今回のエミッションノイズ評価では、CISPR11の放射ノイズ測定環境を参考にし、市販の多関節ロボット一式の放射ノイズを測定しました。
なおロボットは、任意の1関節を動作(左右繰り返し動作)を行いました。
放射ノイズの評価を行いました。
CISPR11には、ノイズ許容値が2つ設定されています。
ここでclass Aは、低電圧電源網(商用AC電源網と解釈)に直接接続されない機器を対象にしています。たとえば、キュービクルなどの高圧受電設備を介して、機器にAC電源が供給される場合です。一方class Bは、低電圧電源網(商用AC電源網と解釈)に直接接続される機器を対象にしています。共用の柱上トランスなど公共配配電網にてAC電源が供給される場合です。
多軸関節ロボットは、主に工場で使用されることが多いと考えられますが、今回用意した市販実機の放射ノイズはCISPR11 class Aの許容値を上回る結果であり、将来適用される規格のベースとなるCISPR11を満足できていないことが分かりました。
現状ではロボットに適用されるノイズ規制がないため、この状態でも問題ありませんでしたが、将来ノイズ規制が適用されると新たなノイズ対策が必要になると思われます。
以下のような方法で放射ノイズのメカニズムを調査しました。
(実施した調査の一例)
購入した多軸関節ロボットの放射ノイズ発生メカニズムを調査した結果、以下のようなことが分かりました。
ノイズ源はDC-DCコンバータモジュールのスイッチングノイズでした。DC-DCコンバータのスイッチング周波数は470kHzです。
ノイズ伝導経路は3つあり、1つ目はDC-DCコンバータ出力のマイナスラインにスイッチングノイズが伝導していました。マイナスラインはコントローラーの筐体に接続されており、筐体にスイッチングノイズが伝導しました。
2つ目は、DC-DCコンバータの放熱板(スイッチングノイズが結合している放熱板)が筐体に接触していることで、筐体にノイズが伝導していました。
3つ目は、スイッチングノイズがのった制御基板に接続された各ケーブル(AC電源、モータ、エンコーダ、ティーチペンダントのケーブル)にノイズが伝導していました。
外部への放射につながるアンテナは、コントローラー筐体と各ケーブルでした。
ロボットの放射ノイズを対策するには、コントローラー筐体および各ケーブルにノイズを伝導させないことが必要です。下図のように、DC-DCコンバータモジュールのシールドとノイズ伝導経路へのフィルタ挿入が効果的だと考えられます。
ただし、DC-DCコンバータのシールドが構造上難しい(後付けのシールドで放熱板に結合するノイズを除去しきれない、放熱を阻害してしまうためDC-DCコンバータが熱により故障する)ため、(a)や(c)の対策を行っても(b)の経路でノイズが伝導するため、ノイズ抑制効果が確認できませんでした。
(b)を対策するには、配線パターンの見直しやDC-DCコンバータモジュールの選定見直し、放熱の仕方を再検討する必要があると考えており、後付けのノイズ対策では限界があると判断しました。
今回の評価ではDC-DCコンバータモジュールからの放射を十分シールドすることができなかったため、フィルタを挿入した効果を確認することができませんでしたが、フィルタの選択のポイントとしては以下の①~③があげられます。
ロボットの放射ノイズは、多くの場合、30MHz~500MHzで問題になりやすいため、この周波数帯に着目したノイズフィルタの提案が効果的です。