取付けにより、放射雑音は4dB程度減衰しています。

 コンデンサ取付けにより、信号ラインへ流れる電流が減少したかを測定した結果を図Cに示します。コンデンサより負荷側の信号ラインでは、取付け前より電流が減少していることがわかります。

 ここで気になる点は、送信ICとコンデンサ間の電流は、初期状態よりも増えていることです。ICにとっては、コンデンサ追加は負荷を増やすことになるためです。そのため、コンデンサをクロックなどの信号ラインに多用すると電力消費を増やす可能性があります。また、GNDを流れる電流も増加するので、GNDのノイズレベルを上げてしまいます。そのため、プリント基板内部の信号ライン、例えばバスラインなどにコンデンサをずらっと並べることはあまりありません。

 ただし、外部インタフェースなどの低速なラインでは消費電力増の問題は、あまり大きくありません。また。コンデンサ追加は、回路の静電気に対する耐性を上げてくれます。そのため、低速な外部インタフェース接続部へのコンデンサ追加は有効です。

【図A】評価基板
【図B】コンデンサ取付け時の放射雑音と電流スペクトラム
【図C】コンデンサ取付け時の電流スペクトラム

1-4-2. 抵抗によるノイズ対策例

 抵抗は、昔から信号ラインでノイズ対策によく使われる部品です。

 抵抗を取り付けたときの波形と放射雑音を図Bに示します。

 抵抗を取付けることにより、波形のリンギング(オーバーシュート/アンダーシュート)が低減されています。リンギングは、信号が負荷と送信側で多重反射することにより発生しています。抵抗は、この多重反射を抑制するので、リンギングが抑制されます。

 抵抗は、電流を抑制しますので、放射雑音も減少します。コンデンサのように、ICの出力電流を増やすことがないので、使いやすい部品です。

 ただし、より大きなノイズ対策効果を得るために抵抗値を大きくすると、波形のなまりが大きくなったり(信号の立ち上がり/立下り時間が長くなったり)、波高値が低くなったりする問題があります。また、電源ラインでは、供給電圧を下げてしまう問題があります。

【図A】評価基板
【図B】抵抗取付け時の波形と放射雑音

1-4-3. フェライトビーズによるノイズ対策例

 抵抗よりも信号波形のなまりを抑えつつ、より大きなノイズ除去効果を得ることを狙って開発されたノイズ対策部品がフェライトビーズです。信号帯域でのインピーダンスを低くし、ノイズ帯域でのインピーダンスを大きくしています。インダクタの一種でありますが、ノイズ成分を消費するために、抵抗成分主体となる材料(損失が大きくなる材料)を選んでいます。

 一般的にインダクタの場合、そのスペックはインダクタンス(H:ヘンリー)で表していますが、フェライトビーズの場合は、そのスペックを抵抗値(ohm)で表しています。これはダンピング抵抗から置き換えるときに、信号やノイズへの影響をイメージしやすくするためです。100MHzでのインピーダンスを示しているのは、フェライトビーズが開発された当時のデジタル機器の信号周波数が10MHz程度までであったのと、問題となるノイズ周波数が200MHz~300MHz程度であったので、その間の周波数である100MHzが目安の周波数として選ばれています。なお、最近では高周波域でのノイズが問題となることも増えていますので、100MHzに加え1GHzでのインピーダンスも規定したフェライトビーズもあります。

 フェライトビーズは、その直流抵抗を低くすることにより、電源ラインに用いても電源電圧の低下を抑えることができます。

【図A】フェライトビーズ取付け時の波形と放射雑音


1-5. 伝送線路の長さによるノイズ対策効果の違い

1-5-1. 伝送線路の長さによるフェライトビーズのノイズ対策効果の違い

 前節で示したフェライトビーズによるノイズ対策例では伝送線路長5cmの場合のデータを示していました。

 セットによりノイズ対策効果が違うことがある理由を調べるために、伝送線路が10cmと20cmの基板も用意しました。回路構成は同じで、基板外形も同じです。伝送線路長のみを変更しています。放射雑音の測定結果を図Bに示します。

 フィルタ取付け前の放射雑音は、若干変化しますが、ピークの周波数とレベルは類似していました。しかし、フェライトビーズを取付けた後のノイズ対策効果は、伝送線路長により大きな違いが認められました。放射雑音のピークであった375MHzでは、伝送線路長5cmの場合は13dB減少していましたが、伝送線路長20cmでは2dBしか減少していませんでした。

 このように、伝送線路長という回路条件の違いだけでも、フィルタの対策効果がことなることが分かります。このような要因により、あるセットでうまくいったノイズ対策が、別のセットではうまくいかないということが起きているのです。

【図A】評価基板
【図B】伝送線路長によるフェライトビーズのノイズ対策効果の違い

1-5-2. ノイズ対策効果が異なる原因の解析

 伝送線路の長さによりフェライトビーズのノイズ対策効果が変化した原因を、伝送線路上の電圧・電流分布を測定することにより調べてみました。電圧は、電圧プローブとスペクトラムアナライザにより測定しています。電流は磁界プローブとスペクトラムアナライザで測定しました。磁界プローブの測定値から実際の電流値への換算は校正基板を用意し、導出しました。

 図Bに、伝送線路長20cmの電圧分布・電流分布測定結果を示します。インピーダンスマッチングがされていないため、信号が入出力間で反射しており、電圧・電流は伝送線路の位置により異なります。周波数が高くなるほど、線路上の位置による差が大きくなる傾向がありました。

【図A】電圧・電流分布の測定方法
【図B】電圧・電流分布の測定方法(伝送線路長20cmの場合)

 伝送線路の長さによりフェライトビーズのノイズ対策効果が変化した原因を、伝送線路上の電圧・電流分布を測定することにより調べてみました。電圧は、電圧プローブとスペクトラムアナライザにより測定しています。電流は磁界プローブとスペクトラムアナライザで測定しました。磁界プローブの測定値から実際の電流値への換算は校正基板を用意し、導出しました。

 図Bに、伝送線路長20cmの電圧分布・電流分布測定結果を示します。インピーダンスマッチングがされていないため、信号が入出力間で反射しており、電圧・電流は伝送線路の位置により異なります。周波数が高くなるほど、線路上の位置による差が大きくなる傾向がありました。

1-5-3. フェライトビーズ取付けによる電流分布の変化

 この基板における放射雑音は電流性であるために、フェライトビーズ取付け前後の電流分布を比較しました。試作した評価基板では、伝送線路の位置によるフェライトビーズのノイズ対策効果の差は、特に375MHzで大きく認められましたので、この375MHzに着目しました。各伝送線路長における測定結果を図Aに示します。375MHzの電流分布は放射雑音と同様に、伝送線路の長さが短いほど減少していることが分かります。伝送線路長5cmの場合は全体的に電流が減少し、そのピーク電流は放射雑音と同様に13dB減少していました。伝送線路長20cmの場合は電流があまり減少しておらず、ピーク電流は放射雑音と同様に2dBしか減少していませんでした。

【図A】伝送線路長による電流分布変化の違い(375MHz)

1-5-4. 原因の解析

 電流分布の変化と放射雑音の変化には関係があることがわかったので、各伝送線路長におけるフェライトビーズを取付ける前の電流分布を比較しました。

 フェライトビーズ取付け位置の電流分布に着目すると、ノイズ対策効果の大きかった伝送線路長5cmや10cmの場合は大きな電流が流れていました。一方、ノイズ対策効果の小さかった伝送線路長20cmの場合は、フィルタ取付け位置の電流は極小であり、電流のピークはフィルタ取付け位置から離れた点、すなわち、やや負荷側寄りにありました。

【図A】フィルタ取り付け位置の電流値比較(フィルタ取り付け前。375MHz)
【図B】フィルタ取り付け前後の電流分布比較(伝送線路長20cm、375MHz)

 次に電圧値を電流値で除算してインピーダンスを計算しました。フィルタ取付け位置のインピーダンスは、伝送線路長5cmや10cmの場合は100ohm弱であったのに対し、伝送線路長20cmの場合は約1kohmと極端に大きい結果が得られました。フェライトビーズはインピーダンス素子であるため取付け位置のインピーダンスが小さいと大きなノイズ対策効果を得られますが、逆に取付け位置のインピーダンスが大きいと十分なノイズ対策効果を得られにくくなります。フェライトビーズのインピーダンスが166ohmであるのに対し、伝送線路長20cmの場合、フィルタ取付け位置のインピーダンスが1kohmと大きかったため十分なノイズ対策効果を得られなかったのだと思われます。

【図C】フィルタ取付け位置のインピーダンス比較(フィルタ取付け前、375MHz)
【図D】取付けたフェライトビーズのインピーダンス(BLM18AG 120ohm)

1-5-5. 伝送線路の長さによるノイズ対策効果の違い

 これまでの調査により、伝送線路の電流・電圧は線路上の位置によって異なっており、その分布は周波数によっても異なっていることが分かりました。この分布の違いがフェライトビーズのノイズ対策効果に影響を与えていることもわかりました。

 ここまでは周波数375MHzに着目していましたが、次のステップとして周波数によってノイズ対策効果がどのように変化しているか調査しました。調査にはピーク電流挿入損失を利用しました。これは図Bに示したように各々の周波数においてフィルタなしの場合の伝送線路のピーク電流からフィルタ取付け時のピーク電流を差し引いたものです。フィルタの放射雑音に対するノイズ対策効果の目安として利用できます。図Cに伝送線路長5cm、10cmと20cmの場合のピーク電流挿入損失の測定結果を示します。伝送線路の長さにより、フェライトビーズのノイズ対策効果が小さくなる周波数は異なっていることがわかります。

 一般的なC-MOSデジタル回路を想定した場合、伝送線路長5cmの場合は1GHz以下の周波数ではフェライトビーズで十分なノイズ対策効果を得られる可能性が高いことを示しています。この反対に、伝送線路長が長くなるとフェライトビーズで十分なノイズ対策効果を得られにくい周波数が顕在化する可能性が高くなります。

【図A】BLM18AGシリーズのインピーダンス
【図B】ピーク電流の導出方法
【図C】伝送線路のピーク電流の挿入損失(放射雑音の挿入損失に反応します)

1-5-6. フェライトビーズとコンデンサの組み合わせの効果

 問題となっていた375MHzではフィルタ取付け位置のインピーダンスが大きいためにフェライトビーズのノイズ対策効果が十分に得られていませんでした。このような場合、伝送線路とGND間のインピーダンスを下げることによりノイズ電流を伝送線路からGNDにバイパスさせる働きを持ったコンデンサが有効に働きます。そこで、コンデンサの活用を検討しました。

 まずフェライトビーズを取り外し、10pFと比較的小容量のコンデンサをGNDとの間に取付けました。その結果、ノイズ対策効果が得られた周波数と得られなかった周波数がありました。

 フェライトビーズは取付け位置のインピーダンスが低い場合に大きなノイズ対策効果を得られます。一方、コンデンサは取付け位置のインピーダンスが高い場合に大きなノイズ対策効果を得られます。そこで、インダクタとコンデンサを組み合わせて取付けました。この場合は広い周波数範囲で大きなノイズ対策効果が得られ、375MHzはフィルタなしの状態と比べると18dBも減少しました。このようにフェライトビーズだけでは十分なノイズ対策効果を得られない場合、コンデンサを組み合わせると大きなノイズ対策効果を得られることがわかりました。

 フェライトビーズのみの場合とコンデンサを追加した場合の波形確認も行いました。

 追加したのが10pFと比較的小容量のコンデンサであったため、25MHzという信号周波数ではコンデンサを追加してもあまり波形なまりの影響はありませんでした。

【図A】 フェライトビーズ取付け時の放射雑音(BLM18AG 120ohm)
【図B】コンデンサ取付け時の放射雑音(10pF)
【図C】フェライトビーズとコンデンサ取付け時の放射雑音と信号波形(BLM18AG 120ohm+10pF)


1-6. 信号ラインでのフィルタ選択の考え方

 ここまでは、ノイズ対策を効率的に行うために、信号ラインでフィルタをどのように選択すべきかを調べた内容を説明してきました。

 伝送線路が短い場合は、抵抗やフェライトビーズなどのインピーダンス素子でノイズ対策できる可能性が高いです。しかし、伝送線路長が長くなると、インピーダンスを高くしても、十分なノイズ対策効果を得られない可能性があります。その場合、コンデンサを組み合わせること検討してください。この対策は、ケーブル接続部では静電気(ESD)に対する耐性を強くすることも期待できます。

【図A】信号ラインにおけるフィルタ選択の考え方


Key points 第1回のまとめ

  • 部品によるデジタル回路のノイズ対策はデジタル信号の高調波を除去することで行う。
  • ノイズ対策に使用される部品は主にコンデンサ、抵抗、フェライトビーズがある。
  • 同じ対策でも、ノイズ経路のパターン長、対策部品の取り付け位置などにより、効果が異なる場合がある。
  • パターン長が長い場合、フェライトビーズとコンデンサを組み合わせた対策が効果が出やすい。

次の回へ「第2回 デジタル回路の特性を考慮したフェライトビーズの選択方法 」