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EMI除去フィルタ(EMC・ノイズ対策)ノイズ対策 基礎講座【第2部】
プリント基板のGNDがノイズに与える影響

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第5回

プリント基板のGNDがノイズに与える影響

5-1. はじめに

前回の「プリント基板のノイズの伝搬のしかた」では、三次元電磁界シミュレータを使用して、ノイズ電流や磁界の伝搬の様子を可視化しました。信号やノイズのリターン電流がGND(グラウンド)に拡散して伝搬することや、金属が磁界にさらされると誘導電流が生じ、磁界が再放射されることを紹介しました。
このように、GNDはノイズの伝搬に大きく関与しているため、GND形状がノイズに大きな影響を与えることは広く知られています。例えば、基板のGNDと金属筐体を接続するだけでも、ノイズが大きく変化します。そこで、今回は、GND設計がノイズに与える影響を可視化した結果を紹介します。


5-2. GNDのノイズへの影響

5-2-1. GND形状の影響

まず、基板のGND形状により、ノイズが変化することを示します。
信号パターンとGNDの形状を同時に見やすくするため、片面基板を使用しました。
シミュレーションで使用したモデルを図2-1に示します。

図2-1 シミュレーションモデル
(片面基板 : コプレーナ線路)

長さ100mmの信号パターンをGNDパターンで囲んでおり、両者の間に一定のギャップ(GNDギャップ)を設けたコプレーナ線路としています。GNDギャップは、5mm、10mm、20mmという異なるモデルを用意しています。他の条件は共通であり、信号パターン幅は3mm、入力・負荷ポートのインピーダンスは50Ωです。入力信号は1V(Peak)とし、周波数範囲30MHz~1GHzでスキャンしました。

このGNDギャップが放射エミッションに与える影響をシミュレーションしました。放射エミッションは、図2-2で示したように、基板を水平方向および垂直方向に回転させた際の3m離れた点の最大電界強度としています。

図2-2 放射エミッションの導出法

放射エミッションのシミュレーション結果を、図2-3に示します。GNDギャップが広くなるほど放射エミッションが強くなっています。

図2-3 GNDギャップを変更した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

次に、磁界分布もシミュレーションしました。解析面を図2-4に示します。解析面(水平)は、信号パターンとGNDパターンの誘電体側(下部)としました。これは、信号パターン近傍では表層側(上部)より、下部の方が磁界は強かったためです。解析面(垂直)は基板中央としました。解析周波数は放射エミッションが最も強かった1GHzとしています。

図2-4 磁界の解析面

磁界のシミュレーション結果を図2-5に示します。GNDギャップが大きくなると、磁界も強くなっています。このように単純なGND形状の変更だけでもノイズが変化することがわかります。

(a)磁界最大値

(b)磁界変化のアニメーション
(GNDギャップ20mm)

図2-5 GNDギャップを変更した場合の磁界シミュレーション結果(1GHz)

5-2-2. GND強化の効果

GNDパターンの形状だけでなく、基板GNDと金属筐体の接続もノイズに影響を与えることが広く知られています。その中で、ノイズ低減を目的としたこのようなGNDの変更をGND強化と呼びます。今回は、基板下に金属板(GND板)を設け、基板のGNDパターンと接続してみました。シミュレーションモデルを図2-6に示します。金属スペーサ(直径6mm、長さ6.6mm)を使用して接続しました。

図2-6 GND板によるGND強化のシミュレーションモデル

図2-7は、GND強化による放射エミッションの変化を示しています。基板GNDとGND板の接続により、放射エミッションが改善されていることがわかります。

図2-7 GND板によるGND強化した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

このようなGND強化がノイズ低減に効果的な理由は次の通りです。

  • GND板が磁界にさらされたとき、誘導電流が流れ、磁界を打ち消します。
  • アンテナとなっているGND形状の変更によって、放射効率や放射パターンが変わります。

この理由を確認するため、磁界分布をシミュレーションしました。解析面を図2-8に、シミュレーション結果を図2-9に示します。

  • GND板表面の磁界分布より、誘導電流による再放射が発生し、磁界を打ち消していることが推測されます。
  • 解析面(垂直)の磁界分布からは放射パターンの変化も確認できます。

図2-8 磁界の解析面

図2-9 GND強化した場合の磁界シミュレーション結果(1GHz)

このようにGND強化を図ることでノイズを低減できます。ノイズを効果的に低減するためには、基板GNDとGND板を、ノイズ帯域で低インピーダンスとなるように接続することが必要です。
悪い例として、インピーダンスが高くなるように、金属ワイヤ(直径1mm、長さ31.6mm)で接続しました。シミュレーションのモデルを図2-10に示します。

図2-10 GND板によるGND強化の悪い例

放射エミッションのシミュレーション結果を図2-11に示します。接続方法を変更した結果、放射エミッションが増加し、1GHzでは初期より悪化しています。

図2-11 GND強化の違いが放射エミッションに与える影響のシミュレーション結果

図2-12に示した磁界分布から、金属ワイヤ部などで磁界が強まっていることがわかります。
このように、基板GNDとGND板が高インピーダンスで接続されると、GND強化によるノイズ低減効果が得られにくくなるため、低インピーダンスで接続することが重要です。
なお、金属板の代わりに、導電めっきを施したケースの使用も有効です。

図2-12 GND強化の違いによる磁界シミュレーション結果(1GHz)

5-2-3. 基板幅の影響

一般的に片面基板では高密度実装が難しいため、両面基板や多層基板が使用されています。そこで、次は両面基板を用い、GND設計がノイズに与える影響を紹介します。

シミュレーションのモデルは、図2-13に示したように、裏面が全面GNDであるマイクロストリップラインとしました。
同じ回路設計でも、基板サイズを変更したり、レイアウトを変更したりするだけでもノイズが変化することが広く知られています。そのため、基板幅(GND幅)200mm、100mm、50mmの3モデルでシミュレーションしました。他の条件は共通で、伝送線路は特性インピーダンスを50Ωで設計し、入力信号は1Vで30MHz~1GHzを掃引しました。

図2-13 シミュレーションモデル
(両面基板 : マイクロストリップライン)

放射エミッションのシミュレーション結果を図2-14に示します。基板幅を狭くすると、430MHz付近でノイズが高くなっています。

図2-14 基板幅を変更した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

放射エミッションが高くなった430MHzでの磁界分布のシミュレーション結果を図2-15に示します。この結果より、以下のことがわかります。

  • 基板幅が200mmの場合は、磁界は主に基板上面に分布している。
  • 基板幅を100mmにすると、磁界が基板裏面(GND面)に回り込み始める。
  • 基板幅を50mmにすると、基板裏面に磁界が強く回り込んでいる。

水平面

垂直面

(a)磁界のアニメーション
(基板幅50mm)

(b)解析面

(c)磁界最大値

図2-15 基板幅を変更した場合の磁界シミュレーション結果(430MHz)

このようにGND幅を狭くすると、磁界はより強く基板裏面へ回り込み、磁界分布が大きく変化することがわかります。このことは、高速信号のためノイズ強い回路は、大きな基板の中央にまとめることが有利であることを示しています。

5-2-4. 基板厚みの影響

次に、基板厚みを変更し、ノイズへの影響をシミュレーションしました。
シミュレーションモデルを図2-16に示します。基板厚みは1.6mm、0.8mm、0.4mmの3種類モデルを用意しました。信号パターン幅は調整し、特性インピーダンスが50Ωとなるようにしています。これにより、基板厚みが変わっても電流値は同じです。

図2-16 シミュレーションモデル
(両面基板 : マイクロストリップライン)

放射エミッションのシミュレーション結果を図2-17に示します。基板厚みが薄くなるほど放射エミッションが減少することがわかります。

図2-17 基板厚みを変更した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

磁界のシミュレーション結果(図2-18)からも、基板を薄くすると磁界が減少することが確認できます。

図2-18 基板厚みを変更した場合の磁界シミュレーション結果(1GHz)

この現象は次のように説明できます。(図2-19)

  • 信号パターンとGNDパターンの距離が近くなるので、リターン電流は広がりにくくなり、信号パターン直下に集中します。
  • 基板が薄いほど信号パターンが狭くなるので、リターン電流はさらに信号パターン直下に集中します。

これらにより、信号電流とリターン電流による磁束の打ち消しが強くなり、放射エミッションが減少します。

図2-19 基板厚みが薄くなると放射エミッションが減少する理由

以上で述べたように基板を薄くし、信号パターンとGNDパターンの距離を縮めるとことでノイズ低減効果が得られます。ただし、基板が薄くなるとたわみやすくなり故障リスクも高まるため、適切な厚みを確保するために多層基板を使用する必要があります。


5-3. ケーブルの影響

5-3-1. ケーブル接続の影響

基板にケーブルが接続されると、そこからのノイズ伝搬がしばしば問題となります。
そこで、シールドケーブル(同軸ケーブル)を接続した場合にノイズがどのような影響を受けるかを紹介します。

シミュレーションモデルを図3-1に示します。信号パターン端面で基板をカットし、シールドケーブルを接続しています。シールドケーブルの特性インピーダンスも50Ωとし、ケーブル内で50Ω終端しました。ケーブルなし、ケーブル長110mm、210mm、410mmの4つのモデルを用意しました。

図3-1 シミュレーションモデル
(同軸ケーブル接続)

放射エミッションのシミュレーション結果を図3-2に示します。ケーブル接続により放射エミッションが増加していることが確認されます。また、共振周波数はケーブルが長くなるほど低域へシフトしていることもわかります。これらから、ケーブルがノイズ放射に影響していることがわかります。

図3-2 ケーブル長を変更した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

磁界分布のシミュレーション結果(図3-3)から以下のことがわかります。

  • GNDパターンが、信号線の端面まである場合、磁界が基板裏面まで回り込んでいます。
  • 基板からの磁界が、ケーブルのシールドに伝搬し、放射しています。
  • ケーブル長を変更すると、シールド上の磁界分布も変化します。

水平面

垂直面

垂直面(拡大)

(a)磁界の変化(アニメーション)
(ケーブル長 : 210mm)

(b)解析面

(c)磁界の最大値

図3-3 ケーブル長を変更した場合の磁界シミュレーション結果(330MHz)

以上の結果より、基板で発生したノイズがケーブルのシールドへ伝搬し、そこから放射して強い放射エミッションが発生することがわかります。この場合は、基板のシールドによるノイズの封じ込めや、基板の設計変更やGND強化によるノイズ低減が必要となります。

5-3-2. 基板の薄型化による対策

先に効果を紹介した基板の薄型化により、シールドケーブルを接続した場合でもノイズを低減できるかどうかを試しました。
図3-4に示したように、基板厚み1.6mm、0.8mm、0.4mmの3種類のシミュレーションモデルを用意しました。

図3-4 シミュレーションモデル
(基板厚み変更)

放射エミッションと磁界分布のシミュレーション結果を、それぞれ図3-5と図3-6に示します。
放射エミッションが減少していることが確認できます。磁界分布からも基板で発生したノイズが減少し、シールドケーブルへの伝搬も減少したことがわかります。つまり、基板の薄型化は、ケーブルシールドへ伝搬して放射されるノイズの対策にも有効であることがわかります。

図3-5 基板厚みを変更した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

図3-6 基板厚みを変更した場合の磁界シミュレーション結果(330MHz)

5-3-3. フィルタ取り付けによる対策

さらなるノイズの低減のために、フィルタを取り付けました。
フィルタは、図3-7に示したように、入力から5mmの位置にフェライトビーズ(BLM 600Ω at 100MHz)を取り付けました。

図3-7 シミュレーションモデル
(フィルタ取り付け)

放射エミッションと磁界のシミュレーション結果を、それぞれ図3-8と図3-9に示します。
フェライトビーズの取り付けによって磁界が減少し、放射エミッションも減少していることがわかります。
このように、信号ラインをフィルタリングすれば、基板からのノイズが抑制され、ケーブルシールドからのノイズ放射も抑制できます。

図3-8 フィルタを取り付けた場合の放射エミッションのシミュレーション結果

フィルタ取り付け前

フィルタ取り付け後

(a)磁界の変化(アニメーション)

(b)磁界の最大値

図3-9 フィルタを取り付けた場合の磁界シミュレーション結果(330MHz)

5-3-4. シールドケーブル開口部の影響

放射エミッションは、接続するケーブルにより大きく異なることがあります。特に影響が大きいのが、ケーブルのシールドと、ケーブルの金属コネクタとの接続方法です。

ケーブルシールドの周囲が金属コネクタと完全に面接触していれば、適切なシールド効果を得られます。しかし、金属ワイヤを用いたピッグテール接続では開口部が発生し、シールド効果が低下します。開口部からノイズが漏れ出し、シールドや基板に伝搬し、放射エミッションを増幅させます。この現象を可視化するために行ったシミュレーション結果を紹介します。

シミュレーションモデルを図3-10に示します。ケーブルのシールドと金属コネクタを9.5mm離しており、直径0.3mmの金属ワイヤでピッグテール接続しました。

図3-10 シミュレーションモデル
(シールドのピッグテール接続)

放射エミッションのシミュレーション結果を図3-11に示します。ピッグテールで接続されたケーブルでは放射エミッションが増加することが確認されました。

図3-11 ケーブルシールドをピッグテール接続した場合の放射エミッションのシミュレーション結果

また、同じく図3-12に示した磁界分布のシミュレーション結果からも、開口部から漏れ出した磁界が、シールドや基板へ伝搬し再放射していることが確認できます。一方、開口部がない場合は、そのような現象は発生せず磁界は閉じ込められています。

面接続(開口部なし)

ピッグテール接続(開口部あり)

(a)磁界の変化(アニメーション)

(b)磁界の最大値

図3-12 ケーブルシールドをピッグテール接続した場合の磁界シミュレーション結果(330MHz)

これらからわかるようにピッグテール接続は、開口部からのノイズ漏洩により放射エミッションが増加するため、面接続され開口部のないケーブルを使用する必要性があります。


5-4. まとめ

今回は、ノイズがGND設計の影響を大きく受けることを三次元電磁界シミュレータにより可視化して紹介しました。
GND幅や基板厚み、ケーブルのシールドなど、さまざまな要素がノイズに影響を与えます。GND強化を図ったり、基板を薄くしたり、フィルタを取り付けるなど注意深い基板設計が求められます。なお、GND強化では筐体設計を初期段階から考慮する必要があります。