イミュニティ対策を検討する上で、構築した評価系について説明します。
評価基板に、2本のケーブルを接続しました。
ケーブルの一端には、補助器として信号検出(または信号出力)する端子が接続されています。
補助器にて検出した信号は、ケーブルを介して評価基板に伝送されます。
評価基板には、A/Dコンバータが実装されています。
エラー発生を確認するため、補助器からの信号(アナログ信号・正弦波100Hz)を比較器で比較しました。
具体的には、アナログ信号+とアナログ信号−の、電圧振幅と位相を比較対象としました。
比較結果が、外部のディスプレイに表示されます。
イミュニティ試験におけるエラー発生有無の判定方法は以下としました。
ディスプレイに表示されている電圧波形が時間変化しない場合、すなわち電圧レベルが一定の場合は、エラー発生なし(判定OK)としました。
一方、時間変化した場合は、エラー発生あり(判定NG)としました。
伝導イミュニティ試験の結果、すべての試験周波数(150kHz~80MHz)でエラーが発生しました。
電圧波形を観察すると、外部から注入されたノイズの周波数や位相に連動して、時間変動していることを確認しました。
続いて、放射イミュニティの対策事例を説明します。
伝導イミュニティの事例紹介と同じ評価基板を使用しました。
エラー発生の判定方法についても、伝導イミュニティの事例と同じです。
放射イミュニティ試験の結果、すべての試験周波数(80MHz~1GHz)でエラーが発生しました。
外部ディスプレイに表示される電圧波形を観測すると、外部から注入したノイズの周波数に連動して、時間変動していることが確認できました。本現象は伝導イミュニティ試験時と同じでした。
伝導イミュニティ試験時に、エラーが発生するメカニズムを考察しました。
メカニズムは下記①~④からなります。
①伝導イミュニティの試験では、ケーブルにEMIクランプを装着し、EMIクランプから所定のノイズを注入します。つまり、ケーブルにコモンモードでノイズを注入した際の誤動作状態を評価していることになります。
②EMIクランプで注入されるノイズはコモンモードです。一方、通信信号はディファレンシャルモードです。
理想的には、ディファレンシャルモードとコモンモードはそれぞれ単独で存在するモードとなりますが、実際の基板では、モード変換が発生してしまいます。
一般的に、アナログ信号が外来ノイズの影響を受けて、誤動作につながるケースが多くみられます。
本事例の場合、EMIクランプで注入されたコモンモードノイズが、ケーブルなどの特性インピーダンス不整合により、ディファレンシャルモードに変換されています。
③A点では、アナログ信号と外部注入されたノイズがモード変換された信号が重ね合わせされます。
(重ね合わせの原理)
④比較器にて信号の電圧振幅と位相を比較すると、モード変換により生成された不要な信号が残っていました。
このため、電圧波形は時間変化してしまい、エラーが発生したと考えられます。
これら考察結果から、ケーブルから流入するコモンモードノイズを低減することをノイズ対策の指針としました。
①EMIクランプに2本のケーブルを通してノイズを注入する(コモンモードでノイズを注入する)
②コモンモードノイズがディファレンシャルモードにモード変換する
③A点では、アナログ信号と注入されたノイズがモード変換した信号が重ね合わせされる
④比較器で、コモンモードノイズがモード変換された信号が残る
同様に、放射イミュニティ試験時のエラー発生メカニズムを考察しました。
おおよそのメカニズムは、前述の伝導イミュニティ試験と同様でした。
アンテナから照射された試験ノイズは、ケーブルにコモンモードで結合します(下図①)。
コモンモードノイズが基板内に侵入し、エラーが発生することがわかりました(下図②、③、④)。
ノイズ対策についても、伝導イミュニティと同様に、ケーブルから流入するコモンモードノイズを低減することを指針としました。
試験ノイズの照射(下図①)に関する補足 :
試験ノイズは、金属筐体、ケーブル、補助器それぞれに照射されます。
試験時の前提として、価基板は金属筐体内に配置しました。そのため、アンテナから放射される試験ノイズは、ケーブルと補助器にコモンモードで結合します。
補助器の大きさは2cm程度であり、ノイズの影響は小さいと考えてよいことがわかりました。
したがって、試験ノイズは、主にケーブルに対してノイズが結合することがわかりました。
①アンテナから放射される試験ノイズは、(主に)ケーブルにコモンモードで結合する
②コモンモードノイズがディファレンシャルモードにモード変換する
③A点の信号は、アナログ信号とモード変換した信号が重ね合わせされる
④比較器で、コモンモードノイズがモード変換された信号が残る
前述のノイズ対策指針に従い、ノイズ対策を実施しました。
今回の事例では、伝導・放射イミュニティ共に、同様の対策が有効であることを確認しました。
評価基板のアナログ信号線上のコネクタ直近に、コモンモードチョークコイルを挿入しました。
コモンモードチョークコイルには、当社品番 : DLW32MH101XK2を使用しました。
ノイズ対策後、伝導・放射イミュニティ各試験において、すべての試験周波数でエラーが発生しないことを確認しました。
ここで、コモンモードチョークコイルの選定ポイントを示します。