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EMI除去フィルタ(EMC・ノイズ対策)ノイズ対策 基礎講座【第2部】
DC電源ケーブル接続部におけるノイズ対策

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第7回

DC電源ケーブル接続部におけるノイズ対策

7-1. はじめに

電子回路を低電圧で高速動作させるためには、DC電源ラインの品位(Power Integrity : PI)が重要です。
前章「デジタルICの電源周りのノイズ対策」では、デジタルICのPI確保とノイズ対策方法について紹介しました。本来であれば、各ICの電源周りで完全にノイズ対策を行うことが理想です。しかし、複数の回路が動作する電子基板では、接続されるDC電源ケーブルにノイズが伝搬し、問題となる場合があります。
さらに、電源系だけでなく、デジタル信号回路やスイッチングタイプのDC-DCコンバータ(以下、DC-DC)など、様々な回路から発生するノイズも、GND経由でコモンモードノイズとしてDC電源ケーブルに伝搬することがあります。
そこで本章では、DC電源ケーブル接続部に着目したノイズ対策について取り上げます。


7-2. DC電源ケーブル接続部でのノイズ対策事例

7-2-1. 評価基板と初期ノイズ測定結果

DC-DCとデジタル回路を組み込んだ評価基板を試作し、DC電源ケーブル接続部でノイズ対策を行った事例を紹介します。
試作基板の外観を図2-1、回路図を図2-2に示します。

図2-1 評価基板
図2-2 回路図

本基板では、DC電源からケーブルを通じて5VをDC-DCに入力し、その出力3.3Vをデジタル回路に供給しています。
デジタル回路は40MHzの方形波を発振し、その出力をNOT回路へ入力しています。NOT回路の出力は端子近くでコンデンサにより終端しています。デジタル回路の電源入力部には、ノイズが問題とならないよう、コンデンサやフェライトビーズによる対策を実施済みです。

放射エミッションの測定条件を図2-3に示します。
電波暗室にて、EUTとアンテナの距離を3mとし、アンテナを高さ1m、水平偏波で固定し、ターンテーブルを1周させて測定しました。

図2-3 放射エミッションの測定条件
図2-4 放射エミッションの測定結果(実測)

放射エミッションの測定結果を図2-4に示します。
40MHz間隔で狭帯域ノイズが発生していることが確認されました。さらに、ベースに広帯域ノイズも重畳していました。

  • 本稿では、スペクトラム幅が狭い場合を「狭帯域」、広い場合を「広帯域」としています。ただし、狭いスペクトラムが広い周波数範囲に発生しているケースを「広帯域ノイズ」と呼ぶ場合もあります。

7-2-2. 広帯域ノイズの解析

まず、150MHz付近の広帯域ノイズについて解析を行いました。
周波数分解能を上げるため、スペクトラムアナライザの測定範囲を2MHzに絞り、RBW(Resolution Bandwidth)を120kHzから10kHzに変更しました。その結果(図2-5)、150kHz間隔のノイズを観測し、広帯域ノイズが150kHzの高調波であることがわかりました。

図2-5 150MHz拡大(RBW10kHz)

DC-DCの入出力波形と電圧スペクトラムの例を図2-6に示します。DC-DCはスイッチング動作により出力が矩形波となるため、デジタル信号と同様に高調波ノイズが問題となります。
スイッチング(SW)周波数やデューティ比は負荷条件によって変動しますが、本基板では150kHzでスイッチングしており、放射エミッションの周波数間隔と一致しました。このことから、広帯域ノイズはDC-DCから発生しているといえます。

図2-6 DC-DCの電圧波形と電圧スペクトラム

RBWを狭くすることで周波数分解能が向上する理由を、図2-7に示します。
スペクトラムアナライザはバンドパスフィルタの通過帯域を掃引し、その電圧を測定します。RBWを狭くするとフィルタ帯域が狭くなるため分解能が向上します。ただし、高調波の次数が高くなるほど周波数変動幅が大きくなり、解析が難しくなります。また、DC-DCの負荷変動によるSW周波数変動や、ノイズ対策のために周波数拡散(SS : Spectrum Spread)を行っている場合も、解析が難しくなります。

図2-7 RBWによる測定結果の違い

7-2-3. 狭帯域ノイズ(40MHz高調波)の解析

40MHzはデジタル回路の動作周波数に一致するため、その高調波である可能性が高いと推測されます。
しかし、デジタル回路の電源入力部には対策済みであり、出力もコンデンサで終端されているため、直接DC電源ケーブルに接続されてはいません。
状況把握のため、図2-8に示した接触型のEMIプローブで基板上のノイズレベルを測定しました(図参照)。接触型プローブをスペクトラムアナライザに接続し、基板各部のノイズレベルを相対的に比較しました。

図2-8 コンデンサ結合型EMIプローブ

測定結果を図2-9に示します。この結果、デジタルICのGNDノイズレベルが高く、そのノイズがDC電源ケーブル接続部まで伝搬していることがわかりました。

図2-9 EMIプローブによるGNDのノイズレベル確認結果

さらに、状況をわかりやすくするために、磁界プローブに基板上を掃引させ、磁界分布を可視化しました。
磁界プローブを図2-10に、測定エリアを図2-11に示します。

図2-10 磁界プローブ
図2-11 測定エリア
図2-12 測定周波数

磁界プローブによる磁界分布の測定結果を図2-13に示します。
デジタル回路周りのノイズが強く、近傍に伝搬していることがわかります。
NOT回路の出力を終端していたコンデンサを取り外したときの磁界分布も測定しました。
終端コンデンサを取り外すことで、GNDに流れ込む電流が減少し、それに伴ってGNDのノイズレベルも低下したと考えられます。

図2-13 デジタル回路周りの磁界分布測定結果

7-2-4. 放射源の調査

放射エミッションはケーブルだけでなく、基板本体からも生じる可能性があります。
ケーブルにフェライトコアを装着すると、放射エミッションはピークで10dB以上減少しました(図2-14)。このことから、ケーブルが強い放射源となっていたことがわかります。しかしフェライトコア装着後も強い放射が残っていることから、基板本体も放射源であると考えられます。
ノイズがGNDを経てケーブルから放射している可能性があるので、GNDのみ50cmのケーブルを接続し放射エミッションを観測しました。その結果、40MHz高調波が10dB以上増したのでデジタル回路由来のノイズがGNDを経て、ケーブルへ伝搬していることがわかりました。また、広帯域ノイズが5dB以上増加したことから、DC-DC由来のコモンモードノイズもケーブルへ伝搬し、放射していることがわかりました。
V+側のみケーブルを装着すると、GNDのみの場合より広帯域ノイズが10dB以上増加し、V+ケーブルからはコモンモードノイズに加え、DC-DCによるディファレンシャルモードノイズも放射されていることがわかりました。

図2-14 ケーブルからの放射エミッションの確認結果

7-2-5. ディファレンシャルモードとコモンモードノイズの対策結果

DC電源ケーブルには、ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズの両方が含まれていることがわかったため、それぞれに適した対策を実施しました(図2-15)。

  • ディファレンシャルモードノイズ対策 : フェライトビーズ+コンデンサ
    → 広帯域ノイズを低減
  • コモンモードノイズ対策 : コモンモードチョークコイル
    → 40MHz高調波を低減
図2-15 ケーブルからの放射エミッション対策結果

7-3. まとめ

用意した基板からは、以下のノイズが放射していました。

  • DC-DCによる広帯域なディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズ
  • デジタル回路の40MHz高調波によるコモンモードノイズ

ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズの両方が放射していることがわかり、それぞれに適したノイズ対策を実施しました。

  • ディファレンシャルモードノイズ対策……フェライトビーズとコンデンサ
  • コモンモードノイズ対策……コモンモードチョークコイル

これらの対策により、放射エミッションを抑制できました。ただし、基板本体からもノイズが放射しているため、さらに抑制するにはノイズ源である回路自体の対策を行い、基板上のノイズレベルを低減させる必要があります。

コラム

AC/DC電源などのケーブルを有する機器のノイズ測定では、DC電源を変更したり、測定場所を変えたりすると、データの再現性や測定場所間の相関がしばしば問題となります。例えば、測定場所を変更すると、床下に配線されたケーブルの長さや接地条件が異なります。この変更による影響により、電源系のインピーダンスが変化します。これによりノイズ分布が異なるので、放射エミッションなどが変化します。

この電源系の影響を、三次元電磁界シミュレータと回路シミュレータを連携させ、DC電源ケーブル接続部のノイズの可視化を行いました。まずは、DC電源ケーブルの長さがどのような影響を与えるかをシミュレーションしました。

シミュレーションのモデルを図1に示します。本シミュレーションでは、DC-DCを搭載した基板にDC電源ケーブル(以下「ケーブル」)を接続し、そのケーブル端からDC電源を供給する構成としました。

図1(a)は電磁界シミュレーションのモデルです。基板は両面構造で、表面にはDC-DCや電源パターンを配置し、裏面にはGNDパターンを配置しています。部品配置を視覚的に理解しやすくするため、部品はダミーを配置しています。また、パターンの一部もダミーです。
図1(b)は回路シミュレータのモデルです。DC-DCは、スイッチ、ダイオード、インダクタ、コンデンサで構成しています。

図1(a) 三次元電磁界シミュレーションのモデル
図1(b) 回路シミュレータのモデル

図1 シミュレータのモデル

DC電源ケーブルの長さを変更した時の放射エミッションを図2に、磁界分布を図3に示します。

図2 ケーブル長による放射エミッションの違い
図3 ケーブル長や周波数による磁界分布の違い

ケーブルの長さにより、放射エミッションの共振周波数が変化することがわかります。
この接地していないときの磁界分布の特徴として、ケーブルの端面(DC電源入力部)の磁界が極小となります。接地すると磁界分布が変化します。

そのため、次は、グラウンドプレーンと接地した場合のシミュレーション結果を紹介します。
接地しないモデルは、基板の下に金属板を敷設したのみで、接続はしていません。接地したモデルでは、垂直に立てた金属板を2枚追加しました。その金属板を、それぞれ、DC電源ケーブルの端面や、基板の端面に接続しました(図4)。

図4 接地の影響を確認するためのシミュレーションモデル

このモデルを使用した場合の放射エミッションのシミュレーション結果を図5に、磁界分布を図6に示します。

図5 接地条件が放射エミッションに及ぼす影響
図6 接地条件が磁界分布に与える影響

接地前は、ケーブルの端面の磁界が極小値でしたが、接地により端面での磁界が増加しています。
この影響により、放射エミッションも変化しています。
このように、接地条件も、ノイズ測定において重要な要素となります。

以上、電源系がノイズに与える影響を紹介しました。
電源系により、インピーダンスが異なるので、測定条件を合わせることが重要となります。
そのため、ノイズ評価に関する規格によっては、DC電源ラインやAC電源ラインにインピーダンスを安定化させるため、LISN(Line Impedance Stabilization Network)やAMN(Artificial Mains Network)を挿入するよう定められています。